濃いか不明、でも量は多めに。

 一観客として「ヘルプ 心がつなぐストーリー」へ。戦後の海外ドラマを観てその生活に憧れたのは俺の両親たちの世代のように多いらしいが、そんなものが全て嘘だということを俺たちは知ってしまっている。だから若干の時代設定に差異はあっても、「ステップフォード・ワイフ」や「シザーハンズ」、「カラー・オブ・ハート」なんかで繰り返しその欺瞞を暴く試みが行われている。しかも本作は舞台が南部。懸命にそれぞれのジェンダーを演じる騙し合いが痛々しい上に人種差別も交えてのドラマなのでかなり不快指数は高い。それでも低学歴女の意地を見せたジェシカ・チャスティンを見直したし、逆に正義感に燃えたエマ・ストーンは自分の抱えるコンプレックスを黒人の前で隠しもしないなど、作り手の意図とは逆に突出している見所に富んでいたのであった。 


 一観客として「ドライヴ」へ。以前「片目映画」として「ヴァルハラ・ライジング」に言及したことがあるが、本当は一番観たい「ブロンソン」を未だに観ることができていない状況で、ニコラス・ウィンディング・レフン作品の劇場初体験。結果は、初めてスカジャンをカッコいいと思わされてしまったコクと切れの暴力描写に圧倒され、これまで「タクシー・ドライバー」はその他の出演作における腑抜けたコメディで蔑視していたアルバート・ブルックスを完全に見直す快挙であった!それでもキャリー・マリガンはやっぱりミスキャストだと思うが、初めてその骨格が魅力的であることが分かるように撮られていたのが技巧面で評価できる(特にウェイトレスの制服姿)。さらに、ビッチ極まりないクリスティーナ・ヘンドリックスに対する無慈悲な扱いが、儚い美しさへのレア度を高めるのに機能していて、各描写における意図的な“外し”の演出もちゃんと娯楽しているところが大いに快感だった。


 一観客として「ジョン・カーター」へ。シルバーフォックスもそうだったが、彼女こそが現実がクソであることを教えてくれるのだ。だからこそ本作はリン・コリンズをこそ見直す(堪能する)作品である。それに、妄想こそが現実であり、そのために人は死ねる。いや、死ぬ覚悟を持たなければならない!という重要な事実。それが現実を拒絶する意志の力なのだし、俺が幼少時からどこか胡散臭く感じてきた「スター・ウォーズ」の世界観に乗れない原因(安易でパクリ臭い)でもあったのだ。もちろん、「アバター」は科学的に理論武装して、パクリ非難を回避しようとして先回りしただけの作品ということも自動的に分かる温故知新システムも導入。最大の失敗作だというなら、誰の目に触れさせずに愛でる甲斐もあるってもんだ。


 一観客として「バトルシップ」へ。ボンボンの癖にちゃんと兄貴っぽいステラン・スカルスガルドの七光り息子をやや見直す。イラク・アフガン戦争帰還兵慰労映画のようにも見えるので、カタストロフィーらしき場面でも誰も死ぬところを見せないのは、良し悪しは抜きにしても作り手の堅固な意図を感じる。そして、「レーダー作戦ゲーム」の映画化というのを忘れた頃、闇夜になってゲームの本題がようやく展開されるのだった。なので登場するエイリアンのデザインが根本的に甘いのが難点だが、最終的に打開策をセガールと同様ロートルとUSSミズーリに求めるところは「沈黙の戦艦」オマージュのつもりなのかも知れない。しかも、女のチョイスはオナペットには出来ても身近に愛し抜けない無個性なタイプで、「トランスフォーマー」を下回り、唯一の希望になる女兵士パートについても、ヒョロヒョロして現実味のない女兵士という、黒人女性の美しさを大いに誤解しリアリズムからも逸脱したチョイスをかましてしまった。とはいえリーアム・ニーソン好きには無駄ににじみ出る貫禄が嫌というほど味わえるので、確実にお得だとは断言できる。ステップフォード・ワイフ [DVD]ステップフォード・ワイフ [DVD]シザーハンズ (特別編) [DVD]カラー・オブ・ハート [DVD]Drive [DVD]Valhalla Rising/ヴァルハラ・ライジング[リージョン2][PAL-UK][Import]Bronson[リージョンコード2][PAL-UK]「Import]タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]ジョン・カーター DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]ウルヴァリン:X-MEN ZERO [DVD]スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX (初回生産限定) [Blu-ray]アバター [初回生産限定] [DVD]アバター・オブ・マーズ [DVD]バトルシップ [DVD]レーダー作戦ゲーム沈黙の戦艦 [DVD]トランスフォーマー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン [DVD]トランスフォーマー/リベンジ [DVD]