今年最後の行。

 映画の日は結局四本。この前書いた「武士の一分」は別として、今年は邦画が洋画の興収抜きそうだと?知らねぇよ。字幕読めない馬鹿が増えてるだけだと思うね。スクリーンで観るからには、どうしても洋画がメインになっちまう。

 そこで一本目、「007/カジノ・ロワイヤル」へ。世界的には新ボンドが合っているかどうかが論争の的となっているようだが、俺は全然あり。ボンド役の為に、徹底的に肉体改造したあの身体が繰り出す、圧倒的な暴力の説得力が全て。上映時間を長めに費やして重ねられる、丁寧な描写は、絵空事にリアリティを持たせるのに大きく貢献している。しかももうインフレでしかない秘密兵器をバッサリ捨てて、巨大過ぎない敵も世界征服とか言い出さない小物感が丁度いい。その地に足のついた絶妙なスケールダウン具合が、今回の作品からマンネリズムを排除している。ある程度のお約束は残し、かといってショボく見えないギリギリのリアリズム。このバランスは本当に難しいと思う。その試行錯誤のあとが、この上映時間の長さに表れているような気もする。とは言え、この時間は後半のバカラ対決での駆け引きに費やされているので、特に長さは感じないのだ。これは大事。そして今回の原作が映画化されたことで、オリジナルの原作は尽きたから、そういう意味でも、全くのオリジナルで来るか、過去の新解釈で攻めるか、次からこそ大いに期待だよ。それに、まだ今回は一応、殺しのライセンス手に入れたばかりだし。

 それから「武士の一分」挟んで三本目、「トゥモロー・ワールド」へ。予備知識全くなく、数ヶ月前から上映されていた予告編にある情報(アルフォンソ・キュアロンの新作、そこそこのキャスティング、そしてSFってことくらい)しか知らなかったが、何しろ大好物のデストピアSFなんで行くことに。舞台は現状の延長線上にありそうな適度な荒廃感のあるイギリス。海外は経済的な破綻、人種紛争、災害などで壊滅状態ながら、移民を締め出し、鎖国することで、内側からのテロに晒されながらも、辛うじて国の体裁を保っている。国が、人類が滅ぶなら、天変地異や戦争などの大きな力ではなく、内側から腐って、ゆるやかに、だが確実に崩壊していくのが、人類の愚かしさに相応しいと思う。なぜかって?事実人類はどうしようもないし、余程の不感症でない限り、今もそうして終りつつある予感を孕んでいるだけに、リアルだからだ。そして子供の産まれなくなった世界。ダイレクトな死よりも不安を盛り上げる。その理由が明示されないことと、事態の収束に対して、SF的な回答はない。だからSFとしては失敗なのかもしれないが、別に構わんだろう。というのもこの作品、作り手の趣旨がそうしたものとは違うところにあるような気がするからだ。何しろ長回しが多い。しかもその上での銃撃戦も多いと来た。これは本来喜ぶべきことなのかも知れないが、これはアクション映画ではないので、盛り上がっている時はいいが、登場人物がオロオロ逃げ回っているところまでカメラで追ってしまうのだ。長回し、それで銃撃戦だとすると、段取りや準備は大変だと思う。でもやはりもっと作品設定の外堀を埋めてもらわないと、それが報われない気がする。せっかく場所によっては真に迫る終末観を提示してくれてるんだからさ。

 最後は「ソウ3」へ。「ソウ4」製作中ということは既に知っていたので、これは今回で決着つかないんだ…と思ってたから、驚かなかった部分もあるが、驚いた部分(「クラッシュ」のバハー・スーメクと「スターシップ・トゥルーパーズ」のディナ・メイヤーの美しさ!)もあったので、まぁヨシとしよう。殺人鬼がかける謎を解けないと、残酷な死を遂げることになる、という基本は今回も踏襲され、残酷度もアップ。だが、本来の殺人トラップとは関係ないところで(残酷ともちょっと違う)グロ描写が増えており、上げ底感も強い。しかも、思ったより長い上映時間の原因は辻妻合わせだった。何か今後の展開がどうにでも転べてしまう時点で、何か急速に萎えてきた。痛みのある残酷描写にはセンスを発揮しているシリーズだけに、誰が犯人でもどうでもよくなっていった上、残酷描写などなきに等しかった「スクリーム」シリーズみたいにならないよう、どんどんこの路線を磨きをかけて行って欲しいもんだ。SAW ソウ DTSエディション [DVD]ソウ2 DTSエディション [DVD]スクリーム〈劇場版/ディレクターズカット版〉 [DVD]スクリーム2 [DVD]スクリーム3 DTSスペシャルエディション [DVD]クラッシュ [DVD]スターシップ・トゥルーパーズ [DVD]