不可避のアナル切開を前にした逡巡など。

 どうやら、三件たらい回しされた先の“ケツ屋”では、そういうことらしい。
重度の切れ痔は、傷の両岸が潰瘍化して、自然治癒は不可能と。
ブコウスキーも酷い痔を患っていたと聞く。
 そして俺も酒を止められないし、止める気もない。
力は奪っておいた方がいいんだ。
力があれば、本能的に行使する方向が決まってるから。
つうことで、痛いがケツは検討、保留。

 とはいえ、久しぶりに更新するんで、ケツ話ばかりでなく、
随分前に読んだ本の話でも、ついでにしておこう。
こいつらのネタも相当蓄積しているが、残りはおいおいと。


デヴィッド・M・バス著「殺してやる/止められない本能」について。

 こういうのを読むと、久しぶりに散文めいた事が書きたくなる。
感情と思考の奔流に、整理がつかなくなるから。

 愛の正体が見えてくる。
 愛の正体が見えてくると、
女どもの本性が姿を現す。
 女どもの本性が姿を現すと、
俺は人間でいることの無意味さと、
絶望の本当の意味を知る。

 愛、それは幻想かも知れない。
 愛、それは主観でしかないものなのかも知れない。
 生物界のシステムにおいては、無いもの、
即ち、単なる打算にすり替えられるものであるかも知れないんだ。

 別にそんな事は薄々知っていたし、
実体験からそれしか学ばされなかった生き方を俺はしてきた。

 だからこそ、俺はここに書かれていることについて論破できないし、
論破する知性を得たいとは思う。

 だが悲しいかな、知性と知識は別物で、
俺の脳は知識を収集するようにしか出来上がっていないのだった。

 だから、あるとしても、結局見失った俺の目には、
海の中のガラス片を探すようなものでしかないし、
未来とは、世界とは、豊穣など期待もし得ない、茫漠たる荒野そのものなのだ。

 それは俺個人の生死を超えた、冷徹で単純な現実認識として。
 知識は、こいつらを外側から観察し続けるために、内側に入らない方がいいと警告している。


 残りはケツ圧=痛みに耐えてどれだけ脳に入っているか?の記録で埋める。


 一観客として「Yoriko―寄子―」へ。旧知の間柄である、棚木和人監督の商業映画デビュー作。書き手としての俺とは、こうして出会う事で監督と書き手の正面切っての格闘となる。結果は、普通に好感を持って鑑賞できた。物語は恐怖のない「シャイニング」という趣だが、単純に映像美を楽しむ事もできる。それとは別に、寺田農が大好物の俺には満足のいく作品でもあった。


 一観客として、「クローズZERO」へ。殺伐とした話なのに、みんなきれいな顔してるね。人間でボウリングする漫画みたいなシーンは要らない。あ、それもこれも所詮マンガの映画化だからか。その中でやべきょうすけ、岸谷五朗遠藤憲一だけが作品にリアリティを与えている。かつて、この手の作品は劇場で公然とカツアゲが行われていたりするのが魅力でもあったが、今は雌が多すぎる。


 アスミック・エースさんにご招待いただき、「アイム・ノット・ゼア」試写へ。一言ではボブ・ディランの伝記映画と言えるが、演じ手は多数にわたり、物語は多重構造を極める。俺は一見して、この作品がやりたかった事は、恐らくたけしが「TAKESHIS'」でやろうとした事と同じものを感じたが、たけしのそれと比べ、交通整理がされているので、全く心配はいらない。ギンズバーグの激似ぶりはシビれるぞ。


 一観客として「アメリカン・ギャングスター」へ。闘争ではない、癒着にいたる物語。あるいはヤクザの“俺節”。少なくとも、その暴走を抑制したのが、エグゼクティヴ・プロデューサーに名を連ねていた、ニコラス・ピレッジであったと思いたい。だが、それでもリドリー・スコットの撮るべき題材ではないし、いくら70年代の話だからって、ラッセル・クロウの相棒は、ロン・オニールに似せすぎ。


 ワーナー・ブラザーズさんにご招待いただき、「ジェシー・ジェームズの暗殺」試写へ。いわゆる西部劇ではない。そもそも舞台が西部ではない。開拓劇とも言い換えてもいいが、もはやその時代の物語でもない。「ワイルドバンチ」や「砂漠の流れ者」といったペキンパーのアンチ西部劇に真っ向から挑んだ作品だが、暴力と同等に自然や人間の心理の機微が、極めて丹念に描かれているのもその証左なのだろうか。


 ワーナー・ブラザーズさんにご招待いただき、「王妃の紋章」試写へ。誉め言葉として、これほど醜悪な家族の物語が設定しえた事において、チャン・イーモウの海外コラボレート史劇としては単純に前二作を超越した。確かに「HERO/英雄」も「LOVERS/七面埋伏」も、綺麗事ではなかったが、東洋の最低限のモラルを逸脱し切れなかった。日本人も含めた新世紀アジア人から己の鬼畜性を吐露する意味合いにおいて、あえて湯水のように予算を使った演出も、無常さを後押しし、世界への宣戦布告となりうる作品だ。


 20世紀フォックスさんにご招待いただき、「大いなる陰謀」試写へ。豪華キャスト、前時代的な邦題。内容の推測には困ったが、結局は力を持たず、権利意識の低い日本人が見ても意味無い作品と分かる。作品の質が低いのではなく、ターゲットがアメリカ人にしか向けられていないのだ。それは今日的なテーマを扱っていても、テーマ自体が日本人にとって切実さを欠いている事で露呈する。この前提さえ踏まえれば、力作とは断言できる。


 一観客として「28週後…」へ。人間の浅はかな善意を発端に、あったと盲信している絆からの裏切りが冷徹に描かれ、それらを隠蔽するための細かい嘘の積み重ねが、最悪の展開を迎える。突発的な犯罪や災害時には、人権などという余裕のあるのは日本人だけだということが良く分かる、弱者切り捨ての模範的なモデルケース。ヒロインは美少女過ぎて現実感を欠くが、ロバート・カーライルは出てきた途端に、後の展開が容易に覗える、「シャイニング」的親切設計。


 20世紀フォックスさんにご招待いただき、「ジャンパー」試写へ。超能力を手に入れた主人公が、まずやるのがその能力を利用した悪事というのが極めて正直だ。こいつらに敵対する組織は、彼らの持っている能力に単に嫉妬しているようにしか見えないからか、サミュエル・L・ジャクソンの説教も今回はあまり切れが良くない。でも明らかに続編を念頭においている企画なので、サミュエルの本領発揮は続編からかもしれない。そして、俺はこの東京ロケの時、現場にいた。


 のんきに渋谷TSUTAYA前で、誰もヘイデン・クリステンセンがいるのに気づいていないのを眺めていたとき、一年半後には、今のようにここまで俺自身が時空を超えたように落ちるとは、夢にも思わなかったのは言うまでもない。「殺してやる」―止められない本能TAKESHIS' [DVD]アメリカン・ギャングスター コレクターズBOX (初回限定生産) [DVD]カジノ (ハヤカワ文庫NF)グッドフェローズ スペシャル・エディション [DVD]グッドフェローズ スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]カジノ (ユニバーサル・ザ・ベスト:リミテッド・バージョン) 【初回生産限定】 [DVD]スーパーフライ 特別版 [DVD]ジェシー・ジェームズの暗殺 特別版(2枚組) [DVD]ディレクターズカット ワイルドバンチ 特別版 [DVD]砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラード 特別版 [DVD]英雄 ~HERO~ スペシャルエディション [DVD]LOVERS プレミアムBOX [DVD]シャイニング 特別版 コンチネンタル・バージョン [DVD]「28日後...×28週後...」感染ダブルパック [DVD]ジャンパー (特別編) [DVD]