膿のように絞ったアフォリズムをいくつか。

 形になるはずのものが、まだ形にはならない。だから俺の独行に生まれたクソのような思考で、お茶を濁しておく。とりあえずは、ここに焼き付けておくことで、クソでも、無意味じゃなくなくなるからな。全部、バラバラ。なんの繋がりもない。思考の断片。でも事実。


 空無。どこに行ったって同じだと俺の中の声が言う。新緑の香りがなぜこんなに胸を蝕むのか考えて、ふと思いあたる。これは俺の初めての異物への想い、初めての絶対的な他者への気持ちを象徴する香りなんだと。初恋というにはあまりにも陳腐な気がするが、その言葉が象徴する全ての感情が、壁のように押し寄せてきて、いつも歩く孤独の中にも、息が詰まりそうになる。そして、俺はあの頃と同様、何一つ変わっていない事に気付くんだ。


 俺が捨てたのはおれじゃない。俺が捨てたのは人間だ。おれを捨てずに守るため、俺は人間を捨てたんだ。


 人生は脱獄。そしてその連続。おまえらも早くそれに気づけよ。


 おれの頭の中の声を消してくれ。おれの本来の重さ、そこに向かおうとしているのか、それしか知らないが故の刷り込みに負けているのか。涙さえも流れない、凍って気化したあんなに辛い思いをしたのに。それでもとにかく、狂人の強迫観念のように、禁じているはずのその名前を呼ぶのが止まらない。おれにできるのは、ひとりの時に、目一杯「うるせえ!」って叫ぶことか、独り言なんてキチガイの初期症状を打ち消すために、無理やり人混みに身を投げうって、散歩しているように見せかけて、その狂気の誘いを押し殺すだけ。


 女の美しさに負けても、その美しさは、この身近にないから、俺自身にもないから、思わず負けそうになる。身近にないその美しさを、卑俗さばかりの女の醜さで溢れたこの周囲を、俺が美しくなることで浄化してやりたいと思う。だがそれは敗北だ。生物学的に男が必要ないことが証明された今でも、俺は男として生まれてきた。社会的には男と言える働きは何もしていないかも知れないが、せめて気持ちだけは男でありたい。女の卑怯さを行使しないプライドを持った、正義でありたい。例え男の存在が女から生まれ、女の居心地を良くするためだけに作られた存在だったとしても、反逆してやる。汚ぇチンポは要らない。でも骨の髄まで男でありたい。というより、偽善ではない「正しさ」に忠実でありたい。気持ちだけは。