魚+狼犬+蜘蛛のメタファー考察。

 一観客として渋谷ヒカリエにおける、「デヴィッド・リンチ展」へ。黒一色のテンペラ画や、顔が絶対に映らないヌード写真など、分かりやすいリンチらしさから、「オン・ジ・エアー」→「Dumbland」的猥雑感のあるドローイングの質的変化が味わえる。瞑想をアイディアの源泉とする思考は大いに共感できる。誰もが空想するが、そこにいる魚を釣り上げられるかどうかは、表現者とそうでない者の違いだと言える。東急文化会館プラネタリウムや香水専門店も含む)以外のここに来るつもりは一切なかったため、場所に難ありではあるが、図らずも意義深い空間&時間。かつ無料。
http://www.hikarie8.com/artgallery/2012/04/post-1.shtml


 ブロードメディア・スタジオさんのご招待で、「凍える牙」試写へ。ミステリーに興味のない俺としては、タイトルは聞いたことがあってもこの作品の原作が過去に二度ドラマ化されていることは知らなかった。それほど前の作品でありながら、今回再度韓国で映画化されるというのは、鑑賞によりその内包しているテーマが「ドラゴン・タトゥーの女」と共通しているがゆえにいいタイミングであることは分かった。もちろんそのテーマとは儒教的価値観に基づいた男尊女卑社会と、警察というマッチョな男社会の二重囲いで強調される、“女への差別”と“女への暴力”である。少女をシャブ漬けにして身体を売らせる、という犯罪も、現在の日本の治安ではあまりリアリティを持って考え難い(日本であれば外国人の女が標的となるはずだ)から、舞台を韓国にスライドする趣向は、折に触れてのテーザーガンの多用と共に大成功して見える。ナガブチ映画出演女優の汚名返上?に奮闘するイ・ナヨンの健気さと小作りな感じがデカい銃とバイクとの対比で「ブルースチール」並に似合っており、ソン・ガンホは「青い塩」に続いて“PV的”に誰もが期待する通りのガンホ。狼犬の能力のリアリティには、関根元クラスの専門家に話を聞かねば分からないだろうが、動物の当為として健気だ。


 一観客として、「アメイジングスパイダーマン」へ。俺的には池上遼一版(もちろん、本来は原典)に立ち戻ったらしい科学技術の荒唐無稽さに目をつぶると、物語の巧妙な回転に支えられ、是非とも前シリーズのような伏線放棄をしない終了を願うようになっていた。ピーターの父、伯父さん、他の登場人物の父、父の同業者(の人格的、社会的喪失)といった、執拗に繰り返される“父の喪失”の上書きは、(オチも含め)今後も連続するであろう同一のテーマの終極を大いに暗示させる。また、ブルース・キャンベルのように顔力で別格の存在感を発揮するC・トーマス・ハウエルの起用により、街ぐるみの団結体勢が9.11後の映画として当然のように整っており、ヒーロー映画としての爽快感を後押しする。「笑わない限りは少年のような女」の存在が記憶を刺激し、まるで「スーパーマン・リターンズ」を観た時に近いフラッシュバックはあったが、前シリーズの痛々しい童貞感に比べたら、ドラキュラのようにセクシーかつ苦悩する男としてのコナーズ博士(=リザード)の熱演もあって、人間関係としては断然にリアリティが増した。さらにグウェンの弟たちやジャイアンみたいな奴、同能力発現者の出現を容易に予感する設定的な余地といい(糸は“そこ”から補充するのか?)、仕切り直しの覚悟や斬新な伏線が随所に伺われ、長くても好感は持てる。
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