引導を渡すなら、一思いに。

 プレイタイムさんのご招待で、「ジンジャーの朝」試写へ。思春期の女特有のベタベタするくせ、すぐ友情が消える理由が良く分かる佳作。その儚さと自らの良識による遮断を、キューバ危機との文字通り、“世界の終わりの予感”と交錯させ、主人公にとっての本当の“世界の終わり”として描き出す。サリー・ポッター作品としては久々だと思うが、「オルランド」のロシア貴族の娘、「耳に残るは君の歌声」のクリスティーナ・リッチの素材を最大限に活かした、美少女はもっと美少女に、普通の少女はそれなりに切り取る手腕は健在だ。主役のエル・ファニングを始め、取り立てて美少女を起用しているわけではないのには、描かれている世代/時代が、ポッターその人にとって非常に思い入れの深い時代であることが大きいだろう。特に、ジェーン・カンピオンの娘ということで起用されたと思しき、アリス・イングラートもその例に漏れず、骨張ったアレクシス・ブレデルといった風貌は微妙だが、その不機嫌そうな、面倒臭そうな空気は、事実面倒を多数持ち込む厄介な存在として、観ている側としてもかなり怖いリアリティがある。リアルといえば、「キッズ・オールライト」に続いていい仕事してるアネット・ベニングのブサイクな役作りも、左翼的雰囲気を盛り上げてて素晴らしい。対して、ファニングの母親役、クリスティーナ・ヘンドリックスが美しすぎ、かつ巨乳過ぎるので目立つが、巨乳はさておき、その美貌は個人的にかなり目の保養になった。しかし、毒にも薬にもならなそうな役に見せかけて置いて、実はかなり鬼畜なアナーキストに扮したアレッサンドロ・ニヴォラが一番の儲け役に見えるのだった。 


 一観客として、「G.I.ジョー バック2リベンジ」へ。恐らく「X-MEN」の“コロッサス”みたいだろうが、次回作で金属定着後の尊顔を早く拝みたい“デストロ”に続き、自社製品に忠実な“コブラコマンダー”がやっと登場。しかもその中身は、声は公家言葉でも、ルックスは前作通りジョゼフ・ゴードン=レヴィットと考えれば得した気分になるかも。さらに今回は“バロネス”も“スカーレット”もおらず、故に女同士のバトルもないに等しいが、パーツがしっかりしたエイドリアンヌ・パリッキは漫画実写化向きで、ドラマ版「ワンダーウーマン」の挫折も惜しまれる逸材だった。一応今回も“デューク”のチャニング・テイタムも出てくるが、すぐ退場し影の薄い“フリント”と交替。今回、ソマーズ監督じゃないからか、“グラント”ことデニス・クエイドも未登場と、全体に思い切り過ぎて次回が心配になるほどのリニューアルが敢行された。しかしデザインは変えても、実は一番人気の“スネークアイズ”は健在で、何故か師匠のRZAを挟み、“ストームシャドー”と共に大健闘が嬉しい。3D対策で大幅に撮り直された、ド迫力アクションの大半が彼らによるので、次は相棒の“ティンバー”を是非出して欲しいね。なお、核を誰もが持ち各国勝手な主張する混迷の中、核とは無関係でも実在の強力なエコ兵器を使うのは、“コブラ”の警鐘と思いたい。にもかかわらず、最終的には「沈黙の戦艦」や「バトルシップ」に通じるロートル兵士称揚となるわけだが、先陣を切るウィリスの「中性脂肪が…」ってのに普通に受けてしまい不覚。でも前回なかったコブラ/ジョーの掛け声はアニメに及ばないがやや実践し、“ファイヤーフライ”vs“ロードブロック”も、「ワイルド・スピード MEGA MAX」における、「vs ヴィン・ディーゼル戦」と違い、意外にも敏捷な手技でガン=カタの応酬(カート・ウィマーは無関係)なのは新鮮だった。また小さい役ながら、「アルティメット2」のエロディ・ユンにもサプライズ!


 一観客として、「ある会社員」へ。「ス SOO」や「アジョシ」でも描かれた、一歩踏み込むと裏社会と直結するような、韓国の商店街(市場?)における、通りと路地の陰影が強調される。「チェイサー」や「息もできない」でも強調された、住宅地の高低差も意識してその縦移動が追われ、この両者は韓国の格差を象徴するものであり、現実の格差の開きでもあるらしい。それ以上に露骨に挿入される鳥のメタファー、そしてかつてのアイドルへの憧れは、「サニー 永遠の仲間たち」の80年代賛美にも通じる、貧しいが格差のなかった時代への憧れでもあるだろうし、現代の韓国社会も閉塞している表れと言える。ソ・ジソブ演じる主人公は、それが殺しでも仕事を愛していたが、みんながそうとは限らず、上司との対決において、彼が吐き捨てる(「好きで仕事してる奴がいるか!?」的な)台詞も象徴的だ。滅私奉公も出来なくなった時、仕事人間ジソブはキレイに辞めようとするあまり、齟齬を来たしドラマが転がる。もどかしくなる程に抑制され、不器用な恋愛シークエンスもいいが、そのコントラストを期待した韓国バイオレンスとしてはマイルドだった。撃たれたババアの頭部に容赦なく穴が開くのはいい。それに、室内バトルや凶器への対処法を見れば、アジアの家庭内暴力版“ジェイソン・ボーン”トリロジーを目指していたのも分かる。でもアクションも暴力も足りないのだ。部下の女が所持するスローイングナイフの動きがいいので、ナイフワークに関してもっとアップも欲しかったし、クライマックスがガン=カタ(の模倣)なので、あっさり勝負をつけて欲しくなかった。またラストシーンの構造が、「甘い人生」をなぞったものだけに、「映画は映画だ」のような傑作をものしたジソブ主演作としては、より惜しさが滲むのだ。オルランド 特別版 [DVD]耳に残るは君の歌声 [DVD]キッズ・オールライト オリジナルバージョン [DVD]G.I.ジョー [DVD]G.I.ジョー バック2リベンジ 完全制覇ロングバージョン ブルーレイ+DVDセット (2枚組)(初回生産限定) [Blu-ray]X-MEN:ファイナル ディシジョン [DVD]沈黙の戦艦 [DVD]バトルシップ [DVD]ワイルド・スピード MEGA MAX [DVD]リベリオン -反逆者- [DVD]アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ [DVD]ある会社員 [DVD]ス SOO [DVD]アジョシ スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]チェイサー [DVD]息もできない [DVD]サニー 永遠の仲間たち デラックス・エディション DVDボーン・アイデンティティー [DVD]ボーン・スプレマシー [DVD]ボーン・アルティメイタム [DVD]甘い人生 通常版 [DVD]映画は映画だ [DVD]