萎えた人間性で映画を観ると、こう見える。

 先日は、20世紀FOXさんのご招待で、「ウォーク・ザ・ライン」試写へ。
 俺は題材となっているジョニー・キャッシュをせいぜいリメイク版「ドーン・オブ・ザ・デッド」のオープニング曲で使われているオールディーズの歌手、という程度の認識しかないが、オールディーズって言うのは今の認識だし、そう言うよりは同時期のエルヴィスやジェリー・リー・ルイスの様なロック(断定するには微妙だが)よりも本国ではカントリー歌手としての立ち位置が顕著であることがよく分かる作品だった。
 長年言い寄って、想いを遂げる相手の女、リース・ウィザースプーン演じる女性歌手は、世代が古すぎてよく知らないが、その思いを遂げる過程を丹念に描いているのが他のミュージシャン系の伝記映画とは一線を画している気がした。しかしそれだけでなく、淡泊ながらドラッグ描写もあるし、ツボは押さえている気がする。ただ、ミュ−ジシャン伝記映画として観客を高揚させるには、その変人ぶりや、反逆者としての姿を徹底して描くなら良かったような気もする。「“アイデンティティー”」の監督が何故彼を題材として撮りたかったのかは不明だが、彼が反逆しようとしてあがいていたことはよく分かったので、アウトロー(希求)映画としては及第だろう。

 そして単純に観客として「東京ゾンビ」へ。話題の哀川翔のハゲは違和感なし。浅野忠信も、持ち味のナチュラルな演技が世界観とはまり、バカ演技へ昇華している。柔術描写も地味故にリアルだし、ヒロイン・奥田恵梨香も性格悪くてエロい。性格悪い描写が多いせいか、俺に若干不細工に見えたがそれでも欲情した。運命、なんて人間の一生を翻弄するだけのクソみたいなものを追い求めるよりも、男女の関係なんて概してこんなものかも知れないな。自分が祝福されて生まれてきた、だとか、愛の結果生まれてきたなんて美化する方が間違っている。俺らはみんなドブに浮かぶアブクよ、誰も期待しちゃいないし、世界にも愛されちゃいない。お前自身がそれを自覚しろ!と促される思いだ。でも俺だけじゃねぇ、テメエらも自覚しろ!
 まぁ、きっと本作の監督、佐藤佐吉脚本による、「極道恐怖大劇場・牛頭」が来た奴はハマる。それは絶対約束する。
 加えて、ほぼ時期的には同時期に立ち上がった企画故に、パクることは不可能にもかかわらず、ゾンビが蔓延した終末世界、その人間の対応振りが、「ランド・オブ・ザ・デッド」の世界観と一致していた点に監督の慧眼を感じた。
 俺がゾンビ映画が好きなのは、ゾンビが好きなんじゃなくて、徹底的に終わり果てた世界のヴィジョンをリアルに見せられることを期待しているからだ。なぜかって、それはもちろん、俺が世界の終末、人類の終焉を見たいからに他ならない。別にいつ死んでも構わぬ投げやりな命だが、命に執着するのは、親兄弟を悲しませたくないのではない。俺がただ単に全人類が死滅する地獄絵図、←人間が地球の癌なら、これがあるべき姿だろう?を見届けて、その時に俺も一緒に死ねばいいと思っているだけだ。そういう意味では本作は紛れもないゾンビ映画だし、過去の邦画へのオマージュやウンコネタも充実。絶望バンザイ!損はしないぜ、必見だ!
ドーン・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット プレミアム・エディション [DVD]アイデンティティー コレクターズ・エディション [DVD]東京ゾンビ (竹書房文庫)極道恐怖大劇場 牛頭 [DVD]