夢の中で逮捕された渋谷に行ってみれば。

 夢に導かれて、夢に出てきた場所に足を運んでみる。そうして俺は生きてきた。そうしてもたらされた、ただ一つの奇跡があったから。あまりに劇的な奇跡を経験してしまうと。それは強烈な麻薬を一度打ち込まれたかのような悲劇だ。その感動の虜となってしまうのだ。ただ次の奇跡が舞い降りて来るのを求めて徘徊するだけのゾンビとなってしまうのだ。
 ゾンビ、幽霊、どっちだっていいぜ。その姿は奇跡が起きない限り、透明な存在。この姿を見ることができる誰かが(そんな存在があるならばだが)彼を見つけない限り、その実体は得られないのさ。
 そう頑なに信じてきた俺だが、そう信じてきたからこそ、ふと自分の身体が地面に影を投げかけているのを見つけたりなんかすると、実体がある事の揺るぎない証拠を見つけた気がして、妙に感極まってしまう。「おまえは存在してないワケじゃないぞ」って誰かに言われているみたいな気がしてくる。
 ま、もちろんそんな気がするだけで、事実、誰かから見えるようになる訳ではないんだけど。