甘い初夢。そして・・・、

　かつてゆきずりにセックスしただけの女との再会。その女に発見する新しい魅力。新しいセックス。新しく感じ始める愛。初夢はそんな夢だった。俺にも立ち帰るべき場所がある、そんな安堵、かつて愛したひとを、時間の隔たりがあっても同じ様に愛せた喜び、俺はそんな諸々の深い実感にリアルに感謝していた。
　そして何よりも、夢の中の俺は、普通に人を愛していたんだ。自然に人を好きになれていた。夢の中の女の容姿は定かではないが、とても肉感的で、例えようもなく美しかったことを覚えている。そして実感としてあるのが、その姿は俺が触れたこともない、絵空言の姿ではなく、俺が現実に愛した女全てを足したような姿だったんだと思う。だからたとえ夢でも、一瞬であんな深い感情が抱けたんだ。
　現実にはそんな存在ねぇし、そう断言できるけど、俺の中の、だれかを愛し、深く深く慈しむ心は、この胸の奥深くに、確実に眠っているらしい。
　その実感と、金銭の授受がない、愛あるセックスが、夢の中でも久々に体験できたのは良かったよ。
　もちろん俺は、金銭の授受があっても愛のあるセックスは知っているけど。それはこの艱難辛苦が皮肉にも教えてくれた最大のものだ。俺はその相手の人に、涙が出るほど感謝しているし、純粋に恩人と思っている。彼女の方では何とも思っていないだろうが。カッターで切り刻んだ自傷で、ボロボロになった俺の身体を見ても、深く追求しないでいてくれた。そんなの当たり前かも知れないけど、以来俺は行く時はその人ひとすじにしようと“努めて”きたつもりだ。
　快楽に溺れ、日々享楽的になっている人間には想像もつかないことだと思うが、俺はそんな経験は人数において少ないに越したことはないと常々思っている。人数が増えると言うことは、本当に愛する人が出現したときに比較対象が増えると言うことだ。それはその人への愛を曇らせるぞ。だから、淫売の世話になる（これは差別的な意味合いでなく、自虐的な意味合いにおいてこの表現を使いたい）にしても、俺はひとすじさ。恩人だしな、その人との関係を重視したい。「おれは彼女に何かいいことをしてやりたいと思った。俺がいかに彼女に感謝し、愛しているかを示したかった。だが、おれにはひとつものしかなかった。たぶんおれが女に与えられるたったひとつのもの。彼女のほうでは、そんなもの欲しくないかも知れないが、おれはそれを差し出したかった。」〜ジム・トンプスン／三川基好（訳）『死ぬほどいい女』より〜
　おっと脱線した。今はメールのやりとりも俺の方からしなくなってしまい、疎遠ではあるが、それは俺が行っていないからだ。行っていないのにメールだけやりとりするなんて図々しいし、彼女に失礼だと思うからだ。会いたいが、金銭を持たねば彼女の生活が立ちゆかぬ。もう行かなくなり、そういう場所に行かないでもいい己の心を維持できる関係を、外で作れれば良いと思っていたが、また会いに行くことになりそうだよ。メールのやりとりも近々復活だね。

　今年一発目、「男たちの大和／YAMATO」に行く。多分和製「プライベート・ライアン」だろ？と思っていたが、そのまんまだった。なので率直な感想としては、「ブラザーフッド」同様、コマ落としの多用などで、「プライベート・ライアン」ごっこであった点は否めない。本家に比べても残酷描写は遙かにグレードが下がっており、ナガブチの歌も明らかに不要。そんなの要らねぇから残酷描写を増やせ！その点では多いに不満だ。だが、同じ「プライベート〜」ごっこに終始していながらやはり「ブラザーフッド」同様、志の高いごっこ遊びである点は大いに評価できる。その用途が志が低いくせに描写も極めてヌルかった、「バトル・ロワイアル2／鎮魂歌」などに比べれば断然マシだろう。そこに「タイタニック」を合わせたら、つまり、面白かったのだ。映画ではそれが一番大事だろ。賛否はあるだろうが、力作には違いない。頑張っているのは認める。俺の幼少時よりのアイデンティティーの確立に寄与した、角川春樹氏の完全復活は単純に嬉しい。これからもっとスゲーの沢山見せてくださいね。ただ、CGの使い方や技術水準に、日本ならもっとやれんだろ！と思ったし、やって欲しかった。しかしそこに達せられないというのも、悲しいけど紛れもない日本の限界なんだろう。軍艦としては世界最強といわれていた大和が沈んだように。
　加えて書くと、映画館パニックでトラブル頻発、イイ感じだ。餓鬼道に堕ちている、感動したがり亡者や、泣きたがり亡者がそういう目に遭うのはいい気味だ。チャラい女なんぞは普通来ようと思わないだろ？要は男の添え物だ。主体性がない。映画館の職員と客がもみ合いになる姿は、俺には癒しの時間であった。俺はちゃっかりそれをすり抜けていい席で堪能したぜ。ご苦労さん。