「暴力には暴力」の基本。

 アスミック・エースさんのご招待で「エンド・オブ・ホワイトハウス」試写へ。原題(olympus has fallen)を見る限り、俺は日本の会社オリンパス粉飾決算の話かと思い、完全にノーマークだった。だが実際に鑑賞すると、現実のシークレットサービス女性長官任命により、後から計算外のリアリティが付与され、背景に半島情勢が横たわるのも、それなりにタイムリーな「ダイ・ハード」型アクションだったのだ。さらには、「ダイ・ハード/ラスト・デイ」の失敗により、邦題通りホワイトハウスが陥落する、設定的には最終形態のインフレを起こしながら、ごくストレートに「ダイ・ハード」一作目をなぞる、巻き込まれ型アクションのキレは、アントワーン・フークアにも大ボラが吹ける証明として好感触。エメリッヒの新作、「ホワイトハウス・ダウン」共々、「ダイ・ハード4.0」における冗談映像が着想元だろうが、こちらはマジに破壊し尽くすので心地よく楽しめる。なお、「〜ダウン」での殺人スキルの高い、ジェイミー・フォックス大統領と比べ、こっちの白人大統領(アーロン・エッカート!)はただの駒だが、その分、副大統領モーガン・フリーマンが格上げ、実質「ディープ・インパクト」での黒人大統領先取りが再現される、気の効いた展開が待つ。加えて、「007/ダイ・アナザー・デイ」に続きテロに勤しむ朝鮮人は、計画不明な割に豪腕が印象的で、本来中国の侵攻が、カネの力で改変させられたリメイク版「RED DAWN」よりは、無謀で北鮮らしく笑える(ゲーム「HOME FRONT」然り)。また、「ザ・シークレットサービス」的トラウマを持つ主人公は、ジョン・マクレーンのように家庭が破綻してない分、生還を待つ家族(ラダ・ミッチェルが美しい)の切実さや、過去の轍を踏まぬよう、事態打開に残虐行為を厭わない非情さに説得力もある。しかし、俺にはリズム的に時折挟み込まれる、件の長官、アンジェラ・バセットの端正な尊顔が、アップで眺められるだけで至福の時間なのだった。


 一観客として、「セデック・バレ」第一部 太陽旗/第二部 虹の橋へ。劇場で、現在連載中の「杉作J太郎の現代芸術マガジン」の読者の方に目撃されてたらしく…。でも一緒に体感できたのはまさに光栄です!元々題材の「霧社事件」は西村望先生の傑作、「もう日は暮れた」で知り、映画も二年ほど前から完全版で鑑賞したかったのだ。しかも予告では、「アバター」的異文化衝突と、「アポカリプト」的野蛮人アクションの融合の印象だったが、長尺だけに期待を上回る詰め込みに感激。また、事件より前に知ってた、「高砂義勇隊」の史実から、台湾原住民の首狩り描写が気になったが、とにかくその得物の蕃刀が良く切れ、「スターシップ・トゥルーパーズ」のホッパーバグばりの軽快な人体破壊も満喫。加え、日本人の文明による退化(彼らと共有したはずの鯨面文身を捨てた、通過儀礼なき国の脆弱さ)と、野蛮になった者勝ちの戦況推移は「地獄の黙示録(闇の奥)」、「脱出」、「プレデター」等の、人間狩り映画の最新型でもある。さらに、負け戦に心意気で挑む原住民の無謀さも「ランボー」や、「300」に匹敵する、「男の反逆ムービー(by 伴ジャクソンさん)」という純粋アクションが徹底されるのだ。ついでに原住民側からすれば、その怒りの爆発は、まさに「八つ墓村丑三つの村)」や「タクシードライバー」に通じる暴発そのもので、劣勢下のストレスや地形に起因する激戦も、「ハンバーガー・ヒル」や、「ワンス・アンド・フォーエバー」、その延長の「高地戦」に匹敵。強いて言えば、発端になる日本人の性犯罪の省略や、日本軍が使用した糜爛性ガスの効果を見せない不満以外は、単に舞台が台湾なだけの「国姓爺合戦」を超えた、真の台湾映画と断言できる。この散華の潔さは、腐敗の末に併合を頼み、後から難癖をつける国とは根本的に違うという差別化の表明だろう。なお、「モンガに散る」での父の絵葉書が、なぜあんな赤い桜かやっと分かった。その関連では、妙に泣きを煽る現代アレンジ音楽より、もっと原曲民謡が聴きたかったが、まずは台湾への憧れを掻き立てるに充分なブレイブを、俺に注入しまくったのは間違いない。春田純一さんも好演!


 一観客として、「ラストスタンド」へ。キム・ジウン監督が「悪魔を見た」でやり尽くした、銃器以外の暴力描写の残り部分が全て叩き込まれ、シュワの復帰舞台として、これ以上のものは望めないだろう。頭部破壊、全身バラバラ等、銃器や火薬による暴力描写の徹底がとにかく清々しい。とはいっても既に監督は「グッド・バッド・ウィアード」で銃器による暴力をコミカルに追求したが、こちらはそのウエスタンのタッチで培った雛形を、アメリカという真の舞台で現代アクションに置き換える、監督自身の限界突破の試みなのだ。シュワもこの試みを充分に理解した上で、自身のヒストリー・オブ・バイオレンスや、移民といった出自をダブらせて、暴力の大盤振る舞いで魅せてくれる。脱走した麻薬王の越境阻止(逃亡幇助)という設定は、「S.W.A.T.」に似てるだけではなく、モデルみたいなどっかの国の刑事が凶悪犯を護送する、どっかの国の映画にも類似するものがあるが、やはり銃器が大っぴらに使える国の、自衛の必要性を弁えた移民たちの連携で、その企みが阻止されるというのが頼もしい。暴力は暴力でしか抑止できないのだ。シュワに仕えるルイス・グスマン(同じく移民枠)も、求められるバカとしての役割を全うしたジョニーも、さらに移民の暗黒面を担う、エドゥアルド・ノリエガ共々、全てに手抜きがなく、何もかもがシュワの帰還に対する福音である。なので当然、今後もう一度、玄田哲章さんのシュワ声吹替えによる日本語版でも、何としても観直さなければならない!と痛感するのだった。その時はレンタルしてもいいけど、是非、テレ東かテレ朝の洋画劇場枠という、最高の視聴環境で楽しみたい。それにしても、ハリー・ディーン・スタントンが突然ブチ殺される展開は、彼が心配になるほど派手だったが、フォレスト・ウィテカーとの、「ダイ・ハード」における、マクレーン&パウエルを想起させるような、抑制された友情の盛り上がりも相俟って、シュワへのご祝儀的目配せも完璧なのだった。ダイ・ハード [DVD]ダイ・ハード/ラスト・デイ [DVD]ダイ・ハード4.0 [DVD]ディープ・インパクト [DVD]007 / ダイ・アナザー・デイ [DVD]若き勇者たち [DVD]Red Dawn (2012) [DVD] [Import]ホームフロント【完全日本語版】ザ・シークレット・サービス [DVD]Warriors of the Rainbow: Seediq Bale [Blu-ray] [Import]もう日は暮れた (徳間文庫)アバター 3Dブルーレイ&DVDセット(2枚組) [Blu-ray]アポカリプト [DVD]スターシップ・トゥルーパーズ [DVD]地獄の黙示録 特別完全版 [DVD]真・地獄の黙示録 [VHS]Heart of Darkness [VHS]ジョン・ブアマン監督 脱出 特別版 [DVD]プレデター(DTSエディション) [DVD]あの頃映画 「八つ墓村」 [DVD]あの頃映画 「丑三つの村」 [DVD]タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]ハンバーガー・ヒル [DVD]ワンス アンド フォーエバー WE WERE SOLDIERS [DVD]高地戦 [DVD]英雄 国姓爺合戦 [DVD]モンガに散る [DVD]大戦隊ゴーグルV VOL.1 [DVD]科学戦隊ダイナマン VOL.1 [DVD]巨獣特捜ジャスピオン Vol.1 [DVD]悪魔を見た スペシャル・エディション [DVD]グッド・バッド・ウィアード [DVD]S.W.A.T. CE [DVD]