「暴力映画」という世界との戦い方。

 ツインさんのご招待で、「ファイ 悪魔に育てられた少年」試写へ。全世代が楽しめる復讐ものであり、日本人からすると、伝え聞く限りは「恨」という民族性は、対外的なものと解釈しがちだが、こうした同胞内部での「恨」が起点に込められることで韓国バイオレンス映画の質が維持されてるとも分かる傑作。本作の原動力は境涯への怨嗟(復讐)と儒教的価値観に対する挑戦である。これまでも韓国映画は娯楽に自国の歪みを巧みに織り込んでいるが、今回はひときわ「シティ・オブ・バイオレンス -相棒-」で描かれた地域社会破壊、「チェイサー」や「アジョシ」で描かれた格差、その復讐として「復讐者に憐れみを」や、「悪魔を見た」で描かれた組織犯罪でない個人レベルの黒色テロが、「公共の敵」でも描かれた儒教社会における最大のタブー「親殺し」の寓話という枠の中で有機的に結合している。その社会へのルサンチマンの体現者であり、偉大で殺さなければならない父として主人公に立ちはだかるキム・ユンソクが、「血と骨」を意識した「哀しき獣」とは違った父親アプローチで素晴らしい。そして話の性質上、子役的にはハードな展開が求められることを恐れない作り手の覚悟も、世界観に厚みをもたらした。犯罪者集団における残りの各犯罪スキルに長けた「父(少年の師匠)」たちも、生業や各人のライフスタイル、身体的特徴で、それぞれの犯罪人生を背中で語り、くどくならずに彼らの屈折や社会への憎悪を観客に悟らせている。そんな彼らとの不信と脆い絆を同居させて接する少年のナイーブと狂暴性をヨ・ジングも言葉少なに表現し、青春物語としての側面まで持たせているんだから贅沢極まりない一本である。素直に誉めてしまいたいジュブナイル・バイオレンスだ。


 一観客として、「マチェーテ・キルズ」へ。「グラインドハウス」のお遊びがここまで発展するとは思わなかった。ロドリゲスにとってのトレホはタランティーノにとってのサミュエルみたいなもんで、彼を使ってどれだけ映画内で遊べるかというオモチャ的存在だっただけに、ここまでマジでいじられてしまうと、飛び道具ならではのスタミナ切れは否めない。結局暴力や残酷が一周してバカバカしさの方向を向いてしまい、ロドリゲスの一連の子供映画のように本気感が薄れて感じられてしまうのだ。そういう意味では「Sin City: A Dame to Kill For」で本気のロドリゲスがそろそろ見たいわけだが、あれは半分フランク・ミラーのものなので、どれだけのサプライズがあるかは疑問だ。とはいえ、「スター・ウォーズ」や「ムーンレイカー」の堂々としたパクリや行き当たりばったりの展開は、チャーリー・シーン好きなら楽しめるだろう。個人的にはロドリゲス作品お馴染みの“セックスマシーン”を出すくせに、「スパイキッズ」シリーズのスピンオフであるはずの本シリーズで、身内だったはずのアントニオ・バンデラスアレクサ・ヴェガが敵として登場してくるのに混乱してしまった。しかし、相変わらず片目の女フェチにはサービスショットも多いし、マンコ(恥丘)を殴られたらどんな感じか知るためだけに一度女にはなって見たいという想像力を与えてくれる作品ではあった。しかし三部作の途中ならではの不完全燃焼と、ちゃんと完結させられるのか不安になる、本国での壮絶なコケ具合が、早くもネタとして昇華(消化)しており、本気にならなければそれなりに楽しめるだろう。


 一観客として、「キック・アス ジャスティス・フォーエバー」へ。まさかヤンシー・バトラーやソフィー・ウーまで揃えた誠意ある続編に仕上がるとは思わなかった。今回はマシュー・ヴォーンが製作に回ったことに一抹の不安はあったが、自主製作体制で実現した悲願の企画をいい加減に扱うはずがなかったのだ。今回はヴィジランテの犯罪との戦いと並行し、“ヒットガール”が堅気で生きる中で、彼女か陥ったジェンダーバイアスの地獄との戦いが描かれる。ここで描かれる女に限らず、「ウルフ・オブ・ウォールストリート」でも吐き気と共に意識されたが、結局アメリカは性役割の強制が根底に潜む、似非リベラル社会なので、男女問わずその押し付けは社会に無意識で浸透し、同調圧力を強いるから、ある意味犯罪よりも悪質で撲滅は困難と痛感した。都市部が舞台のこれら作品でさえそうだから、アメリカの大半を占める偏狭な田舎の価値観ではなおだろうし、日本もそれは形を変えてより悪質化している。そんな中“キックアス”と関係を持つ“ナイト・ビッチ”は、元々愛しのリンディ・ブースの時点で外れないのは分かっててヒロインとしては“ヒットガール”より全然好きだけど、前作のように「犯罪者に刺される」などの想定が完全に欠如した衣装なので、“マザー・ロシア”同様必然性が感じられないのは残念。もちろん、“マザー〜”の警官皆殺しの爽快さに反し、その出ベソも気になった。なお、確かに暴力と真摯に向き合う姿勢は見えるし、そうした要素を上手くコミックヒーロー物語に落とし込んでいるとは思う。ここはもう好みの問題だが、作り手が先行者としての「ウォッチメン」へのリスペクトも見せるし、それは“スターズ・アンド・ストライプス大佐”が“コメディアン”へのオマージュであることにも顕著だ。しかし原作はともかく、現実世界に押し込められたヒーローの陰鬱さや狂気がなく、主人公達が若い分、状況を悪化させた“アスキッカー”への処遇の軽さも含め、全体が青春してて救いがあるのだ。このシリーズに限っては下ネタが多いのが大変ありがたいけど、俺はやはり「ウォッチメン」の方が好きかな。シティ・オブ・バイオレンス -相棒- 特別版 [DVD]チェイサー [DVD]アジョシ スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]復讐者に憐れみを デラックス版  [レンタル落ち]悪魔を見た スペシャル・エディション [DVD]公共の敵 【韓流Hit ! 】 [DVD]血と骨 通常版 [DVD]哀しき獣 ディレクターズ・エディション [DVD]マチェーテ [DVD]プラネット・テラー プレミアム・エディション [DVD]デス・プルーフ プレミアム・エディション [DVD]スパイキッズ [DVD]スパイキッズ2 失われた夢の島 [DVD]スパイキッズ3:ゲームオーバー [DVD]スパイキッズ4:ワールドタイム・ミッション【初回限定生産】 [DVD]デスペラード コレクターズ・エディション [DVD]フロム・ダスク・ティル・ドーン [DVD]シャークボーイ&マグマガール [DVD]ショーツ 魔法の石大作戦 [DVD]シン・シティ スタンダード・エディション [DVD]スター・ウォーズ トリロジー DVD-BOXムーンレイカー(デジタルリマスター・バージョン) [DVD]キック・アス<スペシャル・プライス版> DVDQSKL プロジェクタースクリーン60インチ (16:9) 自立式 携帯式 三脚式 4K 吊り下げ 洗濯可能 ホームシアター 投影 会議 教室 (A) (A) (A23)WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)ウォッチメン スペシャル・エディション [DVD]キック・アス ジャスティス・フォーエバー [Blu-ray]