三者三様の復讐の在りかた。

　一観客として「ザ・タウン」へ。女を犯罪に引き込むと破綻するっていう、よくある話でもある。だからもちろん基調は「ヒート」で、クラシックの「ハイ・シエラ」とか、「現金に体を張れ」にも目端を利かせ、小説的にも「ストレートタイム」や「ドッグ・イート・ドッグ」みたいな実録系ヘイスト小説の系譜を汲んでいるし、町から抜けられない焦燥感は「スリーパーズ（ミスティック・リバー）」　や「ステート・オブ・グレース（フォー・ブラザーズ）」と言った趣。結局ベン・アフレックが好きなんだろうけど、盛り込みようが濃密で、それが原作における引用の度合いが程よいのではないかとも思われるが、人質として出会ったヒロインのPTSDよろしくいちいちフラッシュバックしてくる。これをアフレックが監督としてモノにしているのはこれが遺作となったピート・ポスルスウェイトが味方し、悪の親玉として命懸けの名演を披露しているからでもある。それにジェレミー・レナーもキャラを変え健闘。「ジェフリー・ダーマー」出てた頃の写真が出てくるのは最大の笑いどころ。

　一観客として「ウォール・ストリート」へ。結局登場するなり老いてもマイケル・ダグラス。途中から両手に女はべらせて出てきても、さすがチャーリー・シーンって思うのは、復讐に賭ける主人公、そしてその女（ダグラス演じるゲッコーの娘）に華がなさ過ぎるせいだろうな。そこらへんを危惧したのか監督自身も出まくってるが、影の薄い主人公でも、「『スター・ウォーズ』みたいな荒唐無稽な話じゃないんだ！」的な台詞は印象に残った。あれってアメリカ人でも荒唐無稽に思ってる奴もいるって、ストーンの思いを代弁している意味で。視覚に訴え難い素材や筋立てだけあって、従来の作品異常にトリッキーなカメラワークやアニメを挿入したりカット数の多い編集が際立って見えて、長くは感じても退屈はしないといういつものストーン作品。数少ない収穫が、暴力を振るわないのに暴力の臭いを全身から発散するジョシュ・ブローリンと、紳士そのものの魅力を放っておきながら、豪快に絶望へのシフトチェンジを見せつけるフランク・ランジェラであったが、俺はチャーリー・シーンが出てきただけでも個人的な満足が得られたね。

　一観客として「完全なる報復」へ。「Be Cool」以来のＦ・ゲイリー・グレイ監督作品として、「交渉人」的なものかと思っていたが、違った。かといえば復讐に重きを置いたハードな話という訳でもなく、法の矛盾点についての言及はあるものの、「SAW」のジグソウの主張に通じるような、脚本のカート・ウィマー節が炸裂した、ハッタリの効いたサスペンスであった。復讐する側であり、製作に名を連ねてもいるジェラルド・バトラーが、実は超人的なスキルの持ち主という設定だったのだ。なので直接手を下し、スナッフ・フィルムのような豪快な人体破壊もすれば、遠隔でも余裕で復讐プランを遂行して行き、そのために「ジャッカル」に登場した遠隔操作の銃にも似た珍銃に代表されるようなギミックも満載。単純に、前科者が売春婦を侍らせてコカインを吸引するという、少し前に観た「ザ・タウン」と酷似している場面により、軽くデジャヴを覚える。対決ものの構図を取りながら、向こうに回ったジェイミー・フォックスは「ステルス」みたいな無難な役であり、儲け役ではあってもキャラがそのデカチン同様、「キングダム」ほどには立っておらず、やはり製作者がオイシイところは持っていくのであった。