「今、ライオンにおそわれようとしているときに、もっと自分が強くなるまでまってくれといったら、ライオンはまってくれるだろうか!?〜中略〜大事なのは今だ!今、戦うことが大事なんだ!今、戦わない人間があとで戦うわけがない!!戦わないためのいいわけなんて、無限に考えつけるものなんだ!!」
そして立ち向かえば、何らかの罪に問われるのがこの世の中だ。法は「従順に殺されろ」と言っている。
だがこうした現実に対する備えをしなくていいのは、過去において全く罪を犯さず、誰も傷つけていない、と断言できる奴だけだ。そんな奴がいるとすればの話だが、それだって、いつライオンが襲って来ないなんて保証は誰にもできない。消えないんだ。できるのは、そうした要素を極力排除することだけ。それは、希薄な人間関係に生きることだ。しかし、それはお察しの通り、何も生まないし、あらゆる未来を拒絶することになる。現在の俺のように。
だからこれからも、この考察は続くんだ。
あと本は、ジャック・オコネル著「闇に刻まれた言葉」読了。いや疲れた。狂人の戯言を延々聴かされているような、そんな疲労感。かと言えば、暗黒に引きずり込まれるような感覚はない。架空の町と、架空の歴史を背景にしているからか。こんなんじゃ、ほぼファンタジーだからな。結局、言い回しがくどくどしているせいで、妙に緊張感を殺がれているんだよ。文学的過ぎようとしているノワールなのだ。文学的過ぎると、情念は伝わらない。だから俺は本書をノワールとは認めない。「ジェイムズ・エルロイ絶賛!」という触れ込みに負けて読んではみたが、これを絶賛するということは、エルロイもその地平に行ってしまったのか…。なんか今後のエルロイが不安でもある。今までのエルロイは、正義の中で悪を行わなければならない葛藤なんかが良く出ていたが、最近のは悪の中で悪を行っている悪党が、歴史とシステムの悪意に飲み込まれていく、といったものが多くなっているので。