映画修羅八荒の果て。〜後編〜

〜前回の続き〜

 三本目は「スネーク・フライト」へ。何一つ非の打ちどころがない素晴らしい作品。一切の思考も批評も拒絶する、凄まじい感動が待っている。空飛ぶ密室に毒蛇、セックスする奴から死んで行く正しい展開、巻き起こるパニック、そして、全てを正当化するサミュエル・L・ジャクソンの存在。サミュエルの一枚看板あってこそ実現したこの企画。「シャフト」に匹敵するカッコ良さを見せるサミュエルが丹波哲郎に見える。スター不在ならただのバカ映画になってしまいそうなこの企画を救ったこの男気。何とも最高じゃないか。全ての映画は見習え。全ての未見の観客は観ろ。映画って、これ以上の要素は何もいらないってのがよく分かるぞ。全ての面倒臭ぇ映画がこうなりゃいいのに。スタッフ、キャストともに、アカデミー賞もんの偉業だ!強盗してでも観るべし!

 四本目は「ホステル」へ。結果から言うと、確かにスゲーんだけど、想像してたほどじゃないんだよな…。やっぱもっと無慈悲に残酷描写が連発されるものを期待していたんだが、この監督、イーライ・ロスの前作「キャビン・フィーバー」も思わせぶりに終わってしまったが、彼の作品に限らず、最近のスプラッタ作品全部に言えることなんだけど、レイティングに気を遣ってからか寸止め描写ばかりなんだよ。冷静に考えたら、スプラッタというのはそういうのが多く、実際、寸止めに逃げずに描き切っている、という意味では、戦争映画やバイオレンス映画の方が実は余程残酷だったりするわけで、こちらのそうしたものを観たい欲求にも応えてくれているので、そういう意味ではスプラッタに出来ることは限界があるかも知れない、と残念ながら思ってしまった作品である。でも、こうした人間の「残酷なものを観たい」という劣情に訴える、一種のポルノとも言えるジャンルの志の高さには、一種の魔力があり、人間の“悪”を研究する上でも目が離せそうにはないので、もっと過激な表現を心がけて欲しいもんだ。ただ、この監督は、人間がたまたま目にしてしまうことがある“本当に不快なもの”への嗅覚は極めて鋭いと思うので、その感覚は大事にして欲しい。シャフト [DVD]キャビン・フィーバー スペシャル・エディション [DVD]