新春兄弟対決!!!

 20世紀フォックスさんのご招待で「アンストッパブル」試写へ。トニー・スコットは似たような電車ネタで臨み、前作の失点を一応挽回。無人の貨車が暴走するっていうワンシチュエーションを徹底的に突き詰めて、犯罪や暴力的要素も全く絡めずに“はたらくおじさん”の奮闘する中規模パニック作品に職人技でまとめている。しかも締めるところは女キャラにして、最適なロザリオ・ドーソンに任せ、ジェンダーバランスにも配慮。加えて、かなりのルックスなのにフーターズに勤務するデンゼル・ワシントン父さんの二人の娘も、パニック中継を店からフクロウ柄のシャツで遠隔に応援し、親子の絆というよりは観客サービスに頑張ってくれている。とはいえ肝心の暴走貨車にしても、極力実物にこだわった撮影が効を奏し、スピード感よりも着実に進んでいる感じが危なっかしい。「ギター弾きの恋」におけるショーン・ペンが見たら狂喜するだろうし、俺の近所でもよく通っているから分かるけど、貨車は客車より重くてデカイから速さは感じなくても威圧感があって怖いんだよな。そういう日常的な怖さに思い至らせてくれる、実話ベースながら70年代的なシンプルで力強い活劇なのであった。


 一観客として「ロビン・フッド」へ。プロデューサーでもあるクロウの意向なのか、リドリー・スコットの荒ぶる魂は抑え気味にされ、拍子抜けするほど残酷描写がない、笑っていいのか躊躇する下ネタ寄りの笑いまである。とはいえ一応“サー”でもある監督が母国の英雄をストレートに描きたかったのかも知れない。しかし、結局のところは、虚構の人物ながら、ある意味「覇-LORD-」の影響?にも見える、“入れ替わりによる成り上がり”という新解釈も交え、義賊であるところのロビンが、“パブリック・エネミーNo.1”になるまでを、ケヴィン・コスナー版と被らないよう、絶妙な引き際で止めた前日談だったのだ。代わりに重点を置いているのが、コスナー版では端折られていた、十字軍遠征の退却戦に端をを発したフランスとの諍いであって、今回そのフランスとの内通者であるマーク・ストロングが「キックアス」同様頼もしい悪役振りを見せる。一応本作のクライマックスたるフランス軍上陸シーンは、あからさまなその撮り方も含めて、長年その描写の衝撃力に悩まされ、引きずられてきた「プライベート・ライアン」におけるオマハ・ビーチ上陸シーンへの、彼なりの決着となっていると見るべきだろうし、今後はもうその呪縛から解放された作品が観たい。観ようによっては、時代的に「キングダム・オブ・ヘブン」に端を発する、十字軍がらみのいざこざに対し、イギリス側視点での後始末をつけているとも言えるが、ジョン王の徹底したダメさ加減が素晴らしく、一概にそうとも言えないところがクセモノ。そこに拍車をかけるその愛人レア・セドゥーの儚げで白痴的な美しさが、本作の場合性的な放縦さも相俟って非常に魅力的であったところにしか俺は目が行っていない。アンストッパブル ブルーレイ&DVDセット〔初回生産限定〕 [Blu-ray]サブウェイ123 激突 CE [DVD]北国の帝王 [DVD]ギター弾きの恋 [DVD]デジャヴ [DVD]ロビン・フッド 特別編集版 [DVD]覇 1―LORD (ビッグコミックス)キングダム・オブ・ヘブン [DVD]プライベート・ライアン [DVD]キック・アス DVDパブリック・エネミーズ  [DVD]ジャック・メスリーヌ/パブリック・エネミー No.1 Part.1 [DVD]ジャック・メスリーヌ/パブリック・エネミー No.1 Part.2 [DVD]美しいひと [DVD]