アクション愛だけが世界を変える。

 パラマウント・ピクチャーズ・ジャパンさんのご招待で「スポンジ・ボブ 海のみんなが世界を救Woo!」試写へ。シュールな世界観だというのは知っていたが、子供だけが視聴するには勿体ないほどの発狂した世界が広がっているのに大変な衝撃を受けた。本来の世界で供給されてる名物バーガーのレシピがとある経緯で奪われたことで住民が暴徒化、「マッドマックス2」的な無法地帯への変貌を見せるだけでも大変に居心地がよい。だがその上、「ハイランダー」や「スターシップ・トゥルーパーズ」でお馴染みのクランシー・ブラウンが声の出演(カニカーニ)をしていることが判明し、通常のアクション映画鑑賞のように前のめりになっていた。しかもダメ押しに主要キャラが実写世界に飛び出すことで獲得したのは、3Dの質感(CGキャラになったことでの実在感)だけでなく、リアルかつ「アベンジャーズ」をもろに意識した劇画調のスーパーヒーローユニットへの変貌であり、その向こうを張る敵がかなり身体を張って頑張るアントニオ・バンデラスというのがどう見てもアクション映画ファン層へ激烈にアピールをしている。その結果、時に脱力を交えた展開もなぜか力みながらのテンションを維持して鑑賞でき、心地よい疲労感に包まれたのである。それもそのはず、エンドロールを見ると、本作自体が本来のシリーズで“マーメイドマン”の声を当てていて亡くなってしまったアクション界に多大なる功績を残した名優、アーネスト・ボーグナインに捧げられているのだから、テストステロン過多は確信的な仕様なのであった。故に必見!


 一観客として「海にかかる霧」へ。実話ベースの舞台劇だったものをポン・ジュノ監督がプロデュースと脚本を担当し、明らかに「スノーピアサー」的な要素を感じることからも、実質監督作に近いと言える作品。しかも「悪魔を見た」でキム・ジウン監督が明らかにオマージュを捧げていた殺人鬼ギョンチョル(チェ・ミンシク)よりも、抑制と計算を効かせつつ確実に打点を稼いでいくやり方でもって、実際にはキム・ユンソクこそが次世代のアンソニー・ウォンの立ち位置に近づいているのかもしれないと思わせる、「チェイサー」、「哀しき獣」、「ファイ」の系譜にある、ユンソク印の皆殺し作品として大満足。さらにまたしても韓国映画的には鬼門である、中国朝鮮族を貧しい漁村で密航させたことに端を発するドラマなので、中国朝鮮族・ユンソク・貧民の抑圧(スノーピアサー)といいとこ取りの不穏要素に加え、イリャニトゥの「ビューティフル」にも通じるツイストから、地上では侮られてさえいるユンソク船長の、海上にしか依り処のない保身から、儒教的(家父長的)なプライド維持のための後ろ向きな必然性は、「シャロウ・グレイブ」や「シンプル・プラン」にも見られたがより徹底している。霧で隔絶された海上で人目のなさから鬼になる乗組員たちを支配する狂気は単なる性欲のためのようでもあり、かつ「シャイニング」的とも言え、韓国映画としてはあまり成功とは言えなかった「南極日誌」も本当はこういうのをやりたかったんだろうとは思わされた。また鍵になる女が、船内で勝手に計器をいじって狼狽える描写があることから、性の対象として自衛のために主人公を操る魔性と同時に、そもそも悲劇の具体的な行為者としての発端なのでは?という疑惑が残り、その不気味な強かさも尾を引き、九十年代後半という作品背景と共に重量感ある見ごたえを残してくれる。


 一観客として「チャッピー」へ。出だしのニュース、コングロマリット内部の二足歩行型ドローンと、自律型ロボの警察への導入競争、さらには主観ショットや、ガラスを使うお仕置き等、リメイク版よりバーホーベン版「ロボコップ」リスペクトに満ち、仮に日本で勝手にカットせずとも「ロボ〜」どころか「第9地区」より大人しい。鮮明でコントのような画面だけでなく、過去作品へのオマージュ要素の継ぎ接ぎだけに、「マスターズ」または「ヒーマンの闘い」から学ぶロボばりに映画感がなく、それが暴力描写排除で余計に嘘臭く、所詮は“ダイ・アントワード”のプロモーションでしかないと、ニール・ブロムカンプの前二作に比べればこの程度でいい認識かもだが、監督に無許可でカットし、それを観客に伝えないソニーピクチャーズの不誠実の表明としては決定的だった。とはいえ、舞台が来年という超近未来にも、特殊すぎる歴史の南アならではの文化や珍銃ベース描写は満載。中でも、同じ配給による露骨な性器修整が不快な、フィンチャー版「ドラゴン・タトゥーの女」“リスベット”の元ネタが本作の“ヨーランディ”なのは知ってたため、免疫はあるとして相方“ニンジャ”の、南アでは認知されてても、日本の田舎のヤンキーさえ忌避するであろう風貌も引きながら堪能。また、初めが赤ん坊状態の人工知能の話だけ、「A.I.」以上に悪事へ荷担させられ、「ロボコップ2」ばりに傷つく「ピノキオ」感も半端なく、幼い生命に向けるべき慈悲を考えるほどの教訓も含まれる。さらに墓標型都市みたいなポンテアパートメントとか、近年はスラムを活かしロケ誘致が積極的なのもありそうだが、世界一の犯罪地帯でちゃんとSFアクションをロケできてるのは監督ならでは。まあ「ロボ〜」愛は明白だけに、ジョーンズ的キャラに限らず、クラレンス的存在も欲しかったが、簡単に人工知能の解決策が見つかるのは、鍵となる警官ロボの風貌同様に日本アニメの影響だろうし、それを隠さない姿勢は買える。だがそこまで読める層に訴える作品として、配給は「ザ・レイド GOKUDO」以上に間口を広げたつもりでも、集客に結び付くか怪しく、本来のファンを遠ざける冒涜はヒュー・ジャックマン演じるキリスト教原理主義者並みに閉口した。なお、本作でアプローチしたシガーニー・ウィーバーに気に入られても、監督は「エイリアン3」仕切り直しとか、大好きな「エイリアン4」の否定になるからやめて欲しいし、素直に「エイリアン5」、もしくはチャッピーが恋する「シザーハンズ」的な次回作を!
ハイランダー/悪魔の戦士 [DVD]CHAPPIE / チャッピー [Blu-ray]