肛門のシワを刃物で切り刻むために記す(奥崎風)。

 俺はギャンブルには全く興味がなく、ゆえにブコウスキーや裕也さんの競馬への言及は基本的にスルーしている。だが酒を介さない、ギャンブルのみによる蛭子さんの強烈な自己破壊願望には、根本さんならずとも異常な興味を覚えてしまう。だがそれは彼がフリークスであるところに負うところが大きいからだ。

 要するに、何が言いたいかというと、ドストエフスキーを破滅させかけた賭博への狂熱には冷ややかだが、彼を肉体的に苛んだ、“痔”という災厄に関しては、その陰湿で明快さを欠く現象から、「存在への不安=実存の探求」に導くには充分だったと、悶えながら思ってしまうということだ。

 そして入院による手術を俺はケツ断したが、予約できるのがずいぶん先との事で、その決意さえも揺らいでいる。

 だからといって、クソ仕事に穴を開けない責任感など、俺は微塵も持ち合わせていないので、予約の入る時点で何があろうと実施するつもりだ。

 こうした刃の振るわれる確定的な決意を受け入れるのも重要な事だが、結局はその刃で人を救えるかどうかだ。

 最良、それが出来ればいい。これなら最悪、自分が死ぬことはあっても、関係のない人間が死ぬことはない。

 「誰かが死んでも、それは誰かを生かすためでなければならない。それが武士道というものぞ、刑一郎!」と、また真瀬十兵衛先生(「ケイの凄春」より)が憑依してしまったが、要は、俺は、俺が今後生きるに値しないとは思うが、俺を切り刻む。

 つまり誰かを切り刻みたくなったら、いや、別に刃物じゃなくてもいい。怒りや鬱憤が時折“炎”に例えられるなら、外に炎を向けたい気分の時には、迷わずライターか何かで自分の手でも試しに焙ってみろ。

 そう、「リーサル・ウェポン」のゲイリー・ビジーや、トラヴィスみたいに。自分を録画しておきたくなるほどのリアクションが出る熱さだ。耐えられるもんなら耐えてみな。怒りを抑える方が楽だって気づく。

 そうすりゃ、それは外に向けるものじゃなく、てめえを焼くための戒めの炎だということも分かるはずだ。

 同時に、道具が悪いんじゃなく、道具を行使させる自分の中の炎がそれだけの悪意を持っている事もな。


 でも正直、自動車なんてもう要らないだろ。規制すべきは自動車で、刃物じゃない。「マッドマックス」の世界にならない限り、車は無くすのが世の為ってもんだ。
 ケツの穴に刃物を入れて拷問する役には立つが、ケツの穴に自動車を入れる拷問は出来ないからな。以下拷問記録。


 20世紀フォックスさんにご招待いただき、「ヒットマン」試写へ。物語がどうこうという話ではない。主人公の設定と、脱いだオルガ・キュリレンコだけで充分。ゲームの映画化なんだから。ビジュアルが原典に忠実に徹底されていれば、こういうものは合格だろう。特にゲーム自体の物語性が希薄になり、自由度が上がっている以上、単純な格闘ゲームの方が「燃えよドラゴン」の亜流として映画にしやすい。だから「DOAデッド・オア・アライブ」は成功したし、「トゥームレイダー」は、仮にルーツが「インディ」でも、どれも詰まらないわけ。


 ワーナー・ブラザーズさんにご招待いただき、「紀元前一万年」試写へ。エメリッヒ作品なので、原始人の実態や考証のリアリティを期待してはいけない。これは別に貶しているんじゃなくて、エメリッヒ作品には単なる娯楽として向き合うのが一番で、作品への余計な突っ込みはそもそも不要だからだ。純粋にライド映画として評価すべきで、その意味では合格点。その割には良く出来すぎのマンモス描写は普通に驚いた。ただ、あんまピラミッド出すと「スターゲイト」と区別つかなくなる。ドラマ版とは別に、カート・ラッセルが戻って来る話かと思った。


 3月の映画の日、一本目は「ペネロピ」へ。クリスティーナ・リッチは特殊メイクなどしなくても、そのキャリアと激しいルックスの変遷が充分にキワモノしているので、今更こんな「シザーハンズ」もどきの寓意に満ちた物語の主役を演じるまでもないし、実際そういう作品。しかも若干無理のある主人公の生育環境と、実在のブサイクに変な夢を見させそうなハッピーエンドの居心地が悪い。それでも、本来は敵役であるミゼット俳優、ピーター・ディンクレイジ(今回はしかも片目!)の芸達者振りには、本気で舌を巻かされるぞ。彼は最高。


 3月の映画の日、二本目は「ラスト、コーション」へ。基本的に俺は人の道に反した(つまり裏切りが前提にある)人間の恋慕を認めないが、世間的にはどうしてもあるし、それが人類の愚劣さを象徴している。だが、そんな騙し合いの中で、さらにいつ死ぬか分からないからこそ、誰彼構わずセックスする事でしか生の実感を得られない時代にあっても、生命懸けであれば、心にとって真実に幸せな状態は追究できる可能性もあるかも知れないことを、端的に示した作品だと思う。でも、あらゆる表現においては、それが限界だけに、非の打ち所がない。


 3月の映画の日、三本目は「裏切りの闇で眠れ」へ。これがフランス裏社会の現実に忠実に描かれたものだといわれれば、それでも納得できてしまうのは、暴力組織を構成する人種の多様さと、武器の大型化、凶暴化が果たすところが大きい。さらには、ブノワ・マジメルと、元刑事の肩書きを持つ、オリヴィエ・マルシャル(「あるいは裏切りという名の犬」監督でもある)のコンビが、色男とブロンソン風醜男ってことで、「さらば友よ」みたいなビジュアルだから許せてしまう。話も真逆な話でもあるけど、暴力描写と性描写は満載なので満足。


 東宝東和さんにご招待いただき、「デッド・サイレンス」試写へ。「ソウ」の仕掛け人が、リアルで痛みのある拷問的な人間主体のホラーから、超常現象などを絡め、かつてホラーが“オカルト映画”と呼ばれていた頃のクラシカルな路線を表現しようと試みている。ファンタジックで人間の念といったものを信じている人間には、結構お勧めできるかもしれない。人形も悉く気持ち悪いんで、その面構えを観ておくのに損はないが、ドニー・ウォールバーグ(彼は「ソウ2」からの登板だが)を出しておいて「ソウ」と無関係に終わるのは惜しかったな。そういうクロスオーバーってのは、レナード作品やアメコミを始めとして、ファンには嬉しいもんだよ。


 一観客として「ノーカントリー」へ。コーエン兄弟初の原作映画化ものだが、胡散臭い金を素人が偶然強奪するプロットは、盟友サム・ライミが映画化した「シンプル・プラン」っぽいし、金をめぐる追跡劇は「ファーゴ」のようだ。ただ舞台がテキサスからメキシコにかけての国境付近なので、地域を背景として行使される暴力も、より実効的で即物的だ。意識が絶たれる様な幕切れも「バートン・フィンク」に近く、コーエン兄弟に慣れていれば違和感はないが、やはり原作「血と暴力の国」を読んでおいた方がいいかも知れない。むしろその方が意味の深さも、実はかなり原作に忠実で、単なる“コーエン兄弟らしさ”だけの作品ではない事もわかる。


 一観客として「ザ・フィースト」へ。所詮はアメリカのテレビ番組主導で作られた作品だけあって、外見だけは旨そうに見えるが中身はボソボソのジャンク映画。モンスターのディテールにこだわるでもなく、中途半端にふざけたキャプションが入り、適当に外した演出をして、スリルもスプラッタ描写も味付け程度。第一久々に見たバルサザール・ゲティ、こいつは主役を張れる顔じゃない。リンチ主義者の俺でさえ、「ナチュラル・ボーン・キラーズ」でマロリー(ジュルエット・ルイス)をクンニ中に射殺されるシーンがキャリア中頂点だと思う。あとヘンリー・ロリンズがキャスティングされてる時点でも警戒しておくべきだった(例:「ザ・チェイス」)。続編が作られ続けている時点で驚きのクソ。


 一観客として「ス」へ。崔洋一監督による純然たる“韓国映画”だが、日本映画という制約から解放されているので、テーマとして監督が追求している“暴力”については継承されてはいるが、その描写も、耳引きちぎり、眼球抉り出しと、タガが外れていて嬉しい。ただ、韓国受けを狙ったのか漫画原作で韓流定番の“復讐もの”という「オールド・ボーイ」を意識した素材のチョイスとなっているため、嫌でも比べてしまうのは事実。世界市場向けの「オールド〜」と違い、原作の知識があることを前提に作られているようで、やや物語りに分かりづらい部分もあったが、韓流っぽくないナチュラル・ビューティーなヒロインが良かったので帳消しになる。リーサル・ウェポン [DVD]ケイの凄春  (キングシリーズ)  [コミックセット]タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]マッドマックス [DVD]マッドマックス2 [Blu-ray]マッドマックス?サンダードーム? [DVD]ヒットマン:ブラッドマネー 日本語版ディレクターズ・カット 燃えよドラゴン 特別版 [DVD]DOA デッド・オア・アライブ デラックス版 [DVD]トゥームレイダー1&2ツインパック 「ウォンテッド」公開記念スペシャル・プライス版 [DVD]インディ・ジョーンズ アドベンチャー・コレクション (期間限定生産) [DVD]スターゲイト ディレクターズ・カット版2枚組 [DVD]ペネロピ [DVD]シザーハンズ (特別編) [DVD]ラスト、コーション スペシャルコレクターズエディション [DVD]裏切りの闇で眠れ [DVD]あるいは裏切りという名の犬 DTSスペシャル・エディション [DVD]さらば友よ [DVD]デッド・サイレンス [DVD]ソウ×4 バリューパック (初回限定生産4枚組) [DVD]ノーカントリー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]シンプル・プラン (扶桑社ミステリー)シンプル・プラン [DVD]ファーゴ (ベストヒット・セレクション) [DVD]バートン・フィンク [DVD]血と暴力の国 (扶桑社ミステリー)ナチュラル・ボーン・キラーズ 特別版 [DVD]ザ・チェイス [Laser Disc]パク・チャヌク リベンジ・トリロジー (初回限定生産) [DVD]