解りやすさに、分かれさせる試み。

 今後しばらくは映画のこと(か、そんなものがあるならば印象的な体験)だけを移植しようかと。なぜなら、長いセンテンスで綴られた事柄が転写できるほどの熱量を持って結実するのは、そう頻繁なことではない(誰かが読む、読まない以前に、自分の納得できる思考としての意味を成していない)し、そうなる以前の短いものなら、twitter等に移植してしまえばいいので。そして観た時に記録したものに、内容だけではなく、その時にしか思い得なかった感情や思考も、恐らく込められているから、自分の解りやすさのためにも、ちょっと続けてみるつもりではある。


 20世紀フォックスさんのご招待で「特攻野郎Aチーム THE MOVIE」試写へ。能天気なテーマ曲に合わせて帰ってきた野郎どもは、かなりバージョンアップしていた。何しろ先日までゼウスだったリーアム・ニーソンが“ハンニバル”なのである。しかも完全に陽性キャラへシフトしたこの振れ幅!頼もしいことこの上ない。“フェイスマン”に扮するブラッドリー・クーパーは、「イエスマン」で爽やかかつ締まりのない笑顔に少々心配したが、アクション向けの肉体作りに始まり、暴力指数も思いの外高く、好感度急上昇である。また“モンキー”ことマードックに扮するのが「第9地区」のシャルト・コプリーなのだが、外見の大幅なチェンジに加え、目に湛えた狂気もしっかり再現しているのでかなり健闘。肝心の“コング”ことB.A.はコスプレなのだが、ミスターTが強烈過ぎたので仕方ない。設定としてもベトナムではなく、現代的にイラク情勢へ置き換えた(“ブラックフォレスト社”に笑え!)ことで、適度な重々しさとリアリズムが加わっているが、それでいてアクションとしても痛快さが全く損なわれていないのが、ジョー・カーナハン監督の離れ業である。おそらく自ら離れた「ミッション・インポッシブル」のようにはしたくなかっただろうし、その想いはあるべき“ドラマの映画版”として結実している。さらに“ナイトオウル2世”こと、パトリック・ウィルソンによってあの“リンチ”さえも復活。しかし、今回はあくまでスタートラインなので、本気で次はエンジェルも出る続編を待ちたいし、案の定エンドロール後も気が抜けないのだった。


 一観客として「ヒーローショー」へ。タイトルにも芸人にも騙されて欲しい。なぜなら、観るほどに物語の構造が、“東大阪集団暴行殺人事件”に基づいた実録風殺人映画でしかないと思い知らされるからで、イコール陰惨な暴力映画体験を約束してくれるからである。事件はある程度調べれば分かるので省くが、現実もその映画化も、たかが女の取り合いを発端に、想像力の足りない奴らのマチズモ(虚勢)がエスカレートしていく様が不快であり、故にインパクトがある。井筒和幸作品であることから、近作からの、ガサツでも愛がある方向のミスリードを裏切ることが監督の狙いなら大成功で、その非情な展開には、自らも牽引してきた青少年の暴力路線が、近年表面上だけなぞられ、骨抜きにされていることへの瞬発的な怒りが見える。だから監督としてはある程度怒りが発散できれば、後は虚実混じろうが事件へのこだわりはないようで、(生き埋めのため)死の過程を省いた割には、犠牲者1名というソフトな改変を試みているが、その当事者の安い価値観の再現度は、“明日のジョー”こと升毅さんの友情出演が清涼剤に思えるほど。つまりこの不快感こそが“ビデオ安売王”幻の作品、「女子高生コンクリート詰め殺人事件」に行き着く松村克弥作品にも連なる、純粋暴力映画の証。暗転後流れるピンク・レディーの「S・O・S」は、「男である限り、暴力の陥穽からは逃げられへんで!」的な監督からの恫喝にも聴こえ、想像力があっても(緊急避難に類する)咄嗟の暴力に訴えないと男は断言できないからこそ、誰もが戦慄を禁じえないはずだ。 


 一観客として「アイアンマン2」へ。前作のエンドロール後の展開で、もう完全に“S.H.I.E.L.D.”が一般の観客にも周知のものになったために、サミュエル・L・ジャクソンの出番がかなり大幅増量。テレンス・ハワードに代わって何食わぬ顔して登場のドン・チードルは、大活躍もあって「仁義なき戦い」で千葉真一宍戸錠というスライドを見せた“大友勝利”のように、違和感はあるがどっちもアリな結果に。最終的に乗り込むマシンの顔などのデザインが見えづらいのは難点でも、ミッキー・ロークにはやはり華があるし、「3」への伏線と勘違いする奴が多そうなエンドロール後の遊びも健在(本編で登場する“父親の遺品”同様、再来年の「The Avengers」と、それに連なる2作品の別タイトルへの伏線)。しかし“緑色のバカ”との関連性は、まだ一方的な言及で止まっているので、「3」で進展を期待したい。また、前作の敵だったジェフ・ブリッジスは、不思議なことに今回の敵ロークの「レスラー」と話が凄く似ている「クレイジー・ハート」に出てるわけで、「『3』には、系統的にまたもオッサン俳優が敵に起用される可能性が高い!」と勝手に思っているのは、オッサンでもヒーローや悪役になれる夢をくれるシリーズを続けて欲しいという、俺の願望のせい。ちなみに周囲がトールな分、“S.H.I.E.L.D.”側の役回りとして配置されたスカーレット・ヨハンソンの短小加減が強調されているが、代わりにグウィネス・パルトロウが引き立てられており、(予告だけのシーンもあったが)意外にも初の欲情をしてしまう効果を上げていた。 


 一観客として「告白」へ。中島哲也監督は、自身のイメージから脱却したかったのだろうが、従来の“足し算”を“引き算”にして画面構成したことも同時に分かるので、意外性はなく納得の行く“らしい映像”である。中学校が舞台だからポスターが「バトル・ロワイアル」に似るのか、ネタとして似せたのかは、あらすじを知れば即座に原作自体が「そして粛清の扉を」の解体・再構築と分かる。つまり「バトル〜」のコピーのコピーなのだが、それだって所詮は「死のロングウォーク」のパクりな訳で、原像が霞むほどのコピーである。客層がネタ元とは被らないと踏んだのか、単に知らないのか、あるいは“松たか子”という大根を意図的に起用して隠蔽したつもりなのか、少なくともその“剽窃の連鎖”を知る観客側の“心の準備”を超える展開は映画には皆無である。復讐の一部も、かつて「力王」で「エイズ患者のカップルが“自分の血液入りの注射器”を主人公に刺そうとする」描写があり、単行本では“毒薬入りの注射器”へと自主規制されていたが、特に斬新とは言えない。まして、基本的に復讐する側もされる側も他人をバカにしている嫌な奴なので、復讐のカタルシスはおろか、反対に復讐の無常観にも至ることはできない。監督はこうした錯綜した素材よりも、従来のように画面は毒々しくても単純な物語が向いていると自ら晒してしまった。スローや洋楽サントラの多用による、殺菌された映像は、一見美しいかも知れないが、バカにされている奴らの痛々しささえも感じられず、かといって作り手の邪悪さも見えないのだ。


 一観客として「アウトレイジ」へ。コピーの正体は、実は「全員(頭が)悪(い)人」なんだと観てすぐ分かる。いわゆる“たけし映画”顔がビートたけし以外に全く見られないのは新鮮なのに、紛れもない“たけし映画”なのが新境地。ただ、たけしは基本的に、「HANA-BI」で逸見の息子、「アキレスと亀」で川谷拓三の息子という感じに、俳優起用に論功行賞を混ぜたがるので、単に柄本明の息子は浮いている。また、顔ぶれの意外性の割には、髪型やヒゲ等のありふれたヤクザ像も多く、分かりやすさへの計算と挑戦が混淆している。実際たけしも周囲も非常に饒舌かつ行動も平明で、整理された裏切り合いなのだ。注目の暴力描写も、安い銃の描写以外は斬新だがほぼ省略して、必ず前振りがある安心設計。こうした配慮に加え、今回、初の“やくざ映画”にシフトして辿り着いたのは、「その男、凶暴につき」に酷似した結末が示すように、たけしなりの二周目宣言である。しかも「キッズ・リターン」同様、学校まで寄り道して吐露されるのは、弱いものいじめだけで成り立ち、疲れと諦念に支配された、処女作と異なるたけしの“世界への感想”だった。その観点で加瀬亮は、転生して狡猾さを増した「3-4x10月」のベンガルであり、大友組の運転手・新田純一も、「TAKESHIS'」における石橋保的な再生品だったりと、過去のエッセンスからの進化を見出す作業も楽しい。なお上映時は中座する老人が多かったが、戻っても続きが理解できないのは間違いなく、展開の速さも作品中随一。さらには期待通り、石井隆作品を髣髴とさせる、“俺らの好きな”椎名桔平がやっぱり復活しており、女性キャラにも大サプライズあり。でも、屍姦のようなセックスを淡々と眺めるカメラが、一番“たけし映画”っぽくて安心もするのだった。特攻野郎Aチーム シーズン 1 DVD-SET 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】特攻野郎Aチーム シーズン 2 DVD-SET 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】特攻野郎Aチーム シーズン 3 DVD-SET 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】特攻野郎Aチーム シーズン 4 DVD-SET 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】特攻野郎Aチーム シーズン 5 DVD-SET 【ユニバーサルTVシリーズ スペシャル・プライス】タイタンの戦い Blu-ray & DVDセット(初回限定生産)イエスマン “YES”は人生のパスワード 特別版 [DVD]District 9 / [DVD] [Import]M:i:III [DVD]ウォッチメン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]オールナイトロング [VHS]オールナイトロング2〈成人指定版〉 [VHS]オールナイトロングR [DVD]ALL NIGHT LONG-誰でもよかった- [DVD]ガキ帝国 [DVD]アイアンマン2 ブルーレイ&DVDセット [Blu-ray]仁義なき戦い 広島死闘篇 [DVD]仁義なき戦い 完結篇 [DVD]アイアンマン(1枚組) [DVD]インクレディブル・ハルク(1枚組) [DVD]レスラー スペシャル・エディション [DVD]クレイジー・ハート [DVD]キャプテンアメリカ ファインアートスタチュー ニューキャプテンアメリカ (ノンスケールコールドキャストスタチュー)Marvel Bowen Mini Bust: Thor (Modern)バトル・ロワイアル [DVD]バトル・ロワイアルそして粛清の扉を (新潮文庫)バックマン・ブックス〈4〉死のロングウォーク (扶桑社ミステリー)力王 全12巻完結 [マーケットプレイス コミックセット]アウトレイジ スペシャルエディション(DVD+ブルーレイ+特典DVD)HANA-BI [DVD]アキレスと亀 [DVD]その男、凶暴につき [DVD]キッズ・リターン [DVD]3-4x10月 [DVD]TAKESHIS' [DVD]ヌードの夜 ニューマスター・デラックス版 [DVD]夜がまた来る ニューマスター・デラックス版 [DVD]GONIN [DVD]オーディション [DVD]東京残酷警察 初回限定“GORE EDITION” [DVD]