作家or役者で追う、それぞれの意義。

 ワーナー・ブラザーズさんのご招待で「アウトレイジ ビヨンド」試写へ。唐突なタイトル登場に対し、たけし(大友)登場まで焦らす焦らす!それも前作のように暴力描写ありきで話を膨らましたのではなく、前作からの不自然な繋がりを無効化する布石の必然性があり、ゆえにちゃんと饒舌に物語を転がしてるため、尺もたっぷり使い充実感があるのだ。さらに、前作以上に広がった弱いものいじめの多重構造こそがフラクタルであり、その無間地獄性の萌芽は「TAKESHIS'」から窺えたが、たけし自身の暴力映画のアップデートを図った前作に対し、バッティングセンター(「GONIN」?)のシーンや、クライマックスを観ると、本作はやくざ映画(集団抗争映画)という既存ジャンルへのアップデートを図った野心作と痛感させられる。前作も闇中での銃撃の閃光で「ソナチネ」へのセルフパロディを見せたが、今回も、銃を検める振りで…など、「3-4x10月」的な自作への言及は抜かりない。また、本編と関係なく、試写場における俺の後ろには、 山王会幹部・五味役を演じた光石研さんが着席しており、かつて築地で「BROTHER」試写に臨んだ際、俺の後ろに着席した大杉漣さんの記憶が否応なくフラッシュバックされた。つまり、作品だけでなく俺が鑑賞したシチュエーション自体、過去の“たけし映画”に向き合う姿勢へのリフレインかつアップデートともなっていたというわけだ。そしてネタバレでもないので断言すれば、別に「全員悪人」でもない。むしろ予告の台詞通り、たけし映画にしては筋を通すことへの目的性が作中を覆い、「一番悪い奴は誰だ?」という点こそ主眼が置かれる。その落とし前へのパトスが前作のクールネスと対極をなし、そのせいか夜景にも「カリートの道」や「仁義なき戦い」といった過去のマイルストーンに通低する特有の湿度がある。今回は銃がメインの暴力描写に特筆すべき点はないが、偽善的なババアなら顔を覆う程度のライトなのは少々散見できる。しかも今回、ラーメン屋代わりにカレーが重要なアイテムと化するなど、たけし特有の庶民食へのこだわりが定番ギャグでも機能。また、ノークレジットで予告に登場した白竜さんの北野組への衝撃のカンバックが、前作における、“グバナン共和国”級の勢力と化すのも要注目!加えて國本鐘建さんも復帰し喜ばしい限りだ。しかし、だからこそ、このまま完結して欲しいと微妙に願う快作なのだった。とりあえず観ろ、バカヤロー!


 一観客として、「プロメテウス」へ。「エイリアン」前日談というのはいくら情報を秘してもバレバレだったので、それを楽しむ作品。だってよく見れば舞台の惑星も違うし、これで終わるとはとても思えないので、新ネタ披露を映像美で楽しむために作られているのだ。オリジナル一作目だって、ゲテモノ企画を格調高いSFへと高めたのはリドリー・スコットダン・オバノンH.R.ギーガーの功績であるわけだし。つまり、商業映画では間違っているかも知れないが、不誠実な観客はついて来られない仕様で、この消化不良感を楽しめないガキを切り捨てるのは正しい。それでも浅いエイリアン好きも、物語上や設定上の「AVP」との共通点は気になるかも知れない。あのシリーズ分岐とは決別を期したはずが、“世界中の遺跡に見られる共通点”や、ガイ・ピアースを贅沢に使った“ウェイランドの立ち位置”、さらには“エンドロール半ばのオチ”の被り具合は尋常でないからだ。とはいえこれらは全てシリーズ継続で明かされるはずなので、むしろ、コール>ビショップ>アッシュよりも旧式、デイヴィッドの口調と行動のHALっぽさや、オリジナル版(及び三作目)における“レイプ”や“ミソジニー”に対し、セックス(性病、望まない妊娠による堕胎)、そのものずばりのマンコ的メタファーを笑って楽しみたい。そして彼は生殖能力を持たないがゆえに、ショウへの想いをミッションを建前に実行し、物語は次に広がってゆく。でもやっぱり、「2001年宇宙の旅」をそれなりに意識しても、ハードSFではない(神話的作品)のはタイトルからも明白だね。次はキャメロンの登板を期待。


 一観客として、「デンジャラス・ラン」へ。小粒デンゼル・アクションなので、ついトニー・スコット作品かと錯覚するが、実はそうではなく、「ミッドナイト・ラン」を意識した邦題でも、実質若干スケール大き目の「16ブロック」といったところ。俺はそもそもデンゼル・ワシントンの悪人路線の走り「トレーニング・デイ」には「結局ドッキリだろ?」という大きな見込み違いをしていて、全く改心のないその悪人演技に驚かされたものだった。そして「アメリカン・ギャングスター」。これもラッセル・クロウとの一騎打ちかと思えば、グダグダの決着という意味で驚くわけで、要するに彼の悪人は毎度の肩透かしを経験しているのだ。そして今回、悪人に見えた彼は、結果的にはそうとは言い切れなかった。これはネタバレでもなんでもなく、体制の腐敗とデンゼルの腐敗と、その度合いが常軌を逸しているからかも知れない。さらにそこに挟まる、海外の要人確保施設の番をしてるライアン・レイノルズの度外れの間抜けさ加減。彼の視点で物語が転がるもんだから、南アの劣悪な治安も含め、極めて現実感を欠いて映ってしまっているのだ。とはいえアクション自体は案外ハードで飽きないし、局員のひとり、トレイシー・トムズの相変わらずの美しさにはため息が出たが、噂される続編はやめた方がいいだろ。というわけで、むしろゼメキスとのタッグ「Flight」を待とう。映画 アウトレイジビヨンド オリジナル・サウンドトラックアウトレイジ [DVD]ソナチネ [DVD]TAKESHIS' [DVD]あの頃映画 「GONIN」 [DVD]3-4x10月 [DVD]BROTHER [DVD]カリートの道 スペシャル・エディション [DVD]仁義なき戦い [DVD]座頭市 <北野武監督作品> [DVD]グッド・バッド・ウィアード 特別版 (2枚組) [DVD]プロメテウス 4枚組コレクターズ・エディション (初回生産限定) [Blu-ray]エイリアン [DVD]エイリアン2 (完全版) [DVD]エイリアン3 [DVD]エイリアン4 [DVD]プレデター2 [DVD]エイリアンVS.プレデター 完全版 [DVD]AVP2 エイリアンズVS.プレデター(完全版) [DVD]2001年宇宙の旅 [DVD]エイリアン―地球殲滅 (角川ホラー文庫)デンジャラス・ラン [DVD]ミッドナイトラン [DVD]16ブロック [DVD]トレーニング デイ 特別版 [DVD]アメリカン・ギャングスター [DVD]デス・プルーフ プレミアム・エディション [DVD]