思考の流れの記録と雑感の殴り書き。

 この場は何かの表明や表現のための場ではなく、全てを記録し、全てをさらけ出すために作られた場所だ。だから、時期はバラバラでも手帳に走り書きしているようなものがあれば、始めた頃は随時上げていた。スクラップを整理している時に印象的な走り書きを発見したんで、ここにも記録しておこう。俺は小学生の頃から高校生まで、意味不明な殴り書きをしているのが大学ノート十五冊以上に溜まっているので、また機会があれば全部開示するかもしれない。そん時は、タイトルも「ひかる童貞日記」とでも変えようか。


手を伸ばして、つかむことが出来たものはこの世にはない。
俺がつかんだのは全て、望んで手を伸ばしもしなかったものばかりだ。
つまりこの手の中に望んだものは一つもない。
だから手放すことに躊躇しないし、
しがみついているわけじゃない。
そう見えるのは、俺が全て手放すことで迷惑をかける人間がいるから。
単に人に迷惑を掛けない(権利を侵害しない)、
それが自由な世界であるべきだからだ。
俺の自由のために、他者のそれが侵されてはならないからだ。
それだけ。


全ての人間は絶対に死ぬ。
死ぬからには生きることなど考えるな、
そもそも生きさせようという教育をするな。
死は免れないならどこで死にたい?どういう風に死にたい?
そういう教育、死に方をこそデザインする教育がなされるべきなんだ。
そこから、生き方のデザインや覚悟が自動的に導き出される。
全てを失った人間、または、その時本当は死ななければならならなかった人間が、
どうにかたまたま生きることを許されて、生き直さなければならないなら、
そこまで考えなければ、生き直すことなどできない。
そしてそれは、自分自身に自覚させるだけでは意味がない。啓蒙しろ。
さらに全ての自己実現のない生を消すのだ。


 一観客として「オーストラリア」へ。「ムーラン・ルージュ」を上回る暴力的な情報量を期待したが、それは大幅に減少、テクノロジーと実写の合体で、祖国にオールドハリウッド的なるもの(ゲイ好みの「オズの魔法使」と「風と共に去りぬ」)を引き寄せるかにおいて、そのダイナミズム再現に終始した作品だった。驚いたのが、ヒュー・ジャックマンのワイルドさの人工性までバラしている。そう、実際彼は美しく、ウルヴァリンもそうした彼の喧嘩一つしないケミカル感がいい方向に働いてたと分かる。彼よりファラミアのイメージが強いが、実は女装の際立つ前作以来ラーマン組でもあるデイヴィッド・ウェンハムが極悪過ぎて印象的。彼の強面が効いた「プロポジション 血の誓約」は、かの地のむき出しの暴力性を伝統と証明する秀作で、「300」に並ぶ彼の代表作。本作の裏面としても、先史の「マッドマックス」としても必修の暴力大作だ。しかも原作はニック・ケイヴだから「ジェシー・ジェームズの暗殺」より重要。「〜マックス」が出たところで、オーストラリア映画の祖として、きっちりジャイロ・キャプテンであるブルース・スペンスを出しているのもジョージ・ミラーへの仁義と受け取れる。その目の届き具合が、歴史の暗黒面にまで及んでおり、白人とアボリジニの混血故に差別される少年の、期間限定なだけに凄まじい美少年ぶりが、“混血が優れているのは当たり前”という、ナチが歪めたニーチェ本来の思想を、自身のゲイという属性から正確に訴える点は意義深い。そのせいか、日本軍のダーウィン爆撃は、単に「風と共に〜」寄りのイベントとして機能しているだけで、国辱描写ナシなのは少し残念だが、ウォークアバウトに帰結するのは、決してニコラス・ローグへの目配せではない。その伝統こそが「オズ〜」だという、監督なりの結論なのだ。


 一観客として「ウォッチメン」へ。まず、先代ヒーロー集団「ミニットメン」の集合写真が、「パブリック・アイ」のモデルとなったウィージーによって撮影されていることに注目したい。彼の写真集「Naked City」や犯罪実話誌への提供写真こそが、ニック・ケイヴも崇拝するジェイムズ・エルロイのイメージ・ソースであり、本作はヒーローものの体裁を持ったノワールであることの表明である。探偵は様々な権力に妥協する。しかし、「世界が滅んでも(自分が滅んでも)、絶対に妥協はしない」ロールシャッハはその姿勢ゆえに狂人と見なされたアウトローとなることを選ぶ。彼も狂気に陥ってはいるが、淫売の母親を殺されたのが遠因となっており、暗黒街に生き、ウィージーの描いた真実に魅せられたのでは、まるでエルロイ本人だ。だが、そのお陰でこの作品のノワール的要素を強化することに貢献しているし、演じるジャッキー・アール・ヘイリーは「リトル・チルドレン」の性犯罪者を超えた、一世一代の男泣き演技を見せる。また、「ファイト・クラブ」以来、10年を経て再開された、CGを交えたファック場面や、当然そこに伴うバーホーベン以来のCGチンコ描写へのこだわりは、ロールシャッハの断言に別の意味も与えることとなった。原作に忠実であろうとした結果、上映時間がコミック映画化史上最長を更新したのも止むなしである。選曲は映画独自の監督センスが問われる重要な部分である。ゆえに、既に「ナチュラル・ボーン・キラーズ」が証明したように、世界の終わりはレナード・コーエンに相応しいし、コメディアンの葬儀の遠景に強調されるツインタワー同様、監督のカラーの刻印となった。ちなみに原作同様ながら、凄まじい刑務所の暴動が描かれたり、並べたモニターに人類史上の暴力の映像史を同時に投影するシーン(「マッドマックス2」も登場)もあるために、その点においても「ナチュラル〜」がフラッシュバックしてくる。つまり、改変されたクライマックスは9.11以降の時代の要請によるものとして止むを得ないとしても、原作に忠実な手抜きのないセックスと暴力だけではなく、芸人が「大日本人」で片手間に考えた挙げ句、途中で放り出した全てがここにはあるという事だ。藤子・F・不二雄の「ウルトラスーパーデラックスマン」を例に取るまでもなく、日本の“かつての”漫画家が如何に偉大かがよく分かる。人間は熱力学的奇跡でも何でもなく、世界を破壊する暴力そのもの、世界の内包する自殺因子なのだ。欺瞞的な平和を選ぶか、真実と正義を貫くか、この結末を見ればそれは明らかだろう。オーストラリア [DVD]ムーラン・ルージュ プレミアム・エディション [DVD]オズの魔法使 特別版 [DVD]風と共に去りぬ(1枚組) [DVD]ウルヴァリン:X-MEN ZERO <2枚組特別編>〔初回生産限定:デジタル・コピー付〕  [DVD]ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 スペシャル・エクステンデッド・エディション [DVD]プロボジション 血の誓約 [DVD]300〈スリーハンドレッド〉 [DVD]マッドマックス [DVD]マッドマックス2 [DVD]ジェシー・ジェームズの暗殺 特別版(2枚組) [DVD]マッドマックス/サンダードーム [DVD]亡霊の檻WALKABOUT 美しき冒険旅行 プレミアム BOX  [DVD]WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)ウォッチメン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]パブリック・アイ〈ワイド〉 [Laser Disc]ファイト・クラブ 新生アルティメット・エディション [DVD]わが母なる暗黒 (文春文庫)Naked City (Da Capo Paperback)リトル・チルドレン [DVD]インビジブル [DVD]ナチュラル・ボーン・キラーズ 特別版 [DVD]Leonard Cohen: I'm Your Man大日本人 通常盤 [DVD]藤子不二雄異色短編集〈3〉ウルトラスーパーデラックスマン (ゴールデン・コミックス)