本当の哀しさは灰色じゃない。

 ワーナー・ブラザーズさんにご招待頂き、「スキャナー・ダークリー」試写へ。冒頭からブッ飛ぶ。映画とは、SFとは正に“画”の力であることを改めて思い知らされる。といっても極力SF的なガジェットを廃した、“SFらしくないSF”だ。ではなぜそこまでインパクトのある“画”が拝めるのか。それはポスターなどから明らかな様に、これがアニメーションで、それも極めつけのリアルなヤツだから。接写シーンでは色味の差がハッキリ出て、これが絵である事が分かってしまうが、遠景や自然光の中ではそれが実写であっても遜色のない出来栄え。そう、これは酸性雨の降る世界や、火星での出来事じゃない。現代人にこそ共感しうる、未来の物語だ。フィリップ・K・ディックは現実への懐疑だとか、アイデンティティの揺らぎを描いてきた作家だ。だからこうした主題さえ丁寧に抽出すれば、極度にSF的なるものに固執しなくても、充分にディック的と言える。本作はその部分で成功しているだけに、可笑しくて、哀しいぜ。別に「マイノリティ・リポート」みたいに分かりやすくしなくていいんだよ。そしてウィノナ・ライダーは当たり前の様に美しい。あんまり美しくて、俺は死ぬかと思った。それにしても、リチャード・リンクレイターという監督は、「がんばれ!ベアーズ」をリメイクしたと思ったら、次がコレなんて、過去のフィルモグラフィーも含め、本当に振れ幅が広いね。ちなみにここのキアヌ・リーブス終始ムサいのは、これが「マトリックス」のアンチテーゼだからかも知れない。暗闇のスキャナー (創元SF文庫)ブレードランナー 最終版 [DVD]トータル・リコール スペシャル・エディション [DVD]マイノリティ・リポート (2枚組 プレミアム) [DVD]がんばれ!ベアーズ ニュー・シーズン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]マトリックス 特別版 [DVD]