視覚への依存(信頼)は人間の証し?

 プレシディオさんのご招待で「レッド・ライト」試写へ。「オカルト映画」とジャンルが呼ばれなくなって久しいが、あえてそう呼びたい。といってもジャンル自体にもかつては二つ傾向があって、「心霊系〜」に分類される作品は未だに根強いが、「超能力系〜」は絶えて久しかったと思う。まあ俺自身がそういうものを根本的に信じてないので観て楽しめないのが大きいんだけど、これはそうした超常現象への懐疑を逆手に取り、「ラスト・エクソシズム」的な童心に帰らせてくれた。要するに能力の実在はともかく、12チャンの「金スペ」、テレ朝の「水スペ」、日テレの「木スペ」みたいな、テレビの古き良きいかがわしさに溢れた頃を思い出すサービスの大盤振る舞いなのだ。懐かしい匂いがするという意味では、「ムー」や「トワイライトゾーン」というより、テーマも絞られてる分、コロコロの「ザ・超能力」を思い出したね。なにしろざっと挙げても、交霊術、ポルターガイスト、スプーン曲げ、念写、ESPカード、空中浮揚、幽体離脱、心霊手術…etcと、超常現象の盛りだくさん過ぎる描写が巧妙に配置され、本作をジャンルの総決算にしようという監督の決意表明と見た。ワンシチュエーションで押し切った「リミット」の監督とは思えない引き出しの多彩さに、キャスティングの異常な説得力が援護射撃し、「エンゼル・ハート」や、その変奏曲「ディアボロス」的なデ・ニーロの立ち位置は、シガニー・ウィーバーと並んで適切そのもの。ちなみに若いデ・ニーロといえば「ストーン」にも登場したが、別人だがまた出るところもかなり笑えた。色彩設計ならびにテーマは「シックス・センス」に共通するものもあるけど、子どもに頼らない分、ラストまで硬質な緊張感が持続するのも気持ちいい。


 一観客として、「ボーン・レガシー」へ。前トリロジーの地味目なキャスティングに対し、アップを多用(毛穴まで鮮明!!)してくれているのは非常に嬉しいけど、なによりレイチェル・ワイズの異常な美しさが浮いていて、アクションや陰謀を「チェーン・リアクション」のように絵空事にしてしまうのが残念。このシリーズはリアル路線で新機軸を開拓したのだから、フランカ・ポテンテジュリア・スタイルズのような、浮世離れしない(それでいてそこら辺にはいない)程度の美女が必要なのだ。物語の全貌が見えないうちにゴチャゴチャ揉めて終わるのは、シリーズ共通に見られる現実感のザラつきを継承しているけど、あまりビッグネームで客を寄せるという売り方はこのシリーズには向いてないので、ステイシー・キーチデヴィッド・ストラザーンエドワード・ノートンといったそこそこ渋いキャスティングは好感が持てるものの、外堀を埋めても正統なシリーズの流れにはまだ見えて来ないのだった。「〜アルティメイタム」が凄まじかっただけに、フィリピンで登場する“プレデターとタイマン張ったヤクザ”としてかなり期待していた、ルイス・オザワ・チャンチェンは、歴代暗殺者の中でも暴れっぷりが少なく、かなり無念。とはいえ「アベンジャーズ」で納得の行かなかったジェレミー・レナーは、「ミッション・インポッシブル〜」並に頑張っているので、主役としては申し分なく、並行して超人兵士計画が進行しているらしいために、続編で彼が主役になるとは限らないが、とりあえず続き待ちだね。 


 一観客として、「ハンガー・ゲーム」へ。俺はかつて「バトル・ロワイアル・インサイダー」の編集および執筆作業に関連し、ギンティ小林さんから蓄積を買われ、ノークレジットのボランティアで、殺人ゲームジャンルの資料を作成したように、個人的なライフワークとしてデータ収集を心掛けており、この手の作品は必須ジャンルだ。その観点だと、殺人ゲームジャンルの本場こそアメリカだし、妙な学園テイストもない本作ならびにその原作を、“『バトルロワイヤル』のパクリ”とか言うのは実に見当違いで、こっちこそ本流。しかし、流れとしてはそう断言できるものの、原作がジュヴナイル(断じて「ラノベ」ではない)なので、システムに厳密さが足りず、ルールもコロコロ変われば外部からもチャチャ入れ放題という甘さから、かなりご都合主義が許されるのはもったいない。とはいえ映画としてはウディ・ハレルソンは元祖NBKとして、殺しのスコアでは上のはずなのに、「ゾンビランド」並にいい奴でも今回活躍しないとか、ダサい未来ファッションでエリザベス・バンクスレニー・クラヴィッツがパッと見分かりにくいのは見て欲しいところなんだろうね。でも本作は映画以上にひとつの斬新な提案をしている。巨乳じゃなく、筋肉の層が乳を下から押し上げている、ジェニファー・ローレンス主演なのだから。さらに接写で彼女の顔の古傷や骨格の美しさをこれでもかと強調、顔の傷痕が美しいのは男だけじゃないという当たり前の事実を思い知らせてくれる。そして最後に初めて見せる自然な笑顔!これが女性美ってやつです。つまり、今後シリーズは、体制そのものの破壊に向かって続くだろうが、彼女が骨格に基づく(整形などない)ナチュラルな美を持つという証明こそがシリーズの主旨なんだと思いたいね。ラスト・エクソシズム スペシャル・エディション [DVD]ザ・超能力 第2巻 (てんとう虫コミックス)ザ・超能力 第1巻 (てんとう虫コミックス)ザ・超能力 3 (てんとう虫コミックス)[リミット] スペシャル・プライス [DVD]エンゼル・ハート [DVD]The Devil's Advocate [DVD] [Import]ストーン [DVD]シックス・センス(買っ得THE1800) [DVD]ボーン・レガシー [DVD]チェーン・リアクション [DVD]アベンジャーズ DVD+ブルーレイセット [Blu-ray]ボーン・アイデンティティー [DVD]ボーン・スプレマシー [DVD]ボーン・アルティメイタム [DVD]ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル [DVD]ハンガー・ゲーム(上) (文庫ダ・ヴィンチ)ハンガー・ゲーム(下) (文庫ダ・ヴィンチ)ハンガー・ゲーム2 上 (文庫ダ・ヴィンチ)ハンガー・ゲーム2 下 (文庫ダ・ヴィンチ)ハンガー・ゲーム3 上 マネシカケスの少女 (文庫ダ・ヴィンチ)ハンガー・ゲーム3 下 マネシカケスの少女 (文庫ダ・ヴィンチ)ハンガー・ゲーム [DVD]バトルランナー [DVD]バックマン・ブックス〈1〉バトルランナー (扶桑社ミステリー)バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)バトル・ロワイアル [DVD]バトル・ロワイアル 上  幻冬舎文庫 た 18-1バトル・ロワイアル 下   幻冬舎文庫 た 18-2バトル・ロワイアル・インサイダー―BRIナチュラル・ボーン・キラーズ 特別編 [DVD]ゾンビランド [DVD]プレデターズ [DVD]