退院後、偏愛者の煩悶。他。

 一応退院し、術後の経過はウンコの時も痛みがないので、主観的には良好なのだろうか。ケツの穴を鏡に映して観察してもいいが、恐ろしいものを見てしまいそうなので今のところは、やめとく。それより酒が飲めないので、暑さもあって飲料は炭酸系メインになってしまうが、中ではそれも禁止だったんでありがたい。その過程で行った実験として、「プレミアム三ツ矢サイダー・国産紀州梅」と「ペプシしそ」を混ぜても、“梅しそ”にはならなかった。同じことを考えた奴に、「やっても無駄だ」ということは宣言しておこう。
 並行して自宅療養の惨めな身の上ゆえ、いつからか聴かなくなってしまった、“音楽”そのものについても、昔の自分のコレクションから少しずつ聞き直しているが、元々別に音楽が嫌いなわけではない。結局入院中もテレビはニュース以外見ずに通したが、マイケル関係のニュースに耳をそばだてていたように、音楽は聴くものがあれば常に聴く姿勢でいようとは思っているのだ(ただマイケルの生き様は笑えても、曲をいいと思ったことは一度もない)。単に聴くに足るものがないのと、聴く時は「〜ながら」ではできない性分のために、そのための時間を確保できないままに遠ざかっていただけの話である。
 そこで、自分にとっての“音楽”というものを突き詰めて考えたところ、音源化されたものにしか興味がない、“完成品偏愛者”と気がついた。ライブのようにその場限りでやる度に変わるもの、そして環境やこちらのコンディションに左右されるものには一切興味がなくなっていたのか、昔から興味がなかったか、どちらかなのだった。
 何度もテイクを重ねて、最高のクオリティと環境で再現された音楽の保存。そしてその鑑賞。今や俺にとっての音楽はそれだけだ。さらに考えを進めると、なぜ映画ばかり観ているのか?にも行き当たる。それも音楽と同じことで、映画の基本をなす演劇にすら興味がなく、その最高の瞬間をフィルムに定着させたものにしか興奮しないのだろう。
 それは何でもかんでも集めてリスト化せずにはいられない、コレクター的な気質が志向させるのかも知れない。ただ、そうしたものと向き合う自分を客観的に見てみると、俺は定着せずに浮動している音楽や演劇という、その表現自体は、恐らく全く愛していないのではないかという?問いに行き当たるので、“定着品偏愛者”と言い換えてもよさそうだ。
 そして、そこに連動するアイドル嗜好やコレクター的な気質というのは、俺の無意識を炙り出すようで気持ちが悪い。以前も書いたが、それは俺自身が完全に許容しているとは言い切れない、ネクロフィリア的な欲求の存在である。刻々と変化していくはずの現実の死体など見たくないにもかかわらず、その変化さえなければ愛して止まないという、都合のいいものかも知れない。
 録音物もフィルムも、全て生(なま)の活動の焼き付けられた幻影である。その幻影のみを偏愛するということは、人に関して言えば、人物を愛さず、人物の写真を愛するのに似ている。
 つまり、はっきり言ってしまうと、人物に対してそのように屈折した愛し方をしたつもりはないが、誰かを愛したつもりになっていたのは全て幻想で、実際は人物を写真のように愛し、物としてしか接しておらず、本当には誰も愛したことがなかったとしたら?という恐怖の自問、全人生の否定に繋がりかねない疑惑に行き当たるのだ。
 だが、都合が良かろうと悪かろうと、そうしたメディアへの向き合い方は確実に俺の中に根付いているらしい。また、そう悟ったところで表現への向き合い方が変わるわけでもないが、殊に人間に対しては、セックスの幻影であるAVを、セックスの代わりに偏愛するようなことだけは何故かなく、まだ人間とイタすセックス自体をギリギリ愛しているようなので、これをせめてもの拠り所として、自分は人を愛して来たと信じ込ませ、ゴールまで逃げ切るしかない。


 一観客として「レスラー」へ。映画館を出て初めに触れたニュースが三沢の死だったので、その日偶然に会った、“自称・暗黒小説好きの若者(以前にも登場)”とも本作の話になる。曰く、「プロレスマニアはイタイ人が多いから、知らない振りしてるんですよ〜」との事だが、俺からすれば、ついて行けないほど詳しくて「お前、隠す意味も必要もないだろ?」と思ってしまった。というのも俺は、小学生の頃、親の方針でプロレスの視聴を禁じられており、にもかかわらずアニメの「タイガーマスク(再)」及び「タイガーマスク二世」はOKという意味不明さのお蔭で、リアルタイムの経験がないながらも、“プロレスが熱かった時代”の話が何とか理解できる程度だからだ。だが、その程度の過剰な思い入れがない方が、この作品の鑑賞には向いている。あらすじだけではとてもダーレン・アロノフスキーとは思えぬお涙頂戴だが、単純なプロレス賛美ではなく、演出面でギリギリのクールに踏み止まっているのだ。それどころか、ある部分においてはレスラーのエンターティナーとしての内面を容赦なく描いているので、そここそがアロノフスキーの力量と言える。ただし、プロレスを知らない人には全く分からない部分も多く、各自の“プロレス観”および“素養”が、本作の評価を左右するのは間違いないが、個人的には、マリサ・トメイが心臓の悪い男をまたも愛してしまう、「忘れられない人」の続編的作品としても受け止めたい。でも作品はやはりドライで、「π」の監督作品として、「ファウンテン 永遠につづく愛」で愛する者を失う喪失感が、観念によってリカバーされていく過程を整理して見せたように、あくまでもプロレスを数学的に腑分けして行く。よって、主人公も愛すべき人物には違いないが、人間的にどうしようもない部分のある社会不適応者として、“専門バカの悲哀”も隠さず描いているところが、近所のガキとのファミコン場面といった生活描写の細かさに活きてくる。その上、「レクイエム・フォー・ドリーム」で麻薬中毒者の醜悪さを多層的に解析したように、スーパーでバイト中の主人公の内面に響く、客の歓声などが主観音声として合間に聞こえるので、かのシャブ中ババアの幻覚のようで怖い。そのため、最終的にバイト先で暴れる場面は、ミッキー・ロークの迫真性も加わり、過去の栄光が忘れられず、自分の居場所へ戻る「竜二」を思い出す程やるせない盛り上がり様。しかし作品はクライマックス、全然華々しくもない場末の興行に命懸けで臨む主人公の姿勢を厳しく捉える。その一貫したタッチでラストまで緊張感が持続するので、駆け抜けた後に押し寄せる余韻で、多言を弄せずとも泣けてくるのだ。


 一観客として「トランスフォーマー:リベンジ」へ。前作の時も書いたが、俺はミクロマン原理主義者だ。それでも一応、TVアニメはリアルタイムで視聴しており、いじめではないが劇中、「チャーラーラーラーッ」ってマークが切り替わる音楽に合わせ、俺への悪口を歌うスタイルをクラス内で考案された立場としては、やはり“オートボット”だの“ディセプティコン”などと恥知らずな名前で呼ぶ愛情の無さは依然不快だ。支持層は少ないだろうが、本当は「ロード・オブ・ザ・リング」第二部以降に字幕監修がついた方式を踏襲するべきで、コケ気味であることが窺えるだけに次が思いやられる。まぁ日本公開版への配慮の欠如はさておき、スケールも登場ロボットも格段に増えているのに、前作に感じた勢いがない。それは俺の脳が情報量に慣れたのか?とも思ったが、前回の反省点から大幅に整理されているのだ。従って非常に分かりやすく、思い入れのない奴向けに、“ロボットものの実写化”としてのマスターピース度合いは更新された。また洗練が加わった事で、(場所はカタールだが)童貞特有の殺気がイラク戦争の影響みたいに影を落とした前作に比べると、話にも童貞喪失後の余裕が感じられる。その欠落を埋めるためか、親子の鑑賞にはハードな下ネタやマリファナネタを強化。俺のように性教育を自習した人間にとっては、あの犬は何をしていたのか、親御さんは性教育への積極利用を期待します。一連の低脳バイアスが強めにかかったネタの中でも、反捕鯨イザベル・ルーカスを、その卑小な品性に相応しい役に起用した点は評価したい。女優が出てきたところで、肝心のミーガン・フォックスについて触れると、ジョン・タトゥーロも台詞で指摘しているように、ビッチ度は維持しても大人の女になっており、個人的に評価は半減。特に今回は常に口が半開きで、従来のマイケル・ベイ作品には、ティア・レオーニケイト・ベッキンセイルリヴ・タイラースカーレット・ヨハンソンなど、口に特徴がある女優が多く登場したが、彼女の間抜け面から、それこそがベイの抜きどころなのだと今回断定しておく。総合的には、古代文明と“超ロボット生命体”の接点や、終盤“とある部品”を使ったコンボイ大変身など、かなりどうでもいい話の中から「AVP」の影響が強いと感じたのは、ピラミッドが出てくる事も大きい。ちなみに洋画では「イレイザー」以来のレールガンも登場、描写や発射方法はより具体的になった。アクション関係では、今回人間で一番激しいスタントを担当する、タイリースの相棒が、前作同様“男前のジョニー・ノックスヴィル”にしか見えず、それは完結編となる次回作も多分同じだな。クーポン配布中★アサヒ三ツ矢 梅500mlペットボトル 24本入(三ツ矢サイダー 紀州産南高梅)[rakuten:yamakuya:10003529:image:small]レスラー (ミッキー・ローク 主演) [DVD]タイガーマスク BOX 1 [DVD]タイガーマスク BOX2 [DVD]タイガーマスク BOX3 [DVD]タイガーマスク二世 BOX [DVD]忘れられない人 [DVD]π(パイ) [DVD]ファウンテン 永遠につづく愛 [DVD]レクイエム・フォー・ドリーム デラックス版 [DVD]竜二 [DVD]トランスフォーマー スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]トランスフォーマー/リベンジ スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]ロード・オブ・ザ・リング 二つの塔 スペシャル・エクステンデッド・エディション [DVD]エイリアンVS.プレデター 完全版 [DVD]イレイザー [DVD]ジャッカス Vol.1 [DVD]