世渡りに頭の良し悪しは無関係って例。

 ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンさんのご招待で「RED/レッド」試写へ。何よりアーネスト・ボーグナインの健在振りが嬉しい、ブルース・ウィリス版「エクスペンダブルズ」。マッチョスターは若手代表カール・アーバン程度でも、「ウォンテッド」とは違って正しいコーナーショットを使った襲撃シーンなど、目先の変わった銃器描写が、比較的ライトなストーリーに視覚の快楽をもたらしてくれる。「『脱出』みたいな家」に住んでいるジョン・マルコビッチは狂っているようで至極切れ者かつコメディ・リリーフというオイシイ役回りで気を吐くが、ここは冷戦下で敵同士だった元MI6代表、ヘレン・ミレンと、旧東側代表、ブライアン・コックス(「レッド・ドラゴン」繋がりとも言える)のロマンスが実に心地よく、加齢臭も含んだ大人の雰囲気を掻き立てて全体の、「RED=Retirement Extremely Dangerous」という設定を底上げしてくれている。友情出演程度のモーガン・フリーマンにはもっと“ダーティ・オールドマン”としての愚行を重ねて欲しかったが、コミック原作だけにこれは続編に期待しろってことなんだろうな。


 一観客として「ソーシャル・ネットワーク」へ。なんか全体にバカにしてる感じがしてカタルシスはない。でも物語についていけないらしい高年齢層の観客を中心に途中退席者続出なのは痛快で、SNSの利用や予備知識なしでは意味不明なのも無理はない。俺的には主人公の弁護士助手であったクインシーの娘、ラシダ・ジョーンズが美しいのになかなかフォーカスが当たらず、その分、話そっちのけでも釘付けだった。それほど、全体の人物造形が引いてたのが、フィンチャーが常に意識してるキューブリック・アプローチなのかも知れんな(「スパルタカス」や「バリー・リンドン」に近い感触)。あの突き放し方とか、(実際は生粋の支配者層であり、何も損はしていない)ウィンクルボス兄弟を、ただのアホとして描いているのも。しかし本作は生まれつき特に努力なく支配者層への密が約束されている彼らへの、新世紀における「アニマル・ハウス」的逆襲を描いたものなのでそれでいい。ただ、パンフが700円もしてmixiの関係者集めてmixi自画自賛話になってるのはかなり痛かった。また、主人公との関係が、日本のビジュアル的に気持ち悪いルックスをしたネット成金の師弟関係のようで気持ち悪くなったけど、ジャスティン・ティンバーレイクの起用は正解とは思う。散々叩かれた苦労人で、本当は実務面で切れ者のはずなのに、適度にアッパーでバカっぽく、アホ兄弟とも対照的なややタイラー・ダーデン的な位置づけ。だから、非常にどうでもいいエピソードで彼が途中退場しても、本来主人公と一緒にサービスを立ち上げたエドゥアルドが「ファイト・クラブ」のエドワード・ノートンばりに疎外感を味わうのも、それなりに説得力はある。まぁ「ファイト〜」のように劇的かつ暴力によるカタルシスが全く得られない分、暴力的に去勢された人間の気持ちを斟酌できないタイプには「で?」という作品でもあるのだが、「ファイト〜」のラストが9.11を予見していたように、本作が現実にリンクすることで、作品の質的変化が起きるのを待ちたくなったのは事実だ。エクスペンダブルズ [DVD]ウォンテッド [DVD]ジョン・ブアマン監督 脱出 特別版 [DVD]レッド・ドラゴン/レクター博士の沈黙 [DVD]ソーシャル・ネットワーク 【デラックス・コレクターズ・エディション】(2枚組) [DVD]スパルタカス [DVD]バリーリンドン [DVD]アニマル・ハウス スペシャル・エディション [DVD]サウスランド・テイルズ【ユニバーサル・セレクション1500円キャンペーン/2009年第5弾:初回生産限定】 [DVD]ファイト・クラブ [DVD]セプテンバー11 DTS版 [DVD]