家族が社会を作るのか、その逆か。

 一観客として「SOMEWHERE」へ。ポールダンスのケツも眩しい、原典回帰、男目線のソフィア・コッポラ作品。俺はコッポラ本人の作家性のなさも嫌いだし、その娘の考えていることなどどうでもいい(が世間で言われている娘=ブサイク説は肯定し切れない)。だが奇特にも親父の作品を全部観るよりも娘の作品は別に無理してではないが観て来てしまっているのだ。というのも原作のせいかも知れないが「ヴァージン・スーサイズ」が良過ぎたからである。この映画は既に「渋谷Q-FRONT」オフィシャルサイトでの連載で言及したので詳しくは書かないが、音・画・哀愁の三位一体があり、しかもその男目線に驚愕したのだ。今回の目線担当はスティーヴィン・ドーフ。目線を受けるのはエル・ファニング(絶妙なルックスの外し具合!)母親に見放された娘を一時預かり、無計画な親子旅行が始まるが、共に過ごす時間が少なかったその関係は、「Jackass」のクリスを交えても埋められないよそよそしさ。でも娘の幼さが瑞々しく中和するので、これは監督本人の娘の立場としての回想であるのももちろんだが、ぎこちない関係性でのトリップという意味では、ファニングを主役に「ロリータ」を再度娘コッポラに任せたい衝動に駆られる。だってこれをそのオマージュにするにしては、親父の情けなさはともかく、女の裸が多すぎるからね。


 一観客として「キッズ・オールライト」へ。この作品には、「氏より育ち」という言葉を真っ先に思い浮かべたのだ。実際かなりオリジナリティの高い物語で、それでいて上質で下品な笑いも多い、可能性に満ちた家族の映画。このレズビアンが形成した家族のリアリティの要になっているのが、脱ぎ惜しみがないのに安く見えないジュリアン・ムーアの存在だろう。貫禄のアネット・ベニングも悪くはないのだが、「ミルク」のショーン・ペンのような気負いも感じられるだけにムーアは際立つ。そんな両親の元で育ったミア・ワシコウスカはまだ単なる愛嬌に留まってはいるものの、この役へのチョイス自体が反骨への萌芽を窺わせ「アリス・イン・ワンダーランド」なんかより大分マシである。そんな彼女の境遇が培った好奇心が物語を転がすのだが、日本もどんどんこうなって家族や男女の根幹が問われればいいという意味では痛快だ。そこで行き着いた精子提供者がザック・スナイダー似のマーク・ラファロなわけだが、現実に死線を潜った彼には哲学的な台詞の説得力がある。これなら「The Avengers」におけるハルク役も、胸毛の違和感も悟らせない説得力を付けられるだろうか。少なくとも彼がヤリ倒す黒人女の欲情には、その予感を強く感じさせるだけの力はあり、俺も彼女に対し、第一チンポ汁が滲むほど欲情したのだ。 


 一観客として「生き残るための3つの取引」へ。リュ・スンワンの久々劇場公開された新作としては期待していたが、素材的に社会派なテーマを娯楽系の監督がちゃんと消化できるのか、という点には一抹の不安があった。これは俺がバカなのと邦題がそぐわないという問題でもあるのだが、言い切ってしまえば「3つの取引」がどういうものなのか、直感的に分かりづらいのだ(よくよく考えれば分かる)。それ以外の部分は、警察と検察が結託した通俗的な権力腐敗の構図を描いているものなので、「悪魔を見た」と同じ脚本家だからなのか、韓国の情勢としてそうなのかは判然としないが、かなり強い権力不信が感じられるのは好ましい(「美しき野獣」の陰画)。とはいえ、この胃が痛くなりそうな弱肉強食の世界をリュ監督組(ヤクザの手下・同僚刑事)総登場で展開しても、娯楽色が薄いので、監督の持ち味としては従来のようなカタルシスに欠けるのは残念。俺などは「アラハン」はもちろん「シティ・オブ・バイオレンス」や「Mr.タチマワリ!」などがお気に入りなので、やっぱり監督の素地でもあるアクションを、旧作への引用も含め、より極めて欲しいわけさ。ヘビトンボの季節に自殺した五人姉妹 (ハヤカワepi文庫)ヴァージン・スーサイズ [DVD]ジャッカス 3 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]ロリータ [DVD]170299102ショート・カッツ [DVD]ミルク [DVD]アリス・イン・ワンダーランド [DVD]超人ハルク TVパイロット [DVD]ハルク [DVD]インクレディブル・ハルク デラックス・コレクターズ・エディション (2枚組) [DVD]悪魔を見た スペシャル・エディション [DVD]美しき野獣 [DVD]アラハン [DVD]シティ・オブ・バイオレンス -相棒- 特別版 [DVD]史上最強スパイMr.タチマワリ!?爆笑世界珍道中? [DVD]