映画修羅道・補講+α

 「愛についてのキンゼイ・レポート」観に行って来たぜ。結論から言うと・・・傑作。愛について答えが出ない故に、性をそのデータの集積で解明しようとしたキンゼイ博士の真摯な姿勢に脱帽。その研究は時に熱が入りすぎ、単なる淫蕩か乱交にしか見えない行いもしばしば。しかしそれがグロテスク一歩手前で留まっているのは、作り手があくまで軽妙な語り口で進める事に拘っているからだろう。体験したことがない同性愛を、助手と実践する滑稽さ、家族で食事中に学術的ではあるがあけすけな下ネタトーク連発で、息子から反感買いまくりの博士。しかしそんな博士ですら愛の本質、それについての結論は出すことが出来ない。そして、そこまで真摯に性に向き合わず、享楽的に消費するか、目を反らすことでやり過ごしている我々には、愛に基づく悲劇が否応なしに降り注いでいく。または、愛する真実の喜びも知らずに、大半のものが朽ち果てていくのだ。
 そして二回目の「ランド・オブ・ザ・デッド」。痛感したのはアーシア・アルジェントの魅力。これに尽きるね。グロ描写少な目なので、早くディレクターズ・カットが観たいぜ。

 最近読んだのは、チャールズ・ブコウスキー「詩人と女たち」。相変わらずのダラダラとした生活、しかしその所々に目を見張るような本質をついた言葉がちりばめられているのがブコウスキーのいいところ。今回はそのタブー無視の生活が、セックスによりバイアスが掛かった方向で赤裸々に語られていく。こんなの誰だって書けるって言う奴は良くいる。しかし、ここまで自らの卑しさに向き合ってそれを公開できる勇気のある奴がいるもんだろうか。その点においてもブコウスキーの価値はあるのだ。図らずも、もうしばらくして公開の「ブコウスキー:オールド・パンク」への予習となってしまった一冊。愛についてのキンゼイ・レポート (竹書房文庫)詩人と女たち (河出文庫)