力を手に入れた奴ら、それぞれの行使法。

 先日はパルコミュージアムにて「サンダーバード・イン・ジャパン」展へ。
 俺が物心ついてから、かなり初期の段階で残っている記憶が「サンダーバード」だ。でもその古い記憶は通して観賞した記憶ではなくて、たまたまチラ見した、そのビジュアル的なインパクト故だろう。当たり前だ、言葉を発したか発しないかの頃なんだから。リアルな人形劇で、しかもSF。吊り糸を見逃さない眼力もあるはずのない俺には、興味深いものとして刷り込まれた。それが全開になったのが小学生の時。それまでも単発で再放送などを目にはしていたが、それとは別に、スーパーマリオネーションの新作「地球防衛軍テラホークス」が始まったのだ(製作国の違いなど小学生が気にするはずもないが、なぜか国産マリオネーション「Xボンバー」は、知らなかったくせに別物と位置付けていた)。吹き替えで大幅に色をつけられ、怪獣だの宇宙人だのがレギュラーで出てくる「テラホークス」は、明らかにかつて観た「サンダーバード」より幼稚に感じたが、それでも自分の中でのスーパーマリオネーション熱を高めるには充分な完成度だった。やがて物語のリアリティとハードさを求めて、「サンダーバード」に行き着き、レンタルビデオとしてやっと置き始めたばかりのVHSバージョンをたまに観たりしながら(当時のレンタル料金は一本千円近くして、小学生には痛かった)、未見ながら、ムック本で存在を知った、よりリアルでハードな世界観とビジュアルの「キャプテンスカーレット」や「ジョー90」への想いを巡らせていたのだった…。後にそれらはソフト化され、俺は想いを遂げる事になるが、とにかくその当時のそうした諸々が思い出され、落ち着いて展示を観られなかったな。でもじっくり二時間ほどかけて観ることが出来たので、展示物の質はなかなか良かったと思う。特に放送当時の雑誌類やお菓子などは感涙もの。売店のグッズ類が意外とショボかったが、入場料五百円ならこんなもんだろう。それにしても個人的な収穫は、展示してあるお菓子のメーカーで
「コビト」
というメーカーがあったことを思い出したことかな。素敵な社名で、可愛くレタリングされてるっていうのに、今じゃ放送禁止用語っていうじゃねぇか。それでも言葉狩りや逆差別を牽制するためにも、こうした文化的遺産は大事にして行きたいものだ。


 加えて20世紀フォックスさんにご招待頂き、「Gガール/破壊的な彼女」試写へ。
 ニューヨークの平和を守るスーパーヒロインとは知らずに付き合って見たはいいが、別れてみたらその元カノがスーパーパワーを駆使して、半ストーカー化したら…という藤子・F・不二雄先生の「ウルトラ・スーパー・デラックスマン」を地で行ったような話。でもあそこまでブラックな話ではなく、アメコミ、それもとりわけ「スーパーマン」からのパロディ色が濃厚なアクション・コメディだ。中でも主役がユマ・サーマンに決定した時点でこのパロディは成功したと言っても過言ではなく、タフさと美しさ(そして現実世界へのそぐわなさ)において、彼女に匹敵するキャラクターを探すのは難しいだろう。「Gガール」という邦題はどこから来たのか観る前は気になっていたんだが、本作のスーパーヒロインの名前がその通りだったんで驚いた。このいかにもありがちな名前が、ヒーローものを茶化す気マンマンで好感が持てる(個人的には90年代に出た裏本「GGガール」が思い出されて笑えた)。敵の悪の科学者も元同級生って設定だったり、クリプトナイトもどきを駆使したりで、レックス・ルーサーそのまんま。意外と惚れた腫れたが多かったのが今年の「スーパーマン・リターンズ」だが、一応ヒーローものなのでそれでも抑えがあった。しかしこちらは基本的にパロディだし、同じアメコミ・パロディ「Mr.インクレディブル」みたいに子供向けでもないので、下ネタと男女のウジウジしたやりとりにかけちゃ申し分ない。そういう意味では「〜インクレディブル」も子供向けにしては頑張っていたが、こっちはもっと開き直っていてネタも直接的。しかもそのドタバタを再現するための視覚効果は極めて丁寧に映像化されているので、心底、狂った人間に力を持たせると(または超人が狂うと)ロクなことにならないってことが良く分かる。それに、見た目ばかりのキチガイ女もロクなもんじゃねぇってことだ。しかし、人格破綻者がヒーローであるという描写は、ティム・バートン版「バットマン」みたいなリアリティがある。それにしても、一途な想いを抱いている者が報われるという、意外?なオチは絵空事ながら嬉しかったよ。


 しかし、「GRINDHOUSE」への渇望は俺の中で相当高まってきているみたいだな。ありもしない俺・オリジナルで架空の「GRINDHOUSE」を夢に見ちまった。夢だから本当の「GRINDHOUSE」には当然出演してないけど、寺島進兄貴が出演しているその夢は、これが良く出来ててさ〜、
 悪友と遊び歩いては浮気の機会を窺ってる男(寺島兄貴)が、ネイティブアメリカンの妻から、呪いがかかった黒いTシャツをプレゼントされ、そのせいで毎回浮気しようとする度に怪物化して、女を食い殺して浮気できない、って話と、本家「GRINDHOUSE」同様なぜか二本立てで、
 マリファナを隠れて栽培しているマリファナキチガイのオヤジが、マリファナ畑に出現するようになった化け物(正体は畑の大麻を主食にするようになったせいで神獣化したスカンク。屁がマリファナの成分になっているらしい)を、ハブ駆除のために放されたマングースの怪物化だと思いこみ、ハッパを独り占めしようと戦いを挑む話だったよ。勝敗は不明。どうでもいいけど。喋れもしねぇくせにしかも全部英語。なんじゃそりゃ。
 夜見る夢という、一番身近で、原始的で、直感的なバーチャルリアリティがくれた発狂。人間の一番自由な精神が投影される脳内のスクリーン。だから夢は好きさ。どんな映画よりも。どんな現実よりも。
 この夢の前見た夢は、緊急シャッターが降りてしまった駅でそこに閉じ込められていたジェシカ・アルバを助けてあげたら、飛行能力を持つ俺と一緒に空飛んでくれたしな。今夜はどんな夢が待っているのか、楽しみだ。サンダーバード コンプリートボックス PARTI [DVD]サンダーバード コンプリートボックスPART2 [DVD]Xボンバー DVD-BOXキャプテン・スカーレット コレクターズボックス 5.1chデジタル・リマスター版 [DVD]ジェリー・アンダーソン トリプルパック [DVD]藤子不二雄異色短編集〈3〉ウルトラスーパーデラックスマン (ゴールデン・コミックス)スーパーマン リターンズ 特別版 [DVD]スーパーマン アルティメット・コレクターズ・エディション(11枚組) [DVD]Mr.インクレディブル [DVD]バットマン [DVD]