アクション過剰投与で己を痴呆化させる企み。

 ツインさんのご招待で、「コールド・ウォー 香港警察 二つの正義」試写へ。単なる権力闘争に終わらない、警察上層部の複雑な人間関係、そして機微、内部の犯罪(腐敗)は、物語が香港のみで完結してるから映画として大陸への配慮無用に作られてるように見える。なので迫った空撮による、香港らしい街並みの美しさも堪能できれば、それらがブチ壊されるド派手なテロ描写も楽しめてお得である。また、複数人の監督ならではの読めない落としどころを持つストーリーに加え、劇中のアンディ・ラウによる「インファナル・アフェア3」におけるレオン・ライ的役回りには笑わせてもらった。それは同時に「インファナル〜」一作目に通じるスリーパーへの暗示にも通じ、かのシリーズに次ぐ発展性あるシリーズの開幕表明としてのサービスに見えたのである。それだけに主役以外にもアーリフ・リーなどの化けそうな若手や、「香港国際警察/NEW POLICE STORY」を連想させるチャーリー・ヤンや、脇の女優陣に綺麗所を大挙揃えたりなど続編を期待させる周到な配置が光る。またアンディ・オンは「マッド探偵」の方が新境地だったらしく、意外性はなくとも「〜NEW POLICE STORY」を発展させたような扱いにはかなり納得。さらに、赤犬のロビンさんも指摘されてたように、またしても「ダーク・エンジェル」の“サン刑事”ことバイロン・マン(シルバーライオン)の登場が物語の凶悪性にバイアスをかけるのだが、俺ももういい加減、ルイ・オザワ・チャンチェンとの区別はついたのであった。


 一観客として、「ウルヴァリン:SAMURAI」へ。そもそもがフランク・ミラーによる日本リサーチ足りなさすぎ原作(ミラーの脳内日本が舞台)の、スカスカの色物的な話を補強、国辱描写も可能な限り修正、映画の中の定番日本に近づけ、一応万国共通に見られる活劇にしたのは大したもんだ。どだい無理のある話に整合性をつけ何とかまとめてるため、とにかく長いが、地理がおかしいとか細かいことは言うものではない。リサーチの細かさは「キル・ビル」より水準を上げた思うし、これぞ大人の仕事である。また、アジア系モデルのハリウッド作品起用となると、デヴォン青木的なアジア人に受けのよくない、アジア系のルックスを戯画化したようなルックス重視の起用ばかりで、本作も女優陣は例に漏れず、個性的すぎるルックスで占められてしまった。だがそうした不満を吹き飛ばす福島リラのアクション・スキルには大興奮で、彼女に志穂美悦子ばりのアクション女優に育って欲しいと心底感じたのも事実。但しウィル・ユン・リーの覚束ない日本語は、“言わされてる感”を出すためのささやかな抵抗にも見え、“自ら言ってる”イドリス・エルバ先生の方が数段上なので、日本人の設定の癖にあんないい加減な日本語なら、あの役は津田寛治さんに演じて欲しかった。津田さんに断られたのかな?しかし、「ニンジャ・アサシン」の“ピ氏”や、「G.I.ジョー」シリーズの“イ氏”のように、「ニンジャでも日本人役じゃない!」という言い逃れができない役にチャレンジしてるのは見上げたものである。ミュータントの出現は世界的な規模ではないのか、それが日本人の特殊性(被爆の逆メタファー?)なのか、日本人ミュータントが皆無という不自然さの中、それでいてミュータントへの偏見がなく、比較的受け入れてるというのが実に妙だ。また、枢軸国側ミュータントという意味では、前作「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」のケヴィン・ベーコンに続き、今回も“ヴァイパー”としてドイツ女(ヒドラ党員)が登場する。その偏りはともかく、恐らく名前から毒を持つらしいのだが、単純に敵として特殊能力が分かりにくく、キャラとして魅力に乏しいのがもったいない。今回は次回作の前振り的側面も強く、ショートカットも麗しい“ストーム”ことハル・ベリーも登場。エンドロール後も、次回作の最大の敵であるロボ“センチネル”がチラ見できるので席を立たないように!そして今回身体から除去されてしまってるように見える“アダマンチウム”の件は、“ウルヴァリン”も登場する次回作「X-MEN:フューチャー&パスト」でどう回収するのか気になる。つまり今回も“ジーン・グレイ/フェニックス”の死を引きずってはいるが、時間遡行能力を持つミュータントにより、次回作で幻覚ではなく生きていた頃の彼女に再会することになるはずなので、その辺に鍵があるんだろうとは思う。しかし、劇中ラブホテルが克明なのは、国辱映画史的に「エンター・ザ・ボイド」に続く新機軸であり、「ハンテッド(=新幹線)」や「デッドヒート(=パチンコ屋)」に次いで日本特有の描写をアップデートできた点の功績は買う。特に“宇宙探検ルーム”の存在は「ブルーバレンタイン」と比べても、宇宙探検気分でセックスを味わうシチュエーションが万国共通なのだとよく分かる(俺は嫌だけどね)。なお、ジャックマンが好きなのか、やたらフィーチャーされている由紀さおりの歌が耳に残るのに加え、ロケ地の選定やサントリー「響」を飲むジャックマンの姿にこそ、プロデューサーとしての義理堅い“サムライ”の姿を見た気がする。


 一観客として、「エリジウム」へ。「オン・ザ・ロード」に続きアリシー・ブラガのアップが多く至福の時間である。しかしブロムカンプの前作のように、風刺と社会批判が笑いと共にブレンドされてたか?というとノーであった。結局、貧民が富裕層専用宇宙ステーション・エリジウムに潜入するミッションは、「ザ・ボーダー」のようなメキシコからの不法移民と同じく、メタファーですらないほどあからさまでも、被爆したマット・デイモンも難病の娘を抱えるブラガも、エリジウムの生活より、置いてある万能医療マシーンが重要なのだから。実際ジョディ・フォスターが胸を張るような生活は見て取れないし、貧民側の生活も被爆や病気にさえならなければ特別酷い生活にも見えない。確かに「第9地区」の猥雑な汚さを引継ぎ拡張したような、暴力の行使を半改造人間かロボットに頼る未来像は、デッド・テック・フューチャー史に新たなページを付け加えただろう。但しそんな世の中を転覆するのがキリストばりのケチな泥棒というのが、ケチなハッカーに世界を救わせた(ように見せた)「マトリックス」の延長でしかなく、舞台がアメリカなのに、監督の出身地である南アのようには想像力を飛翔できなかったのではないか?という気がする。ガジェット的には、プロセスはともかく、デイモンのTシャツの上からの改造が動き回って臭そうで参った。しかも握力のパワーアシスト装置が、強化外骨格に付属してないとあのバカ力は無理でしょう。そんな中、顔面崩壊による復顔テクノロジーで笑わせ、改造人間同士の対決という展開に一役買ったシャルトー・コプリーだけは最高だった。行き場もなく暴力しか取り得がないニンジャというだけでなく、器のない者が力を手にし一挙に世界が堕落する様は、当たり障りのない映画よりマンガや小説のディストピア作品で描かれることが多く、かつクーデター後にさらに酷い国になるような現実を反映し、凄惨な統治の予感に胸が震えたからだ。もっと彼の恐怖政治の過程を丹念に見たかった。インファナル・アフェア [DVD]インファナル・アフェア II 無間序曲 [DVD]インファナル・アフェア III 終極無間 [DVD]香港国際警察 NEW POLICE STORY [DVD]MAD探偵 7人の容疑者 [DVD]ダーク・エンジェル シーズン1 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]ダーク・エンジェル シーズン2 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]ダーク・エンジェル―スキン・ゲーム (角川文庫)ダーク・エンジェル―最終戦争 (角川文庫)アイアン・フィスト [DVD]ウルヴァリン:SAMURAI [DVD]キル・ビル Vol.1 [DVD]キル・ビル Vol.2 [DVD]ワイルド・スピード×2 【プレミアム・ベスト・コレクション】 [DVD]シン・シティ [DVD]パシフィック・リム 3D & 2D ブルーレイセット (3枚組)(初回数量限定生産) [Blu-ray]ニンジャ・アサシン [DVD]G.I.ジョー [DVD]G.I.ジョー バック2リベンジ [DVD]X-MEN:ファースト・ジェネレーション [DVD]キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー [DVD]エンター・ザ・ボイド ディレクターズカット完全版 [DVD]ハンテッド [DVD]デッド・ヒート ― スペシャル・エディション 2枚組 [DVD]ブルーバレンタイン [DVD]手紙/生きがい-由紀さおりの華麗なる世界(紙ジャケット仕様)サントリー 響 21年 ギフトパッケージ 700mlエリジウム [DVD]On the Road [DVD] [Import]ザ・ボーダー [DVD]第9地区 [DVD]マトリックス 特別版 [DVD]マトリックス リローデッド [DVD]マトリックス レボリューションズ [DVD]漂流教室 文庫版 コミック 全6巻完結セット (小学館文庫)X-MEN [DVD]X-MEN2 [DVD]X-MEN ファイナル・デシジョン [DVD]ウルヴァリン:X-MEN ZERO [DVD]