暴力ポルノ四本立、優劣の実態。

 石立鉄男が死んだ。70〜80年代テレビを席巻した、最強のイケメンの死。俺は肯定派なんだが、あのキャラのどこに、そこまでの激モテキャラを醸成する部分があったのか、個人的には謎も多い。実際の彼は硬派な人だったそうだが、周囲のイメージはエースコックの“わかめラーメン”そのものである。あの空回りする異様なテンション、それだけは自分もあやからせて欲しいと思い、供養の意味も込めて、三日くらい連続で、百円ショップで買い求めたエースコックの“わかめラーメン”を一気食いした(内訳:しょうゆ、ホタテだし塩、辛みそ、これらにやはり百円ショップで売っている、“乾燥ワカメ”を、さらに大幅トッピング)。そして食いながら、必ず一回はあのCMを個人的に再現し、その都度箸でつまんだワカメに、「お前はどこのワカメじゃ?」と聞いてみるが、いずれも返事はなかった・・・。

 その死を知った日に、映画の日として鑑賞した作品は今回は四本。いずれもアクション満載のように一見見え、セックスを扱ったポルノは規制しても、暴力を扱ったポルノは規制しないという、人間の愚かな矛盾をつくのに適したラインナップだと思っていたが・・・。


 一本目は、「スパイダーマン3」へ。本気で敵の数を出し過ぎだと思っていたが、意外とまとまっていた。でも、やはり敵の数を出しすぎてしまったが為に、キャラ一人ひとりのウェイトがどうしても抑え気味になってしまっている。特にサンドマンとヴェノム。サンドマンVFXは最高の仕上がりだと思ったが、鉱物と同化するという点で、「ハルク」のニック・ノルティと個人的にはカブってしょうがなかった。ヴェノムは論外。俳優が悪いとか、キャラが不自然で弱いとか、そういう次元の問題ではない。スパイダーマンにとって最強、最悪の敵をこの時点でおまけのように出してしまっては、「三部作で終える」というライミ当初の目標から外れてしまうではないか。キャメロンが監督すると言っていた頃は、この役はシュワルツェネッガーに演らせると言っていたほどの重要な役なんだ。そしてこういう展開にしてしまったら、どんどん続けざるを得ないだろう?次はカーネイジか?そして収拾がつかなくなって、以前の「バットマン&ロビン」(このMr.フリーズもシュワだが)にトドメを刺されたバットマン・シリーズのようにならないといいが。こうなったら、俺に出来ることは、毎回出ているブルース・キャンベルを次回も探すことだけだぜ。でも、今回のブライス・ダラス・ハワードには初めて欲情した。それは次にも期待する。


 二本目は、「スモーキン・エース/暗殺者がいっぱい」へ。事前に得た情報で、駄作になるはずないと踏んでおり、さらに海外版トレーラーで、いやが上にも期待してた作品だが、期待しすぎるのも禁物で、その限りでは特に裏切られた感じはしてないな。気持ちよく人がバンバン死ぬ佳作バイオレンス。公開前アメリカのマスコミが、「こりゃ、『パルプ・フィクション』を超えるかも?」とか書いてたのは言い過ぎ。でもそれだけのものを期待させるポテンシャルを、スタッフ・キャスト共に持っていたのは事実だ。監督ジョー・カーナハンは、硬派なドキュメンタリー・タッチのアンダーカバーものだった前作「NARC/ナーク」を、トム・クルーズにプロデュースさせながら、結果「M-I-3」を降板したことで、俺の中では株を上げていた人物だ。そういう監督にコメディ色の強いバイオレンスが撮れるのか心配だったが、杞憂だったな。マフィア壊滅の検察側証人のマジシャンに賭けられた賞金と、それを目指して集まる殺し屋ども。しかもきっちり変装の名人とか入れて、「M-I-3」へのイヤミまで込めてる。もちろん、あとは勝手に殺し合ってくれるさ。事実その通りの展開で、その通りの展開過ぎて、マジシャンがなぜマジシャンなのかの理由付けも消滅、そのマジックで窮地を脱出するんじゃないか?というハッタリもなくなってしまった。でもそのお陰で、キャスト的にもレイ・リオッタが被っている、ガイ・リッチーの次回作「revolver」とは、内容が被らずに済みそうだ。これはこれで、保釈保証人のひとりに、エルモアって名前を付けても、レナードほど会話主体じゃなく、アリシア・キーズが美しければ、それで良かったわけだしな。そこだけは本当に最高だったぜ。


 三本目は、「パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド」へ。イヤ本当に辛かった。これは別に「ロード・オブ・ザ・リング」のように、しっかりした原作があるわけじゃないし、後付けで無理矢理そうしたと解っていても、三部作もので言えば「バック・トゥ・ザ・フューチャー」や「マトリックス」みたいに話の斬新さはないし、そのくせ、前作「〜デッドマンズ・チェスト」においては、「SW/帝国の逆襲」の最後でハン=ソロが固まって終わり、みたいなところだけは、中途半端に真似ている、非常に悪質な作品なのだ。所詮ただのアトラクションが元ネタのでっち上げ話だから、この先誰がどうなろうとどうでも良いのには本当に困った。誰ひとり感情移入できるキャラがいないし、頼みの綱のチョウ・ユンファも本当に助演レベル。こんなんだったら、ジョン・ウーの「赤壁」は受けておいた方が良かったんじゃないか?VFXはなかなか。でもそのクリアな画面に出てくるのが汚いツラやカタワの人間ばかりなので、見た目が汚く不快。しかも、綺麗所を綺麗所と扱っていないので、ナオミ・ハリスが可哀想だ。結局三時間近く掛けて、ジャック・スパロウは伝説の海賊でも何でもなく、こいつはただのボンクラで、凄いのは親父でした、ってことが言いたかったわけだ。そうだろ?全くアホらしいよな、キース。


 最後は、「ザ・シューター/極大射程」へ。今回の原作は「極大射程」だが、作者のスティーブン・ハンター作品は、「ダーティホワイトボーイズ」のみ読んだことがある。その他の作品の相関関係、いや、「ダーティ〜」が他の諸作品の番外編であることも知っているが、長い、しかも以前ヴァクスの件を言及した折りに書いた、長さ故のリアリティの欠如というのが感じられて、敢えて読まずに来たのだ。でも、その単純化されたこの物語の骨子を映画を通して観てみると、“連鎖する暴力”という点ではリアリティが低いかも知れないが、非常に純度の高いアクション映画向きの資質を備えた原作であるということがよく分かる。原作で重要な要素となっている、ヴェトナム戦争における歴戦のスナイパーという点が無視され、現代の話に置き換えられていても、はっきり言って、スナイパーとして、照準を合わせるマークが片目をつぶってしまう!が、そこには俺も目をつぶろう。このように、リアリティは虚構の範囲内において“極力”損なわれていないし、故に、アクション映画的にも、スナイパー映画的にも非常に痛快な作品だ。暴力描写やサバイバル描写も、オーソドックスながら、現代の話に適応した、ブラッシュアップを施され、使い古しただけの印象は決して与えない。さらに、「ロボコップ」や「マイアミ・バイス」に匹敵するバイオレンス描写もあるのでお楽しみに。まったく、この日最大の収穫だ。そして、アントワン・フークアとマークには裏切られたことがないので、是非続編を希望したいところなんだが、続編を念頭に置いた作りをしていないので、無理かも知れない。でも、久々にアクションの興奮が味わえた希有の作品。必見!スパイダーマンTM デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]スパイダーマンTM2 デラックス・コレクターズ・エディション [DVD]ハルク 2枚組スペシャル・エディション [DVD]バットマン&ロビン~Mr.フリーズの逆襲!!~ [DVD]パルプ・フィクション [DVD]NARC ナーク [DVD]M:i-3 ミッション:インポッシブル3 スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]ロード・オブ・ザ・リング コレクターズ・エディション トリロジーBOX スペシャルプライス版 [DVD]パイレーツ・オブ・カリビアン デッドマンズ・チェスト スペシャル・エディション [DVD]バック・トゥ・ザ・フューチャー トリロジー・ボックスセット [DVD]マトリックス・アルティメット・コレクション 〈10枚組〉 [DVD]スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲 リミテッド・エディション [DVD]極大射程〈上巻〉 (新潮文庫)極大射程〈下巻〉 (新潮文庫)ダーティホワイトボーイズ (扶桑社ミステリー)ロボコップ (特別編) [DVD]マイアミ・バイス [DVD]