クソの実在を裏付ける、素晴らしき暴力映画たち。

 かつて「ファイト・クラブ」の中でタイラーは、人間は基本的には、喧嘩を売られたら、回避しようとするものだ、というようなことを言っていた。
 でも実は、この日本においては別の事態も進行していることは忘れてはならない。
 ニュースなどで「モンスター・ペアレント」という言葉などを目にすると、ひょっとすると、今の世の中は恐らくそんな奴ばかりなのかもしれないとも思うが、どんな人間か解らない他人の前で逆ギレできると言うことは、そいつ自身が逆ギレしている対象が、どういう人なのか、とんでもない人であった場合(例えばヤクザとか)どうするのか、そうした想像力が一切欠如しているのか、もしくはそうした想像力を一切許容できないただの気違いなのか、そう思ってしまう。
 バカにしろ気違いにしろ、そうならば余計、関わるのは得策ではない。

 そんな逆ギレ体験を受けた中で行った映画の日は、チョイスも内容もいつにも増して重々しい、人間の負の部分しか感じられない、真実を描いた快作ばかりであった。
 故に悩まされ、憔悴した状態で更新は遅れていた。
 性悪説に正鵠を射たその快作振りが、今の俺には何とも苦々しい。
 つまり、真に人間に絶望しきっていない事を逆に気付かせることになったからだ。
 そして現実にこのオマンコ野郎・スズキ(仮名)は、次は完全に警察に通報すると言うことで俺は機を窺っているが、いわゆる生活音で処理される範囲内で、激しい音を逆恨みから来る嫌がらせでドカンドカンやり続けているのであった。
 それもまぁ、下からオマンコしているところを、我が胴太貫正国で文字通り貫けば、話は一気に解決する訳なんだが、俺は想像力があるからな。面倒臭ぇ話だ。

 その内訳はというと、一本目は「300」の二回目へ。何だかんだ言っても、ここまでテンションの上がる映画も珍しいし、二回目にして思ったのは、ストーリーの上で殆どハッタリがないこと。ストレート極まりない物語だからこそ、登場人物たちの役作りとしての肉体がものを言うわけだ。そして、実は暴力=スピードに見えて、この作品では逆をやっていること。原作に忠実であろうとすればなんだが、結局は映画を見る人間の脳の演算が及ぶ限り、引き延ばして動きの暴力ではなく、絵の暴力を見せるギリギリで踏みとどまっているんだ。前作ではそこを逆算し、ゾンビにスピードとカット数を加えた才能がここでも生かされているわけだ。そこに考察が行く時点で、ザック・スナイダーの才能は本物と言えるだろう。加えて、クセルクセスの根拠のない自信は、やはりカッチョエエぞ。

 二本目は「アポカリプト」へ。本当によく分かるのは、冒頭に出てくる字幕「文明は征服を受けない、文明は自壊するのだ(意訳)」で、この先描かれることは事実だろうが嘘だろうが一定の思想のもとに描かれていることを表明しているのは、同じメル・ギブソン作品ながら「パッション」よりフェアな作りをしてる。それを理解した上で観ると、最高のアクション、最高のバイオレンス、最高のスペクタクルが約束されている。まぁ、一定の思想のもとに描かれていることを理解しなくても、これらは約束されているが、物事の裏をはっきりさせてから観た方がカタルシスもデカいってもんだ。「脱出」、「ランボー」、「プレデター」、これらのキーワードに反応する人間にとって、この作品を観ないで通過してしまうことは、間違いなく人生の損失だ。その背景が明らかに偏向した思想を植え付けようとしていても、それが解って観れば、そのテクニックの巧妙さ(全ては師匠、ジョージ・ミラーのおかげだ)に溜め息が出るだろう。掛け値なしの傑作。

 三本目は「ダイ・ハード4.0」へ。はっきり言って、護送中の参考人が、独立記念日を狙った大規模なサイバーテロの関係者でもあったという時点で、ご都合主義な訳だが、それを言ってしまうと今までのシリーズが全部否定されてしまうのでそこを突っ込むわけには行かない。でもそこに非常に違和感を感じるのは、俺が単なる娯楽映画としてのノリ以上のものをこのシリーズに求めてしまっているからなのかも知れないが、そうしたものを求めてしまうのも当然だと言えるくらい、一作目二作目の完成度は高かった。正直三作目はなかったことにしたいからこそ期待していたのだが、同時に時代そのものが、アクションに求められる資質そのものが進歩してしまっていることも感じたな。途中でハリアーが出てきたときは、「トゥルーライズ」かと思ったぜ。とはいえ、結局金目当ての犯人(従来のシリーズを踏襲)とか、ボヤきながらもいつものノリで解決されてしまう物語である点や、唐突に現れるケヴィン・スミスとか、それはそれで評価はしたい。だったら早く「クラークス2」を上映しろと言う気もするが。

 トリは「プレステージ」へ。壮絶。この一言に尽きる。キャストの華々しさに騙されるな。このキャストもまた、作品の壮絶さの口当たりを良くするためのトリックの一環に過ぎない。回想に次ぐ回想、そこに互いに挿入される手記、現実を見越して浸食し合う意志。シナリオ自体が複雑精緻を極め、物語の展開をこうして一言に言うこと自体が至難の業だ。しかし、実際に見てみると難解なことはなく、実にシンプルに観客の脳に浸透していく。ということは、ここに至るまでに相当な試行錯誤があったことを感じさせる。それにしても、クリスチャン・ベールマイケル・ケインが並ぶと「バットマン・ビギンズ」かよと思うが、それを見越した同じ監督によるギャグなんだと考えれば納得がいく。だが、実際にフォトジェニックで題材的にも刺激的だったのは、マッド・サイエンティストのオリジンであるニコラ・テスラを演じる、デヴィッド・ボウイヒュー・ジャックマンの2ショットだろうな。久々にスクリーンで観たパイパー・ペラーボの美しさも相まって、特に印象的だ。これを機に、テスラ再評価の機運が(より)高まることを願う。ファイト・クラブ 新生アルティメット・エディション [DVD]300(スリーハンドレッド) (Shopro world comics)ドーン・オブ・ザ・デッド ディレクターズ・カット プレミアム・エディション [DVD]パッション [DVD]ジョン・ブアマン監督 脱出 [DVD]ランボー [DVD]プレデター 新生アルティメット・エディション [DVD]ダイ・ハード 新生アルティメット・コレクションBOX(「ダイ・ハード」スペシャル・ディスク付) [DVD]トゥルーライズ [DVD]クラークス [DVD]バットマン ビギンズ [DVD]