虚無の夏、総括リンチ!

 今日はワーナーさんにご招待いただいての試写は『七剣(「セブンソード」)』。タイトル聞いて真っ先に思い出したのが、昔、殺害塩化ビニールって言うバカバンドのレーベルで、日本一のバカバンド決定戦みたいなバンドオーディションがあって、そこで優勝したバンドのボーカルの名前。それが“SHIMURA SWORD”だったんで、長らく爆笑させてもらったが、そんなのはどうでも良いとして、映画はツイ・ハーク最新の武侠超大作だ。
 宣伝としては「HERO」、「LOVERS」に続く・・・って持って行き方したいようなんだが、これが全く逆。CG・ワイヤーあまり使わず、にもかかわらず正統派の武侠アクションとして健闘してるんだな。七本の剣それぞれにギミックがあって、それが無茶苦茶格好いい。敵も空とぶギロチン風のエモノ持っている奴もいるし。長い(二時間半以上!)ので正直ダレ場もあるが、総じて力作。
 監督が力みすぎているって言う意味では、やっぱ「ブレード/刀」に近い。でも韓国の女優キム・ソヨンが本気で美しい。これだけでもお釣りが来る。監督の意図としては、クライマックスの大殺陣含め、実質ドニー・イェン主演なんだろうな。
 でも個人的には復讐を忘れるために山に篭もった設定のレオン・ライの静謐さが胸に迫った。単に大根?彼のキャリアからしてそんなことはないだろうが、設定としても、俺のこの地獄を生き抜く何らかの指針になるだろうと思い、原作は読んでみようと思う。

 結局、夏は何にもなく死んでいくようだ。残った記憶は、ジム・トンプスン「おれの中の殺し屋」、「鬼警部アイアンサイド」を読んだ記憶くらいか。前者は、新訳による「内なる殺人者」の物足りなかった身近な異常性を、ヒリヒリ感じさせてくれた。俺は「内なる〜」は8年前に読んでいるんだが、一人称のリアリティや、トンプスンでしつこく多用される読者への語りかけは、なぜか三川基好氏の翻訳がしっくりくるね。どうせロクな結末にならねぇのは分かっていても、読まされちまうんだよ。後者は、まぁトンプスン・ワークスとしてマニア向け。ドラマ好きじゃないとどうでも良い箇所も結構ある。
 他には、谷中の全生庵で、幽霊画の開帳を見ることが出来たのは、長年の憧れだったから良かったね。虚ろな魂には、だからといってどうということもないんだが。

 蝉のように泣くことは出来なかった。忌まわしい記憶を上書きすることも出来なかった。明日は月島散策、隠された歴史を歩くことで暴いてみようと思う。そして蝉の死ぬ季節が訪れ、俺はそれを認めずに、その次の日の修羅へとルーチンワークしていくだけさ。おれだけじゃない。これから心を凍えさせていく覚悟もないままに、凍っていく。おれたちみんな。なんてな。全日本殺害最凶ゲテモノ王座決定リーグ戦ブレード/刀 [DVD]おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)鬼警部アイアンサイド  (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)