バランスを重視するとこうなるのさ。

 一観客として「バイオハザードIV アフターライフ」へ。このシリーズの場合に限ってはゾンビ映画のお約束である、“収集つかないラスト”を次回作への布石としているかのように、あざとく続けることで本作も完成した(だから、思わせぶりな演出は伏線にもなっていない)。そしてこのパターンは現時点では保留ながら、ゲームも映画の本数以上にシリーズを重ねている以上、今回も同一パターンが踏襲されることになることが推察される。それでも日本のスプラッタもどき、ゾンビ映画もどきに比べれば、ちゃんとアクションできる女優を起用し、女優もレスポンスし続けているのは偉い。とはいえ二作目あたりから、既にその傾向が顕著だったが、やはり今回もゾンビ映画の見せかけをしたモンスター映画(今回は「遊星からの物体X」要素を若干プラス)でしかなくなっているので、終末感や絶望感が薄いことこの上ないのである。それは3Dなのを意識しすぎて物語が骨抜きになったということにもよるが、これがジェームズ・キャメロンに相談した成果ならば、(「アバター」同様)改めて3Dは2Dより脳への刷り込み効果は低いということを体感したのだった。また、日本で無理やり話題にしている冒頭の中島美嘉は、「アルマゲドン」の聖子以下の扱いで台詞すらないが、襲い掛かる瞬間のブサイク顔には注目で、見ようによっては「LIFE」PVの“その後”に見えないこともない。今回初登場のウェントワース・ミラーは、(“刑務所に囚われている”という)従来のイメージそのままなので、現場に来るのが楽だったはずだし、続編に出るとしても大根ぶり共々変わらないだろう。それよりもシエンナ・ギロリージル・バレンタイン)を復活させているんだから、もっと見せ場を本作で観たかった。要するに原典を尊重しつつ、映画という娯楽へ翻案すべきで、ゲームやってる奴への答え合わせ的な展開に終始するのだけは勘弁して欲しいのだ。


 一観客として「ミックマック」へ。ジャン=ピエール・ジュネ久々の長編は、目の前で起きた銃撃戦の流れ弾丸に当たり、全てを失った男が仲間と復讐をする話だが、オープニングからして「三つ数えろ」が人間の思考に溶け込むような重さなのに、ノワールどころかコメディとして成立させる異常な感性は健在である。だから復讐といっても銃撃戦の当事者やその原因など放置で、あくまで目的は自分に撃ち込まれた“弾丸”と、その近くに偶然見つけた、父の死因となった“地雷”のメーカーへの報復であって、頭部に弾丸を食らった人間の狂気ゆえか歯止めが効かない。結局のところ撃たれて植物人間のまま夢見ているような、「みんな〜やってるか!」にも似た不条理かつ回りくどい計画だが、それも単なるイタズラの域を出ておらず、同時に最大の見どころなので最後まで付き合うしかない。また、いくら兵器会社を向こうに回しても、主人公やその仲間(ゴミ捨て場に共同体を築いた小奇麗な浮浪者たち)も全員私怨に引きずられているので、間違っても反戦メッセージなどはない。なぜなら兵器会社の2大ターゲット(各社の社長)やその周辺にまつわる意匠、どうでもいい設定の細やかさも含め、隅々まで監督が愛おしんでいるからで、実際復讐への手順も、成否など抜きに作品世界を監督自身が楽しむため(=観客が楽しむため)に敢えて迂遠な道を設定しているだけなのだ。従って今回は大風呂敷のせいで爽快感が欠落した「ロスト・チルドレン」や「ロング・エンゲージメント」路線よりも、監督の目が届く箱庭的世界を奇人が席巻する、「デリカテッセン」への回帰である。具体的な描写ではドミニク・ピノンが久々に活躍し、ヒロインのフリーク性とキュートさの同居が復活したこともあるが、それはまたオドレイ・トトゥのいない「アメリ」がどんな邪悪でナンセンスか、という事実の監督自身による証明であり、洗練されてもなお狂ったままという監督の現役宣言でもあるのだった。バイオハザード〈廉価版〉 [DVD]バイオハザードII アポカリプス [DVD]バイオハザードIII [DVD]遊星からの物体X 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]アバター [初回生産限定] [DVD]アルマゲドン [DVD]FILM LOTUS VII [DVD]三つ数えろ [DVD] FRT-013みんな~やってるか! [DVD]ロスト・チルドレン [DVD]ロング・エンゲージメント [DVD]デリカテッセン 【ベスト・ライブラリー 1500円:コメディ映画特集】 [DVD]アメリ [DVD]