「鋸」と「鉈」の顛末。
一観客として「ソウ ザ・ファイナル」へ。ビッチに弄ばれた男二人を争わせる振りをして、最終的に元凶であるビッチを協力して殺させる出だしからハートを掴まれるが、それは3Dだからじゃない。あくまでもシチュエーションの妙こそが本シリーズの売りであるべきと、完結編でさらに感得したからなのだ。作品自体も「パンズ・ラビリンス」のパロディ(?)も交え、ストラムと元妻の主導権争いのように見せかけながら、原点回帰というか因果をループさせ、始めの局面こそが新弟子試験だったのだという納得を与えてくれる。そうした意味では一見ダラダラ続けてきたように見えるシリーズも、毎回盛り上げどころを用意し(今回は『処刑人』兄が担当)、ちゃんと機能して来ていたのであった。やはり「人間はどこかに肉体的ハンディキャップを負うと、その代償作用として他の部分が必ず強くなるものなのだっ!!」(〜『獅子たちの荒野』より〜)と訴えることで、ホラー(トーチャー・ポルノ)の外面を持った、超訳ではなく廉価版の「NBK」→「ファイト・クラブ」へ連綿と引き継がれる、“実存映画”の系譜をダイジェストしてくれた意義は深い。こんな理屈っぽい殺人鬼はいない(いてくれない)にしても、それは一つの成果だ。それでもやはり「ソウ2」〜「ソウ3」の流れが白眉である点は変わらないけどね。
一観客として「マチェーテ」へ。俺は「マチェテマチェテマチェテ!」ってサントラの間抜けさ加減が絶妙にマッチしたダニー・トレホに華がないとは思わないが、埋め合わせのためか出演者が豪華極まりない。「沈黙の報復」以来のセガール(『死の標的』でも共演してたな)を筆頭に、「ヒート」でチームを組んでいたデ・ニーロ(ブッシュの物真似が絶品!)、さらにドン・ジョンソン(チーチを拷問する裏『ナッシュ・ブリッジス』役)と来たもんだ。キャスティングの時点では誰が悪役なのかが気になっていたが、結局全員悪役という贅沢さ。オリジナル予告に出ていた、“J.T.”ことジェフ・フェイヒーはその使い走りに過ぎないのである。しかも作品自体もちゃんと「グラインドハウス」の偽予告通り「成人指定」になっていて、伝統としてそうした映画の扱いでは当たり前にパンフなど用意されてないという、上映方式の方向性がいちいち正しい。もちろんもう一本の「グラインドハウス」作品としての刻印もフェイヒーに留まらず、「プラネット・テラー」のアヴェラン姉妹や、トレホと戦わせるため雇われた殺し屋にトム・サヴィーニと大盤振る舞いだ。また、ロドリゲス作品なので仕方がないが、「スパイキッズ」シリーズの番外編であると共に、「エル・マリアッチ」三部作の続きとも取れる、横溢するTEX-MEX感が尋常ではない。女優陣も、ジェシカ・アルバは予告段階であったものと同じカットで着用していた下着が消されていて(予告に追加した?)、例のごとく脱いでいるのかは判然とせず、リンジー・ローハンは乳首が見えそうになると別人で誤魔化しているものの、その他のねーちゃんはキチンと脱ぎまくり、暴力だけではなく、セックスとバイオレンスの両輪において成人指定なのだ。しかし映画自体の真のテーマは「メキシコ人を馬鹿にするな!」という表面的なものではなく「ミシェル・ロドリゲス最高!」というものなのである(実際彼女が一番!)。さらには最後の最後に仕掛けられた大ネタも“グラインドハウス映画”ならではのものとなっており、本作自体が「噓から出たまこと」のようなものだけに、もしかすると…、もしかするかもな。[rakuten:book:12758593:image:small][rakuten:book:11624765:image:small]