暴力表現後進国、この不甲斐なき日本。

 俺の先輩が、とある日記に「独り言」についての興味深いことを書いていたので個人的に送ろうと思ったが、それでは面白くないので嘘でも何でもない俺の最近の独り言ベスト3を先に書いてみたい。

1.「ブッ殺すぞ、この野郎!」(使用例:芸人の出ているテレビを見て、ニコニコしながら「○○(芸人の名前)テメエ、ブッ殺すぞ、この野郎!」ついでに、「水のないプール」で裕也サンも同じ事を言っているので、予習しておこう。)

2.「うるせぇ、この野郎!」(使用例:起床前のウトウトしている状況でヤりたくなった時、その考えを打ち消すように、ニコニコしながら「うるせぇ、この野郎!」)

3.「絶対に許さない」(使用例:脱糞中に痔が痛む時、殺したい奴の事を思い浮かべて、ニコニコしながら「絶対に許さない」、オプションで「殺してやる・・・。」)

 ま、そんな感じである。日常でこの三種が多用できれば、独りで部屋にいる時、もっと楽しくなるよ。

 ということで映画の日は凶作により三本。一本目は、「あるいは裏切りという名の犬」へ。ダニエル・オートウィユとジェラール・ドパルデュー。本来はもっと大々的に宣伝されていい組み合わせが、あまり日本では話題にならなかったのは、アメリカ映画偏重の傾向が強いこの国のせいなのか、作品が暴力的過ぎるのか。できれば俺には後者がその理由であって欲しいと思える、激シブ・フレンチ(ポリシェ)ノワールであった。本当に裏切りに次ぐ裏切り。暴力に次ぐ暴力。特に警官が平然と振るう暴力描写は徹底している。警察というものの汚さをこれほど分かり易く告発している作品も最近では珍しい。告発というか、結局、警察の社会も、極道の社会と同じに、所詮は“獣の掟”が支配する世界という、ごく当たり前のことを言っているだけなのだが。理性ではなく、暴力がものをいう世界。犯罪者の容赦無さも、警察の容赦無さも、最新の銃器をふんだんに使うことでその暴力性に説得力を付けているのが頼もしい。既にこの作品はオートウィユ(ロバート・デ・ニーロ)、ドパルデュー(ジョージ・クルーニー)というキャスティングでハリウッド・リメイクが決定しているが、暗黒街出身というドパルデューの持っている禍々しさをどこまで醸し出せるかは、大いに懸念されるところではある。


 二本目は、「どろろ」へ。いや〜もう、最初に叩き斬られる山谷初男が、安易なCGでズレるように処理されているのを観た時点で嫌な予感がしたが、この不快な感じが二時間も続くとは思いもよらなかった。久々に映画そのものに激しい怒りを覚えた作品。もちろん原作マンガにそこそこの思い入れがあるからこそ行ったわけだが、この原作に描かれている物語は真の“絶望”と“怨念”であることは、どんなバカでも読めば分かるはずだ。予算獲得にその毒抜きをしてまでも映画化する必要があるのか?これは「キャシャーン」や「デビルマン」にも言えることなのだが、今回はその愚劣さがより深まっている気がする。なぜなら、せめてその怨念や怒りの発露であるはずの暴力の結果として、血を消す必要があるのか?という点にも顕著に表れているからだ。もともとマンガという表現形態を通して、何かを訴えたかった作品に対してこうした処理をする必要はあるのか。こうした愚行を抜きにしても、原作の設定を変えて、バカ女のギャンギャン言う声ばかりで物語を埋め尽くしていることについても、個人的には耳に大変不快であった。こんな女が目の前にいたら、顔の形が無くなるまで机の角に顔面を叩き付けてやる。要するに腹から声を出せる女しか起用すんなよ、馬鹿野郎。


 三本目は、「エレクション(黒社会)」へ。勃起「エレクチオン(by小池一夫)」のことではない。そういう映画でも十分に魅力的だが、これは立候補の方だ。香港最大の組織の跡目争い。満場一致で選出されそうな勢いのサイモン・ヤムに対して、跳ねっ返りのレオン・カーファイが「何で俺が推されないんじゃい!」と立候補、あらゆる手段を弄してサイモンを叩きつぶそうとする。物語はそれだけ、話だけなら新味はないが、それでも銃が一切発射されることのない、驚きの香港ノワールだ。物語は要するに「博奕打ち・総長賭博」における鶴田浩二若山富三郎ってこと。富三郎であるところのカーファイがブッ壊れていればいるほど話は面白くなるわけで、その役目は充分すぎるほど果たしている。鍵となる超暴力シーンが、黒沢清の「蜘蛛の瞳」に似ていることで、観客には暴力映画へのスキルが試されるのだが、実はあの作品ほど寒々しい感じはしない。むしろ、人畜無害な振りをしていても、ヤクザは所詮ヤクザだ、という厳然とした事実を突きつけられて、胸がスッキリした。こんな話にロマンなんて要らねぇからな。加えて、この理論が全世界で通用するなら、裏を返せば、どんなに犠牲的精神を発揮して人助けをしたオマワリでも、所詮はオマワリ、合法的に暴力が振るえるだけの存在ということも、世の中では同時に言える真理が横溢しているはずだ。とはいえ、続編は相当楽しみ。

 しかし、旧知の友人、ディレクター兼アーティストの大竹マモルさんが個人で運営しているサイトがいちいち痺れる。彼の作品を随時アップしているのだけど、知らない人間は一度見た方がよい。
http://www016.upp.so-net.ne.jp/idiot/gallery_new.html

ヨン様に犯られてる夢でも見てろ、ババア!」

 などは、もはや人生訓にしたいくらいクールだ。まずは行って撃たれろ!
どろろ (第1巻) (Sunday comics)新造人間キャシャーン COMPLETE DVD-BOX ~ALL EPISODES OF CASSHERNデビルマン(5) (講談社漫画文庫)博奕打ち 総長賭博 [DVD]蜘蛛の瞳 [DVD]水のないプール デラックス版 [DVD]