日野日出志先生と過ごす年末年始！＋α

まず、個人的な経験がダブって偏った結果となった、2012年の劇場鑑賞作品ベストを。詳細は鑑賞時に書いているので割愛。

1.「ポエトリー アグネスの詩」
2.「ドライヴ」
3.「裏切りのサーカス」
4.「メランコリア」
5.「アウトレイジ ビヨンド」
6.「プロメテウス」
7.「ソハの地下水道」
8.「ダーク・シャドウ」
9.「ホビット 思いがけない冒険」
10.「ヒューゴの不思議な発明」

　一観客として、「ホビット 思いがけない冒険」へ。ドワーフばっかで暑苦しいポスターのせいで延び延びになってたが、食べ物に関しては、まずそうなものは案外食ったら本当にまずかったというのが俺の場合多くても、映画に関して食わず嫌いはイカンと久々に思い知らされた。要するに中身はドワーフ版「ワイルドバンチ」な熱い話なわけで、暑苦しくて当然の話なのだった。それに基本、「ロード・オブ・ザ・リング」でもそうだったが、敵においてもトロル、オーク、ゴブリンどもの不潔さと能足りんさ、さらには裏主人公であるゴラムのキモさに拍車がかかり、もはや公共電波上で“ヤマラム”のような安易な剽窃ができない域に。この奇形性と幼稚さの同居は同種族のグレンデル（「ベオウルフ」でのクリスピン・グローバーは適役！）にも近似し、種族だから仕方ないといえばそうだが、登場人物に健常者（人類）不在というのが、「ロード〜」以上に特殊学級テイストを強め、故にPTA的に難色を示しても、ガキなら大喜びであろう、悪意の巧妙な発露が痛快そのもの。さらには子供に媚びないアシンメトリーかつグロ満載の奇形性と本気の殺気で勝負してる点が、恐らくピーター・ジャクソンは知らずとも日野日出志先生リスペクトに見えるのは「ロード〜」を踏襲し、また技術的にその露悪性を追求しているから頭が下がる。加えて岩が転がって次々ゴブリンが潰れる描写は「ミート・ザ・フィーブルズ」での樽による小動物大量殺戮のセルフパロディだし、岩同士のケンカという、ヴィジュアルが想起しにくい場面まで完全に映像化。特に技術面は「話が50年程度遡る」設定上の荒技を、前トリロジーの登場人物の若返りにも応用し、特にクリストファー・リーの神々しさは本人の矍鑠さも含め、その記録自体に感謝したくなるのは間違いない。前シリーズも同様だったが、俺にとって観てしまったことで、これで完結を見届けるまで生きる理由もできたというもんだ。

　一観客として、「フランケンウィニー」へ。“人形アニメで長編化”ってのがバートンのネタ尽きに嫌な予感がしてたが、カタワ（手がチンバになってる）＆せむしの少年が出るなど、目玉の飛び出た奇形的なキャラと、ゴジラではなくガメラという点で屈折したモンスター愛、原典へのオマージュは短編よりバージョンアップしてる。常々、俺はバートン似の画風を持ち、よりハードコアな、日野日出志先生作品の実写化は、そのグロ表現においても人形アニメしかない！と主張してたんで、半分それが叶った感じ。とはいってもバートンにとっての“人形アニメ”という手法が、「ヴィンセント」との合わせ技での、“初期作品への総括”という位置づけの域を出てないわけで、子供向けなこともあって差別される側の怒りや悲しみはあくまで穏当なレベルに。ゆえに「フランケンシュタインの花嫁」的な言及までも含め、ユニバーサル版（＝ジェームズ・ホエール）へのリスペクトは見受けられるものの、視点も子供目線なので、本質は「ゴッド・アンド・モンスター」でも補足で観た方がいい。それに、「シザーハンズ」のアンソニー・マイケル・ホールみたいに、多様性を許容しない人間も地域も、そしてあらゆるジェンダーバイアスの強要と共に滅ぼされるべきで、中盤そんな展開を期待したが大人な配慮によって、今や成功者・バートン自身のルサンチマンはどっか行ってしまったのをしみじみ痛感。まあ、こうした作品を古巣のディズニーのカネで作れること自体が充分復讐なわけだけど。ウィノナや「ビートルジュース」以来のキャサリン・オハラ、「エド・ウッド」以来のマーティン・ランドー（や声を演じたヴィンセント・プライス似の先生）あるいはフッテージの引用されたクリストファー・リーの偉大さを楽しむ映画として、次回作にこそ新生バートンを期待すべきなんだろう。でも、どうせなら今回は徹底して、現代の3Dじゃなくて、赤青メガネの立体で観たかったというのもあったけどね。