自然≦宇宙人≦バカ＜戦う美女。

今週のお題「あこがれのヒーロー、ヒロイン」そりゃあ、トラヴィス・ビックルさんに決まってますよ！

　一観客として「世界侵略：ロサンゼルス決戦」へ。“「プライベート・ライアン」シンドローム”をSFに落とし込んだ産物、つまり「宇宙戦争」との融合で、エイリアンの目的もディテールも迎撃する側の目線で情報を極力抑えめにしてあることから、訴訟にも発展した「スカイライン」との共通点も確かに多々見いだせる。あちらは結局大風呂敷に見せかけて閉鎖空間のB級作品であったのが、こちらはロス全域がバトルフィールドとなっていることでA級バジェット作品の面目躍如な大破壊＆カタストロフィが堪能できる。しかし、せっかく反撃のキーマンとして海兵隊に合流してくれる、“サントス空軍2等曹長”ことミシェル・ロドリゲスの露出不足が大いに不満。保護した一般人が犠牲になったりしているのはもう「宇宙戦争」で散々見せられているので、彼女がひたすら戦うところを観ることだけが観客の望みなんだから。脱ぐ代わりに魅せる暴力性が美しい稀有の女優なのだから。ちなみに断片的に見せられてはいても、侵略者たちのガジェットはそれほど魅力的ではなかったから、オチはあのままでいいし、もう続編は期待しないよ。

　一観客として「サンクタム」へ。　キャメロンは製作に過ぎないけど、特にこれといったSF的設定もガジェットも排し、自然の中での人間ドラマ（特に父と子の確執と和解。しかもなぜかどっちもキャメロン似）に徹した、毛色の珍しい3D作品。まぁ、実際にモデルとなった探検家がいるんだから、偉業を称える意図なら下手なアレンジは不要だけどな。しかし、これまで散々3D映画を鑑賞して、違法ダウンロードや何かで、ちょっと悪知恵を働かせて、劇場に足を運ばずに新作を盗み観る奴ばかりで、劇場通いがごく少数の趣味人とガキどものセックスの口実にしか使われなくなったこのご時世、わざわざ3D鑑賞の必然性感じたのは、俺も正直「アバター」と「ジャッカス3D」だけだ。だからこの作品も単なる秘境を舞台にしているので、特段その上映形態としては3Dならではの迫力というのは、そんなシーンもないし感じていない。ただ俺は閉所恐怖症なので、「ディセント」みたいな映画は別にモンスターが出てこなくても結構辛いものがあるのだ。しかもこっちは水中と来た。だが、俺自身がなぜそういった極限状況を想像すると恐ろしくなるかは実によく分かる作品で、自然の秘境の場合、人間を殺す悪魔は外側にあるのではなく、己の心から発現する恐怖心、焦り、判断の迷いなどにあることが濃密に描かれている。そういう意味では「地獄の黙示録」なんかよりもシリアスに、「127時間」ほどポップにも寄らず、真摯に「闇の奥」を活写した作品であった。強くて美しい女が暴力だけを最後に生き残る作品が観たかったんだけどねえ。

　一観客として「ワイルド・スピード MEGA MAX」へ。（世界レベルでの）シネコン通いヤンキー向けバカ映画の最終形態。確かに冒頭の強奪シーンは燃える（ちょっと「トリプルX」に被るアクション構成）。だが従来のシリーズからキャラ補強に引っ張って来すぎて、それぞれの見せ場と友情確認シーン、さらには新キャラのロック様と、見せ場をそれなりに時間配分し展開しているので、各シリーズにおける観客側のキャラの思い入れの温度差がもろに出る（つまり平べったくいえば長い）のだ。個人的にはディーゼルとロック様の重量級バトルは投げ技中心で、打撃があまりないのが不満だったが、一般のヤンキー系観客にはほぼどうでもいいであろう今回の強敵、ホアキン・ド・アルメイダの初登場シーンがまさに「デスペラード」を意識しまくりのライトカラーのスーツで決めていたところには鳥肌が立った。しかし、今回の作品でさえ、「もういいよ…」と思っていたところに唐突に現れる次回作への伏線は、まだこの高カロリーメニューがしばらく給食で続くことを学校で知らされたような残念感があり、反面一部のメンバーの逃亡先と、そこに合流するであろう世界最高レベルの暴力系美人女優のほのかな香りが、まだ俺の食欲を本能レベルで刺激され、再来年までおあずけを食わされた気分になったのだ。このダラダラ具合で、本シリーズは「ハートブルー」のパチモンではないということを主張しようとしているらしい。