これもまた「試みの水平線」かね。

 注意:「ソープに行け!」という話とは今回(あまり)関係ないので悪しからず。
 前回も書いたように、まとまった思考と単発的な思考はしばらく分けるが、その単発的思考は試験的に、またここにその日ごとまとめて反映させてみようかと。確かにここにはパーツとしてtwitterを反映させてはいるが、最新のいくつかが出るだけだ。それにそもそも「はてなダイアリー」だの、「twitter」に書き込まれる全ての記録は、言い切ってしまえば誰かと対話がしたいのでも、取り立てて主張したいのでもなく、脳内に去来した思考や感情を誠実に記録したいだけなのだから。ここのコメントをブロックしているのも、そうした理由が大きく、素性の知れない書き込みに“延々”対応するのも時間の無駄になる。「twitter」なんかにしても素晴らしい方には意見させていただくし、誰かが意見くれる場合は、ある程度までならもちろん対応はするが、その意見や対応している姿は、思考とはちょっと離れた別次元のものなのだ。それらが排除されて並んでいるものをフラットに並べておきたいのだが、「twitter」だけではそれらのやりとりも混入してしまうデメリットがある(交流としてはメリットかも知れない)。よって今後単発的な思考の連続体を俯瞰して見るために、ここにも上げてみようというわけだ。こうして、分かれたはずの流れはまた一つの大きな流れとなり、そこを流れる“水のようなもの”の分子結合は、より密に、強固になったのだった…という展開になるといいな、って話。まぁ、少しでもおかしくなるようだったらすぐ戻すけどね。


 アルシネテランさんのご招待で「シークレット」試写へ。韓国映画は一般的な“韓流”みたいなもの(特にドラマ)への深入りは慎重に避けているが、それでも能動的にチェックしないと隠れた暴力映画の傑作を見逃してしまう。俺にとってはそんな作品のひとつだった、「リベラ・メ」の犯人だったり、最近も「目には目、歯には歯」の犯人だったりしたチャ・スンウォンが、本作では主役の刑事を演じている時点で、早くも不穏な空気を感じ取れていい出だしであった。暴力映画的にはふてぶてしさも加わった彼の風貌が、武闘派やくざとの渡り合いにも充分な説得力を発揮し、それでいて妻と共通の傷を持つが故に、妻の犯したかも知れない殺人を隠蔽したことで深みに嵌まる焦燥感と諦めは、本来の繊細さで演じ分けられている。とはいえ抑制の効いたサスペンスとしての展開が基調になっているので、随所に見て取れる、「セブン」や「フォーリング・ダウン」からの影響も取り混ぜながら、謎自体はユン・ジェグ監督が以前に脚本を手掛けた、「セブンデイズ」よりシンプルに設定されている。しかしここは作家性と共に、「公共の敵」などで描かれた韓国社会の古き良き価値観の崩壊、悪い意味での先進国化(による病理)の萌芽を見るべきなのだろう。劇場で鑑賞した韓国映画の近作では、「〜デイズ」はもとより「パラレル・ライフ」も同じく、シングルマザーや不倫、そして同性愛をテーマに織り込んだ作品の連発に込められた作家たちの警鐘は見逃せない。だからこそ、早いところ「悪魔を見た」の日本公開実現も期待してしまうのだ。


 一観客として「ザ・ウォーカー」へ。(理由が明示されず)人食いが横行する崩壊後のアメリカという点では「ザ・ロード」との比較を免れない。ただ、本作の方が重火器や爆弾がふんだんにある世界であり、さらに登場人物の見た目の汚さが抑え目という表面上の違いもある。また、放浪する主人公の風貌や立ち回り(ダン・イノサント師やジェフ・イマダ氏も関与)が「座頭市」を彷彿とさせるのは、荒野に作られた町が物語に大きな役割を果たすことと無縁ではなく、寓話の形を借りた西部劇をやりたかったと、そのアクション比率の高さからも分かる。ならもっとアクションに徹してもよかったのだが、“パニッシャー”ことレイ・スティーヴンソンも大して活躍せず、デンゼル・ワシントンが勝手に負っている妙な目標が物語の核となっている。その主人公の名“イーライ”が意味するところは、「ザ・ロード」におけるロバート・デュヴァル演じる役と同じだが、あくまで聖書至上主義のような話は、非キリスト教徒にはかなり嘘臭いのである。ということは画面は「子連れ狼」的であっても、“暖かい方へ向かう”という、さして目的はないが切実な「ザ・ロード」の方が、同じような寓話でも、行動原理や説得力に圧倒的な差が出てしまうのだ。こちらの目的にしても、人間こそが最強の記憶ツールとして機能しているというのは「ウォーターワールド」の域を出ていないし、修道院がやっていたような偽書が作られる過程を描いているとも言えてしまうだけにスッキリはしない。でも一応、終盤のゲストには少し驚くように出来ていたりもする。


 一観客として「サバイバル・オブ・ザ・デッド」へ。まずは導入から「ダイアリー・オブ・ザ・デッド」の場面を挿入し、本作が「ダイアリー〜」の正式な続編と教えてくれる。そして今回の主人公(前作の略奪州兵)が動画サイト経由でその暴挙を晒されただけでなく、同様の手段で告知する生存者たちがいると、今度は若者が持っているiPhoneを通して描写するのだから、監督ならではの若者寄り視点とテクノロジーへの貪欲さは健在だ。横溝正史的な因習の島に渡った州兵たちの前で展開されるのは、死者たちを「殲滅」or「共存」で対立する、島を二分する家の争いである。「ザ・ウォーカー」(&「ザ・ロード」)もそうだが、アメリカは文明の荒廃を進めると、暴力が支配する、開拓時代と同じ価値観に還る。つまりわざわざ島に舞台を移した理由は西部劇へのアプローチおよび、リメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」へのロメロなりの答えでもある。だが対立する主張は「死霊のえじき」の医者と軍人と同じなので、当初は“バブ”を出したかったと言うのも頷けてしまう。そのせいか大掛かりな内蔵引きずり出し描写も復活し、死者への対処も頭部破壊以外のバラエティが大幅増量。生者・死者、どっちの殺し合いか分からない壮絶なカオスの中で、死者たちも驚くべき進化を遂げ、感染方法にも新たな解釈が加わる。かと言ってシリアス一辺倒でもなく、双子を利用した実験的描写や、「ランド・オブ・ザ・デッド」における、死者とケロイド男の混同に匹敵する小粋な仕掛けも用意されているので、こっちの表情も緩みっ放し。また、今回から(もうマイノリティではない)黒人に代わって、州兵のひとりに同性愛者キャラも登場するので、謎の大金の使い道同様、続編となる次回作での本格始動を待ちたい。 


 一観客として「ケンタとジュンとカヨちゃんの国」へ。松田翔太は優作の息子にもかかわらず、その出演作がマンガの実写かとかばかりで、全く出演作に触れる必然性なく今まで来た。だが親父同様、不良性感度の高い役を演じさせたら、これが抜群に良かったのだ。兄の龍平はどっちかというと「野獣死すべし」以降の“後期優作”を想起させるのに対し、翔太は「竜馬暗殺」周辺の“初期優作”を想起させる存在感。事実、物語も「あばよダチ公」の前半のような、閉塞感からの脱出を志向する(ボリューム的にも)重い青春劇となっているから余計だ。邦画は貧弱な原作の実写化やテレビ番組をそのまま劇場で流すだけのものが多いので、特に劇場に足を運ばないが、本作鑑賞の理由は予告から70年代日本の青春映画の匂いを感じたからだ。とはいえ意地の悪い見方をすれば、監督は麿赤兒の息子、共演は奥田瑛二の娘という、“七光り集積映画”が70年代の空気を再現したようにも見えるのだが、そこは純粋生え抜きの出演者、高良健吾(水谷豊風の佇まい)や新井浩文が全体のキメを整えている。しかし、そうした色眼鏡抜きにも安藤サクラの徹底したバカ演技は素晴らしく、この徹底があるからこそ、終盤吐露される愛情表現に無私を感じられる点は、「愛のむきだし」以降のキャリアの流れとして、素直に賞賛したい。ただ、それだけに思わせぶりなままに幕を引いてしまうこと自体が、70年代の模倣としての苦さを引きずっており、現代ならではの回答が結実していないのは惜しかった。


 一観客として「東京国際レズビアン&ゲイ映画祭 2010」より、「日本作品集: マリコとレイチェル」へ。
■「La forêt de Rachel D'Amour」レイチェル・ダムール作品/2010/13min/ドラッグクイーンをされている、“レイチェルさん”という方のイメージビデオのようなものか。短すぎてそれ以上言及できないが、上映後のトークにて、作中着用のドレスで登場、板切れを組み合わせてドレス化した細部のディテールを見ることはできた。恐らくロケ的には樹海ではないかと思っていたが、解説によって図星と判明、その推定に伴って懸念された、ドレスが半裸であることからの虫対策についても時期が冬だったからと氷解したが、逆に寒そうな衣装であることも再確認。それにしても霊現象の類には無関心な俺だが、人形の手足を地面に突き刺した演出と相まって、それらのカットごとに入り込む禍々しさは俺が勝手に感じたのかは不明。

■「おばけのマリコローズ」小林でび作品/2009/66min/そう、俺のかつての戦友、小木曽睦美さん主演作のために鑑賞したのだ。だが決して義理ではなく、舞台女優以外にどういう作品に出演したか、告知もあり興味が湧いていたのである。そして結果は、恐ろしいことに、「ブルーノ」以来の爆笑の連続というリンクを見せる快作だった。彼女が演じるは、その性癖を伏せ、生活感ありつつもキュートな等身大レズビアンなので、潜在的な現実味があり、その複雑な片思いの悶々が幽霊との出会いで変わっていく。監督が男だからか、男が男に欲情するポイントは言わずもがなに省略されており、女が女に欲情するポイントが丁寧に描かれているところがヘテロには新鮮。決して予算のある作品ではないので、劇中刃物で自傷する場面の多用は、リアルに撮影時の安全を心配してしまう迫真性があるが、心が誰かを好きになる能力を持っているのは無条件に素晴らしいと、ない俺は泣き笑いのうちに思い知らされたよ。試みの地平線 伝説復活編 (講談社文庫)リベラ・メ [DVD]目には目、歯には歯 [DVD]セブン [DVD]フォーリング・ダウン [DVD]セブンデイズ コレクターズ・エディション [DVD]ザ・ロード (ハヤカワepi文庫)座頭市物語 [DVD]パニッシャー : ウォー・ゾーン [DVD]子連れ狼 子を貸し腕貸しつかまつる [DVD]ウォーターワールド [DVD]サバイバル・オブ・ザ・デッド [DVD]ダイアリー・オブ・ザ・デッド [DVD]獄門島 (角川文庫)ドーン・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット [DVD]スマイルBEST 死霊のえじき 完全版 [DVD]ランド・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット [DVD]野獣死すべし [DVD]竜馬暗殺 [DVD]あばよダチ公 [DVD]愛のむきだし [DVD]bruno 完全ノーカット豪華版 [DVD]