年始早々、ありきたりに露出してみる。

1.「ラスト、コーション
2.「ウォンテッド」
3.「ダイアリー・オブ・ザ・デッド
4.「ダークナイト
5.「ミスト」
6.「28週後…」
7.「ランボー/最後の戦場」
8.「フロンティア」
9.「ブラインドネス
10.「デス・レース

 まぁ、ブコウスキー風に始めておきながら、今までこういうの出したことないし、出す意味もないかもしれないけど、一応2008ベストはこんな感じだな。劇場で観たものだけをその選出対象とした。2008年内公開作品で、かつソフト化後に確認した作品も、劇場で観ていないんでその対象には入れていない。つまり、対象本数は100作品弱というところだろう。もちろん順位選定の基準はいかに胸を打ったか、暴力描写が充実しているか、現実世界の殺伐を反映し、「野望の王国」の如く、「この世は荒野だっ!」と訴えているか、である。個々の作品詳細に関しては既に言及している(今回言及するものもある)し、抜けてるのはそのうち触れるのでここでは無視。


 12月の映画の日、一本目は「バンク・ジョブ」へ。ロジャー・ドナルドソン作品なんで、リメイク版「ゲッタウェイ」路線の非情な犯罪映画を期待してしまった。しかし実際は実話の映画化だけに、「世界最速のインディアン」的な誠実さで、まるで「オーシャンと11人の仲間」とか「黄金の七人」みたいにバカバカしく痛快な方の犯罪映画となっていて拍子抜けする。ただそれは作品の出来が悪いのではなく、最近マッチョ指数の高いジェイソン・ステイサム主演であることもあって、俺が間違った期待をしていたということだ。こっちはガイ・リッチー組としてのステイサムだったんで、荒事も少なく極めて軽妙。頭脳とハッタリで窮地を脱する妻子持ちのチンピラの逆転劇として観れば、(まだ現実には伏せられている部分は多いにしても)これが実話というなら、最高に素敵でふざけた話だ。現実とはこんなにもロマンに溢れて面白いなら、まだ捨てたもんじゃないと充分に思わせる盛り上がりがある。だが現実だけに、ステイサム以外ほとんど生き残れないなど、シビアな部分はそれなりに徹しており、故にサフロン・バロウズ演じるファム・ファタールにも説得力はある。だが俺の期待したトンプスン的暗黒は足りないんで、マイケル・ウィンターボトムの「killer inside me」に期待したいところだ。多分無理だと思うけどな。


 12月の映画の日、二本目は「1408号室」へ。サミュエル・L・ジャクソンが出ていることに過剰な期待を抱くべきでないのは分かっているが、ジョン・キューザック主演のせいで「アイデンティティー」のような壮絶な作品を期待してしまっていた。しかしそこはスティーブン・キング原作、出来は原作の完成度によらず毎度極端だ。超常現象の起きるというホテルの部屋に滞在する物語であるだけに、少し前の「シークレット・ウィンドウ」同様、浅い「シャイニング」の影響下にある作品と成り果てていた。「シークレット〜」がキューブリック版「シャイニング」の“狂気”に影響されたものなら、こちらは“幽霊屋敷”の部分に影響されており、さらにはその幽霊(超常現象)の淵源が各人のトラウマという点がまたも「シャイニング」をなぞったものになっている。もうそういう構造をしている以上、あとの作品自体の質は見せ方にどう独自性を盛り込むかしかなく、それが実現できているかといえば、出来ていない。怖いのかといえばもちろん幽霊など個人的には全然怖くないし、とにかくうるさい映像で、容易に読めるどんでん返しが少しあるだけ。ただ後半のカオスで主人公を狂気にまで追い込めば、若干「マウス・オブ・マッドネス」のような問題作になり得たかも知れないのに、作り手の良心が邪魔しており、残念だ。


 12月の映画の日、三本目は「トロピック・サンダー/史上最低の作戦」へ。戦争映画色を強めても一般には伝わらないだろうが、例えば「白痴の黙示録」とか、邦題を何とかしないと作品の趣旨は伝わらないだろう。実際、作品自体もそんな出来だが。「ズーランダー」は良かったけど、元々ベン・スティラーは苦肉の策でバカに走らなくても、「リアリティ・バイツ」みたいに普通の映画が出来る人なので、戦争版「サボテン・ブラザーズ」のような見せ掛けでも、戦争やアクションといった、ジャンル映画への思い入れがないのが分かる。つまり周辺の設定の細かさで映画マニアに迎合しても、結果的に映画的なハードルが高くなっているだけなのだ。だから笑いも設定の割には直感的だし、戦闘描写に「プライベート・ライアン」以降の戦争映画の影響しかないなど、バカの振りだけしてネタは表層的だ。「ホット・ファズ」が良かったのは、ジャンル映画をネタにしても、観客の偏愛が試されるネタ(=作り手の愛)で埋め尽くされていたからで、こちらとは真逆である。本当に「地獄の黙示録」がやりたきゃ、“長編”で偽メイキング映画も一本撮り、セットで公開する気迫を見せて欲しかった。近頃リンチ作品で出演が常連化しているジャスティン・セローが脚本だけど、この出来だと「アイアンマン2」が思いやられる。


 12月の映画の日、四本目は「デス・レース」へ。「マッドマックス」の原点であるオリジナル「デスレース2000年(改め『デスレース2000』)」の設定を尊重しない時点で、賛否両論は明白だったが、単一の暴力映画としての完成度は高かった。実際原典に捧げたオマージュが、フランケンシュタインへの言及程度でやっつけだが、これがリ・イマジネーションならそれも許されると思う。公道の通行人轢き殺しで点数を競う設定は、あのオチも含め、確かにお気に入りだが、今では車のデザインや残酷描写の安っぽさは否めず、演者全ての大根演技も相まって、リアリティを欠いているからだ。より視覚的な刺激を求めてやまない暴力映画中毒には、同じ事繰り返しても仕方ない。舞台も2012年になっている分、俺は一応の続きとして脳内補完しながらも観たが、レースへの新ルール投入に原典の残り香を感じる。しかし「ローラーボール」や「バトルランナー」を通過した現在の視点では、そこに過剰な暴力描写が加わったことで幼稚さは緩和され、映画バランスが向上している。でもマシンガン・ジョーは、映画に対してよりはスタローンへの敬意として、最後までクソ野郎に徹するべきだった。代わりにジョアン・アレンが「ボーン」シリーズより強権的で、嗜虐美に輝き、「フェイス/オフ」の貞淑さとの落差に興奮する。


 12月の映画の日、五本目は「ソウ5」へ。話の把握は出来て、本作までの伏線回収にも走っており、納得が行くかといえばそうなのだが、それだけの作品なのだ。確かに新たな謎や、ジグソウならではの殺しの大仕掛けといった見所はある。ただ今回はどちらかというとそのシステム(ゲーム)が個々人に仕掛けられたものではないので、大雑把な印象を受けるのだ。つまりそのトラップ脱出に強要される二者択一が、それぞれ固有の罪や生きる実感に繋がるという、従来の流れより少し外れている。また血の量も少ないのは、監督が交代したことも無関係ではないだろう。さらにキャストはシリーズ通して地続きの部分もあるため、前作でも気になったが、追う側と追われる側の俳優の骨格がやや似ており、混乱する点は依然解消されていない。片方は今回脱落するので、今のその懸念はなくなったが、連続殺人を扱うスラッシャー映画にも拘らず物語性が重視される稀有なシリーズだけに、やがて究極の目的達成による大団円を匂わせる終わり方が、イヤでも次作への期待をさせずにはおかない。死してなお周到に謎を残すジグソウとは、全く厄介なジジイだ。それにしても「ランボー/最後の戦場」では説得力ゼロだったブロンドのジュリー・ベンツが、本作ではブルネットで極悪エゴ女を演じ、艶かしくも説得力が増して見直した。ウォンテッド リミテッド・バージョン [DVD]町でいちばんの美女 (新潮文庫)ありきたりの狂気の物語 (新潮文庫)ラスト、コーション [DVD]ダークナイト 特別版 [DVD]ミスト コレクターズ・エディション [DVD]28週後...(特別編) [DVD]ランボー 最後の戦場 コレクターズ・エディション [DVD]フロンティア スペシャル・エディション [DVD]ASIN:B001LF3QJKデス・レース2000 [DVD]デスレース2000 [DVD]野望の王国完全版 8 (ニチブンコミックス)ゲッタウェイ デジタル・リマスター版 [DVD]ゲッタウェイ (角川文庫)ゲッタウェイ [DVD]スマイルBEST 世界最速のインディアン [DVD]オーシャンと11人の仲間 特別版 [DVD]黄金の七人 DVD BOX内なる殺人者おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)アイデンティティー [DVD]シークレット・ウインドウ コレクターズ・エディション [DVD]シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン [DVD]マウス・オブ・マッドネス<dts版> [DVD]ASIN:B001LF3QJ0ズーランダー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]リアリティ・バイツ (ユニバーサル・セレクション2008年第9弾) 【初回生産限定】 [DVD]サボテン・ブラザース [DVD]プライベート・ライアン アドバンスト・コレクターズ・エディシ [DVD]ホット・ファズ~俺たちスーパーポリスメン!~ [DVD]地獄の黙示録 特別完全版 [DVD]ハート・オブ・ダークネス~コッポラの黙示 [VHS]マッドマックス [DVD]ローラーボール (特別編) [DVD]ローラーボール デラックス版〈初回限定パッケージ〉 [DVD]バトルランナー [DVD]ボーン・スプレマシー [DVD]ボーン・アルティメイタム [DVD]フェイス/オフ 特別版 [DVD]ソウ クアドリロジーBOX(4枚組) [Blu-ray]