追ってきた悪霊への対処法とは。

 今俺は非常に強いショックを受けている。というのも、沢尻エリカの実家のレストランが閉店したと「週刊現代」で読んだからだ。


 別に俺はこの小便臭いガキのファンでも何でもない。でも、杉並区の店ってことで写真と店名が「リラズ・テーブル」と出てて、それを読んで俺は愕然としたのさ。それは前の女と西荻窪に住んでた時、女が働いてた店だったからだ。


 その時の女の話では、オーナーの外国人のリラおばさんには三人子供がおり、そのガキは皆“あいのこ”(言葉狩りに対抗するための、「漂流街」登場のヤクザ、“伏見”風表記がお気に入りなんで、それで通しとく。今回は差別的意図はない)で、長男はモデル、次男も当時高校生でモデルデビューが決まったとの事で、その下にもう一人いる末の妹が物凄く可愛いとの事だった。女は娘のモデル仕事の出版物や、兄弟の普段の写真などを実際に見せられたらしい。だが、当時高校生の息子はふてくされながらもよく店に来ていたそうだ。当然、女が世話になっている以上、俺もそのオーナーのリラおばさんに何度か会い、酒もご馳走になったことがあるが、彼女の夫である日本人の親父が末期癌にかかっており、それと子供を育てる為にそのレストランを開業したとのことだった。


 女はほぼオープニングスタッフだっただけに、女の事もリラおばさんは大変可愛がってくれ、俺と約束を守らない(女はみんなそうかも知れないが、この女は特に人と約束を守れない“病気”なのだ)度に喧嘩して、出ていった時もリラおばさんの所に泊めて貰ったりしていたという。それなのに陰でリラおばさんを悪し様に「死んじまえばいい!」と罵る女に対し、俺は怒って蹴りを入れた事がある。


 しかし、夫が病に絶望して家出してしまった辺りから女への負担も仕事的に増え始め(と言うのは俺の勝手な推測)、さらに結局山の中でリラおばさんの夫が、車中で排ガス自殺してるのが発見された事でリラおばさんが恐慌を来たし、それがきっかけか、そんな中で女もおかしくなり始めてて(いや、元々10歳で叔父に犯されて開花した淫乱症の血故、おかしかったんだ)、最後逃げるように辞め、裏切り者呼ばわりされてた。信義を貫けない奴は、そう呼ばれて当たり前だ!俺らは毎日余ったクスクスなどを頂いていたのにな。人非人はやることの業の深さが違う。リラおばさんもこういう日本人の恥さらしがいることに驚いたことだろう。


 そして、昨日偶然、久々に西荻窪に行く用事があり、一緒にいた友人にその事を話してた次の日に、これだ。気がめいるぜ。何なんだろうな、このタイムリーさは。気持悪くて狂いそうだぜ。でもこんなに沢尻エリカと近いと思わなかったよ。リラおばさんはまだ俺の事覚えてるだろうな。俺はリラおばさんとも親交のあった、「太陽にほえろ!」のブルース刑事こと、俳優・又野誠治さんのお店「A sign」にも度々顔を出していたし、俺に事あるごとにハグしてくれた、その又野さんも、事故だか自殺だかの不審死を遂げ、故人となった今、そして女と別れて漸く3年経ったから、6年位の前の話だ。


 まぁ沢尻エリカの話はおいといても、相変わらず明滅する“女”の名前ははっきり俺の脳内にあるわけで、そんなガキより俺のコイツを吹き飛ばしたいんだよ。当然だろ?だとすればこの女をブッ殺せば片は付く、というような解決を俺は安易に求めたくないし、現実問題そういう話じゃないんだ。この女と関わりたくなんかもない。というのも、それは“アラノン”だとかなんだとかいう、偽善的なアルコール中毒者の自助組織に己の親を参加させている、気違いそのものの、この女の前科者の夫と関わり合いになりたくないし、前述のように、短絡的な人間の思考ではそうした場合、「その女を殺せばいい」みたいな結論にたどり着くだろうけど、事はそう単純ではないし、そんなことをしても何の解決にもならないんだ。狂人を裁くことが出来ないのはもちろん、そうして解決を図ろうとするのは、脅迫が全てを解決してくれると思っている、前述の気違い男と同じだろ?そうじゃねぇんだよ。俺の脳内の問題なんだ。


 問題はこの腫瘍のように巣くった俺の脳内の記憶にある。だから俺の支配されている妄想は、「後頭部から、彼は解放された」というような、原作における殺されるバージョンのランボー(デヴィッド・マレル著「一人だけの軍隊」)のような、銃で脳を吹き飛ばせばそうした忌まわしさも全て消えてくれるのではないかという感覚(もちろん、俺も死んでしまうが)であったりするわけだ。俺はパリ人肉事件の犯人、佐川については何の思い入れもないが、言っていることの一つに共感してしまうのはそこだ。奴は「殺したかったのではない、食いたかったのだ」と言うことを裁判でもしきりに主張していたように思う。俺もそれと同じで、「死にたいのではない。脳内に巣食う記憶を除去したいのだ」と言うことだ。


 そしてもう一つの妄想、それが叶わぬのならば、外科的な処置で物理的に除去するしかない、と言うことだ。腫瘍のように分かり易い形でこの脳内の忌まわしさが形を成していてくれれば話は早いのだが、クローネンバーグが「シーバース」や、「ザ・ブルード」で提示した世界観が実証されない限り、その様なことはなかなか起きそうにない。そこで俺的に気になるのは、ジャンキーどもが信奉している頭蓋貫通だ。俺は麻薬の類には一切興味がないのでその“効き”を高める一環としての施術や、山本英夫の「ホムンクルス」みたいな、短絡的な神秘主義でこの話を持ち出しているわけでは全くない。単に初期のこの施術の提唱者である博士の理論が、俺には実に合理的に見えるが故に、施術が俺の脳内の忌まわしさを除去してくれるのではないかと思っているだけだ。脳内血流理論とされるそれは、脳内の圧を軽減することにより、血流量を増大させ、結果的に脳の活動をより活発化させることが出来るのではないかという“仮説”である。興味のある向きにはスチュアート・スウィージー編「デス・パフォーマンス」でも読んでみるといいと思うよ。「ホムンクルス」もネタ元にしていると思われるんで、よっぽどそんなものより為になるぜ。


 とはいえ、今回の記述が二日がかりになってしまったことに気付いている人もいると思うが、それには理由がある。言い訳ではないが最近俺は。猛烈な下痢のような便意に襲われることがしばしばあり、それでいて出ればスッキリなんだろうが、出ないんだよ。まるで誰かに調教として浣腸をされ、出ないようにアナルプラグで肛門に栓をされてしまっているような不快感が続き、夜も眠れないのだ。実際調教されていて、この苦痛を逃れるためにこうした現実を作り出して妄想の世界に逃げているだけのマゾが俺の正体なのかも知れないが、要するに「ファイト・クラブ」のタイラー・ダーデンに手の甲をキスされ、苛性ソーダを振りかけられたエドワード・ノートンが、心の中にある、痛みを感じない“森”に逃げ込んでいる感覚、と言えば分かり易いかも知れない。分かり易くねぇか。とにかく、それを薬局で購入した浣腸で解消し、それに加え、睡眠導入剤の量を間違えて、気がついたときにはここで失禁して、書きかけのまま気がついたことも、一応記しておこう。


 とにかくそんだけ不愉快で、ショッキングで、因果を感じて打ちひしがれていたって言うことだ。そいつらが今どうなっているのかも分からないくせに、俺に撃ち混んだ毒は確実に効力を発揮している。狙い通りか?クソ野郎。漂流街 (徳間文庫)太陽にほえろ! 4800シリーズ VOL.145「ラガー&ブルース編」 [VHS]太陽にほえろ! 4800シリーズ VOL.129「マイコン&ブルース編」 [VHS]太陽にほえろ! 4800シリーズ VOL.144「ブルース格闘編」 [VHS]太陽にほえろ! 4800シリーズ VOL.128「ブルース激闘編」 [VHS]一人だけの軍隊 (1982年) (ハヤカワ文庫―NV)シーバース [DVD]ザ・ブルード/怒りのメタファー [DVD]デス・パフォーマンスホムンクルス 6 (BIG SPIRITS COMICS)ファイト・クラブ 新生アルティメット・エディション [DVD]