下ネタ&暴力こそ自由の証。

 「男の墓場プロダクション」の杉作J太郎局長のご紹介で、パラマウント・ピクチャーズ・ジャパンさんにご招待いただき、「ジャッカス/クソジジイのアメリカ横断チン道中」試写へ。要はこれまでの映画版ジャッカスでもしばしばやってたジョニーの定番ネタ、特殊メイクによるジジイのドッキリシリーズを繋げ、物語仕立てに長編化したもの。バラエティに富んだバカが各得意分野なりに体を張ったネタで当たり外れもそれなりにあるオリジナルに比べると、本作の方が下品なりにトーンが一貫しており、表面上老人と子供をテーマにしてるだけあって(「ビバ・ラ・バム」より若干ソフト)、ジャッカスシリーズ入門編の趣もあると言える。これまでもあったジジイの金玉ネタの再現に加え、今回はサオやウンコネタも増量して楽しませる。今回は明らかに売春婦風の孫娘とジジイがいちゃつくネタや、スパイク・ジョーンズのババアネタはないが、物語にする以上はやむを得ないものがある(ババアは収録の結果カットされたとエンドロールで分かる)。ガキを女装させ美少女コンテストに潜入するネタでは、ガキの美少女振りに驚きつつも、「キックアス2」でも問題になった、アメリカの似非リベラリズムジェンダー強制社会)を鋭く突くのも心地いい。日本よりは遥かにマシだが、田舎は所詮「リトル・ミス・サンシャイン」や「ローラーガールズ・ダイアリー」でも描かれたように、ジョンベネちゃんを殺したジェンダーの地獄が続く、神と共にある病んだ地域でもあるのだ。ひとしきりの爆笑の後、そんな感慨に耽るとどめにエンドロールに表れる「ライアンに捧ぐ」の文字が一際染みたね。


 ワーナー・ブラザース映画さんにご招待いただき、「300 帝国の進撃」試写へ。“テルモピュライの戦い”の背景に何があったか、その前日談と後日談、スパルタ軍の戦いと同時進行したアテナイペルシャ軍との戦がスムーズに繋がった姉妹編。前作とは相互補完し合う内容なので、単に続編と言うには難しく、よってこちらからでも充分楽しめるし、後追いで前作を見ても新しい発見ができるという、二本で一本と言って差し支えない原作との関連に配慮が行き届いている。しかも今回は断言すれば、「ダーク・シャドウ」同様、ペルシャの武官“アルテミシア”を演じるエヴァ・グリーン映画なのだ。彼女と神王“クセルクセス”誕生の鍵を握るアテナイの将“テミストクレス”との確執が軸で、智謀を兼ね備えたバランス型キャラゆえ“レオニダス王”のような極端なキャラ立ちは望めない主役である。ために今回ペルシャにフォーカスしたとも言えるが、愛情の代替行為として殺し合わねば成就しない歪んだ官能性と彼女のトラウマは、「デビルマン」におけるシレーヌのようで、怨念が暴力にシフトした女の攻撃性、笑顔より睨んだ顔が端正な美しさと相まって清々しくも哀しい。さらにフリークス戦士“エフィアルテス”や“王妃ゴルゴ”、隻眼の語り部“ディリオス”も登場し物語が前作と完全に融合した。また、本作は3Dなのもあり、前回より立体性を重視した動画コンテが活かされ、原画との比較もエンドロールで再度確認できる。もちろん技術的部分以外も立体的な“止め絵”としての血しぶきと飛び出すオッパイという、3Dならではの暴力とエロの大盤振る舞いが子供に全く見せる気のない潔さだ。今回は海戦メインなので、白兵戦のダイナミズムに船同士のスペクタクルが加わりスケールも大幅拡大、登場人物の多さも前作の王以外のキャラ立ち不足を補う関係とも言える。しかし、今回はスパルタ人のように全員マッチョじゃないリアリティに市民の防衛戦としての民主性を感じるし、その裏には「自由と民主主義が何よりも尊い」というメッセージも隠されている。この国では一番危ない自由が本当に侵され、近いうち自由のために戦わなきゃならなくなる前に見ておいた方がいいぜ。


 一観客として、「それでも夜は明ける」へ。酒に一服盛られて目覚めると価値観の完全に狂った世界にいたという、寓話のような実話という触れ込みの作品。ただし「ジャンゴ」で娯楽に落とし込み切れなかった部分、要するにスパイク・リーがアヤつけたくなるのも分かる制度の酷さを、黒人側から落とし前をつけてみたという点が評価されたのだろう。ただし、同胞さえ見て見ぬ振りの異常な密告社会も、インディアン虐殺を描いた「ブラッド・メリディアン」のように、見ているうちにだんだん麻痺してくる。だが同時にアメリカ自身が目を背けてきた、アメリカという巨大な矛盾を突き付けられると、人類は永遠に殺し合い、主導権争いを繰り返し、ひとつになることはないこともよく分かる。なぜならそれが人類の属性だからだ。実録手記にそうした諦観を加えているのは、以前からの著作を読んでいる限り、監督というよりは脚色のジョン・リドリーの手柄に見える。今回の脚色賞受賞により、映画の方が美味しい業界になるだろうが、この人間観を糧にまた歪な犯罪小説を書いて欲しいものだ。もちろん作品には悪のバイアスが掛けられているせいで、精神的に重い仕事だったはずの白人キャストの功績も大きい。また製作者ゆえに儲け役のブラッド・ピットが語る自由の尊さも、この過ちへの反省から、アメリカは弱肉強食の極みでも、絶対に自分たちの自由は売り渡さない根拠として説得力がある。日本人が今や進んで権力に自由を売り渡そうとし、思考放棄に甘んじるのとは逆に。任侠秘録 人間狩り [DVD]怪奇!!幽霊スナック殴り込み! [DVD]ジャッカス・ザ・ムービー 日本特別コメンタリー版 [DVD]jackass number two the movie 限界越えノーカット版 [DVD]ジャッカス 3 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]Jackass Presents: Bad Grandpa [Blu-ray] [Import]ビバ・ラ・バム 1stシーズン [DVD]ビバ・ラ・バム 2nd & 3rdシーズン [DVD]ビバ・ラ・バム 4th & 5thシーズン [DVD]キック・アス ジャスティス・フォーエバー [Blu-ray]リトル・ミス・サンシャイン [DVD]ローラーガールズ・ダイアリー [DVD]300〈スリーハンドレッド〉 [DVD]ダーク・シャドウ Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)デビルマン (完全復刻版) 全5巻完結 [マーケットプレイス コミックセット]12 Years a Slave [DVD] [Import]ジャンゴ 繋がれざる者 [DVD]ブラッド・メリディアンネヴァダの犬たち (ハヤカワ文庫NV)地獄じゃどいつもタバコを喫う (角川文庫)愛はいかがわしく (BOOK PLUS)Uターン [DVD]スリー・キングス 特別版 [DVD]アンダーカバー・ブラザー [DVD]