一月前の溜まった排泄。

 先月は体調不良と不作により二本。
 まず一本目、リュック・ベッソンの純粋な新作「アンジェラ」。良くできた小品だけど、あまり性的でない主演女優故、俺は逆に欲情したな。とはいえ、ベッソン作品のヒロインに欲情することは俺にしてみれば極めて希だ。こいつがヒロインに起用する女優というのは、こいつの女の好みが濃厚に反映されていて、ジェームズ・キャメロンがことあるごとに自作の主演女優に手をつけ、自らの女房とすることを繰り返してきたことに似ている。つまりこいつはキャメロンになりたいだけの、オリジナリティのないヤツなんだと断じているわけだが、こいつの好みはキャメロンがひたすらマッチョ女を求めているのに対して、セックスの感度も悪そうな貧弱なモデル体型の女ばかり。要するに鶏ガラ、ダシを取るくらいしか役に立たないような女ばかりなんだな。にもかかわらず発情できたのは主人公のダメ男(「アメリ」の八百屋の下働きだ)が極端にチビで、女の生来のデカさを際だたせてくれた(俺はデカいものには敬服する習性がある)からかも知れない。加えて、ずっと一緒にいて、どんな酷使にも耐えてきた自分の身体に感謝するよう主人公に言う台詞がある点。この現実味のない女から言われると、常々そのことを考えつつ何も出来ていないこの身には応える。「ファム・ファタール」でレベッカ・ローミンとレズっていた時はどうでもいい女だったが、撮りようによっては気になるってことだ。覚えておこう。

 次は、「嫌われ松子の一生」。椅子も悪いからかも知れないが、単純に自分勝手な人間だらけの物語で、しかも長い(体感時間:2時間20分くらい?)ので、共感できるキャラもいないために疲れた。ひたすら疲れた。おまけに頭痛までしてきた。所々笑えるところはあったけど。他人に迷惑掛けて、自分勝手に生きている女は共感するんだろうな。って感じ。だから殺戮を止めて帰った、ってものある。それでも、谷原章介には相変わらず欲情する。いい男だよ。

 ついでに読了の本について。
 クリストファー・クック著「終わりのないブルーズ」。長い。ひたすら長い。でもこれは「〜松子」の様な疲れではなく、場当たり的な犯罪を繰り返す主人公二人、そしてそれを追跡するテキサス・レンジャーの男の精神の荒廃を描くために必要なので、全く無駄とは感じなかった。舞台となるテキサスは正にそういう土地なのだと、地平線、そして虚無への憧れが高まっただけだ。その世界で殺伐とした殺人、強盗が繰り返されていく。それでいい。その中で見つけた愛に似たもの、愛か、そうではないかなど判別もつけられない主人公の愚かさ。それだけがリアル。下ネタのジョークも救いがない。それはいいことだ。湿度を完全に除去したエルモア・レナードのような感触。ただ、リアルなセックス、でも適当な愛、で終わっていくことが小説ながら悲しい。

 レックス・ミラー著「壊人」読了。ベトナム帰りの天才殺人鬼の乱行三昧のスプラッタパンク、という触れ込みにしては、悪意も暴力も血の量も足りない。実は邦訳はされていないが、続き物ってのも問題だ。快楽殺人に殉ずる怪物を、ホラーみたいに続きにしてどうすんだよ。共感したのは「終わりのないブルーズ」同様、どうしようもない悪党の、犬への盲目的な愛情のみ。エルロイといい、人間に絶望している人間は犬を好む。アウトローなら尚更だ。女は裏切るが、犬は裏切らない。そして俺も、犬を殺す人間、虐待する人間が、その行為をなすに値しない人間ばかりであることを知っているので、憎んでいる。かといって己の所有物として飼う人間も、己の傲慢さに気付かない愚か者として、結構軽蔑している。要するに、驚愕の実話、「愛犬家連続殺人」でも読んで、自分もそういう人間の一部と認識した上で、所有か、真の愛情か、折り合いをつけないとな。
アメリ [DVD]ファム・ファタール [DVD]嫌われ松子の一生 (幻冬舎スタンダード)終わりのないブルーズ (ヴィレッジブックス)壊人 (文春文庫)愛犬家連続殺人 (角川文庫)