絵空事／リアル、どっちも映画。

　プレシディオさんのご招待で、「リディック：ギャラクシー・バトル」試写へ。ヴィン・ディーゼル的に思い入れの強いキャラであろうことが窺えるために、「ピッチブラック」での、「要塞警察」における“ナポレオン”的位置付けでしかなかった異端の飛び道具キャラは、続編のディーゼル自身のプロデュース作品「リディック」によって、これ以上ないほど世界観を広げられた。暴れん坊キャラが暴れるにはバトルフィールドは広い方がいいんだろうが、その分本来のキャラが持っていた、特殊環境下での限定的な能力が活かされてるとは言えない結果になってしまった。本作はこの魅力的なキャラを再度そうしたソリッドシチュエーションに叩き込む原点回帰の試みであり、ディーゼル版「コナン」ともいうべき蛮勇の末尾を飾るものである。さらに前作からの因縁や、一作目からの因縁まで登場し、見続けた観客には御褒美に、もはや忘れ気味の観客に向けては展開の読めない緊張感として機能することで、このキャラにこだわり続けたディーゼルの矜持も垣間見せ、「ワイスピ」シリーズとは違う楽しみ方ができるのは間違いない。

　アルシネテランさんのご招待で、「オール・イズ・ロスト〜最後の手紙〜」試写へ。要は“ロバート・レッドフォード漂流記”なわけだが、それだけに登場人物はひとり、孤独な海上サバイバルを描く作品なので、殆どパントマイム並みに無言という、状況的には当たり前でも、映画的にはかなり斬新な作品となっている。遭難当初、レッドフォードはヨットで航行してたわけだが、その限定空間にバックボーンもそれほど明解でない男が放り込まれることで、「キャスト・アウェイ」以上にスターである“ロバート・レッドフォード”その人が丸裸にされ、その生死と向き合う姿が浮き彫りになるのだ。“漂流”という意味では「ライフ・オブ・パイ」と同じシチュエーションでも、レッドフォードという極めて“信頼できる語り手”を得た、自然の世界のリアルが立ち上がってくる。その過程で分かるのは、「イントゥ・ザ・ワイルド」や、「127時間」同様、人間が住んでる世界など、地球のごく一部に過ぎないという、我々の驕りや錯覚を正すものだ。それに地続きでもない世界は、極限状況下でも、「エッセンシャル・キリング」のように、人間の根源的アクションによる状況の打開を許さない。感情的になったり対処の順序を間違えばそこで終わりである。そんな戸惑いや感情の起伏を、表情や動きだけで文字通り“背中で語る”姿は、人生の終盤に差し掛かったからこそ説得力を持ったレッドフォードの総決算なのだろう。だからこそ、アイドル視されてきた過去の集大成でもある、もう一つの面が前面に出た「キャプテン・アメリカ／ウィンター・ソルジャー」への期待も高まろうというものだ。

　一観客として「マイティ・ソー／ダーク・ワールド」へ。いい加減、続けるのに無理がある絵空事。幼稚なマーベルでもとりわけ荒唐無稽でどうでもいいシリーズだが、ロキがどんどん魅力的になってきているのも事実だ。あんまり話に関わらない浅野やパニッシャーはさておき、今回はカット・デニングスがかなり可愛くなってるのが一番印象的だった。キャラが前面に出たせいということもあるかも知れないし、元々ルックスはキュートだと思ってるが、以前からクリスティーナ・ヘンドリックス並みに不自然な巨乳から連想すると、単に整形したのか？という気もする。チンコ出しはお手のもののステラン・スカルスガルドのチンコ出しは息子の全裸演技への対抗心から買って出てるようにも見える。敵が単なる特殊メイクキャラなので、キャラ立ちがかなり弱いことが突出してるが、また「アベンジャーズ2」に向けた長めの予告編って位置付けなら、この程度でちょうどいいんだろう。もちろん暇つぶしに観に来たようなジジイが完全に消え去ったエンドロール後、「アベンジャーズ」ならびに「ガーディアンズ・オブ・ザ・ギャラクシー」への関連を示唆する前振りが現れるという仕組みだが、ジジイどもにはどうでもいいのは間違いない。