「てめえ、殺すぞこの野郎!」って発言。

 字面だけ見ると不穏だが、俺はあんまり言葉の暴力とは思わない。仮に言葉の暴力でも、現実の暴力が表向きは封じられているように見せかけてるだけの嘘臭い世界で使われる分には、却って欺瞞がないし、普通の言葉のやり取りとしても内容が直截で、むしろ好きだったりする。
 親族に止められ立件こそ出来なかったが、一応俺も犯罪被害者の端くれなので、この姿勢は奇異かも知れない。もちろん、俺自身はガキの頃を省みても、この言葉を行使することはほぼなかったので、俺自身が使うことにおいて好きだということでも、あまりない。
 ではどういうことなのかと言うと、俺に対しては過去にこの発言をしていた奴も多く、自分が言われるのでなくても、この言葉が吐かれる場には数多く立ち会って来たつもりなので、今のところそういう局面における好感度、という意味合いが強い。
 だが前述したように、別に言われても聞いても特に不快とか、縮み上がった記憶はない。なぜなら字面は殺気立っていても、そのシチュエーションは極めて和やかだったり、笑える場ばかりだったからだ。第一、仮に修羅場でこの言葉が吐かれていても、あくまでも牽制の意味合いであって、本当に殺そうとしている相手にわざわざ事前通告するバカはいない(例:フィクションだと「菊次郎の夏」の菊次郎とか)。
 よって、この表現の身も蓋もなさと、使われる場やその実現性の低さにおいて、不穏でも許せてしまうのだ、という方が正しい。実際に殺害を仄めかす脅迫者の文句としては、そう言ってしまっては、そこから足が着く可能性をその姑息な人間性の中でも、いや、姑息だからこそ計算するらしいのだ。
 なので、俺が現実に被害に遭ったケースでは、犯人はその発言を巧妙に避け、「死ぬことになるから、覚悟しておけ」(脅迫電話を録音したテープより引用)という婉曲表現で責任回避できると考えているらしいことが窺えたのである。
 もちろんこの気違いは累犯者なので、その後犯した強盗傷害においても、「(現場に)行ったこともないし、知らない」(ニュースより引用)だとか姑息な供述をする点では共通している。アルコール性精神病にまで見舞われたのか知らんが、やっぱりそれで全ての責任が回避されると思っているのだ。責任を本当に回避したければ、場当たりで“宅間”的な愚行を重ねても無理だ。もっとスケールのデカい、寿羅木家の教皇を見習うがよい。
 結局、言いたいのは俺の犯罪被害経験などではなく、本当に陰湿な脅迫者は、恐らく書き込みにおいてもこうした表現を使うであることが容易に推察され、万が一、字面で「てめえ、殺すぞこの野郎!」的な書き込みが見受けられても、それはそれで殺害予告として当然検挙されるとは思うが、実際はそれほど警戒すべきことでもないだろうということ。
 それより、例の気違い脅迫者(現・強盗傷害犯)のように、婉曲表現で書き込む奴がいたら、それは即通報した方がいい。このところ、“殺害予告”なんて大袈裟に取り上げられる事犯による検挙が、中身を覗いたらあまりにも陳腐で、対処が硬直化している現実に対して、自分の経験に基づいて仮説を立ててみたってことだ。


 プレシディオさんのご招待で、「ドゥームズデイ」試写へ。近未来のスコットランドで殺人ウィルスが発生し現地を塀で封鎖。数十年後外界も同様の自体が発生、塀の中に生存者を確認した政府は、抗体探しに特殊部隊を投入するという、どこかで聞いた話の寄せ集めだ。海外版予告だけでここまで情報が丸わかりで待っていたが、一年近く放置の上ようやく陽の目を見た。そして設定はさておき、弾丸で顔面を吹き飛ばされ、焼き殺された上食肉に供され、轢かれて粉砕される人体破壊、および暴力表現への手抜きのなさは、監督ニール・マーシャル独自のもので、期待通り素晴らしかったのである。また、往年のSFバイオレンス(の牽引者達)への愛の捧げ方が、予算は段違いながらも、スティーブン・ノリントンの「デスマシーン」にも共通する匂いを持っている。それはエドガー・ライトのような別次元に昇華させるものではなく、とにかく好きなものを限界まで詰め込む不器用さと言っていい。だから余計に細部でその意図が窺えると強烈で、女性兵士を含む部隊の装甲車による突入は「エイリアン2」だし、ヒロインのローナ・ミトラのルックスが「攻殻機動隊」入ってるのは、アニメは知らん俺でも分かる。意外にアクティブな感染者もいるのは「ゾンビ」の影響だろう。塀の内部が「ニューヨーク1997」や「マッドマックス」なのは“カーペンター”や“ミラー”という兵士も出るので言うまでもないが、中世に回帰したエリアの設定は、没ネタ版「エイリアン3」の引用だろうが、「グラディエーター」風殺人ショーは、エリアへの移動手段が鉄道なことからも「〜サンダードーム」にイメージが直結する。なのでカーチェイスも島国ならではの起伏に富んだ荒野で行われており充実だ。とにかく美しすぎるミトラが難点に見えるが、実は見た目もちゃんと“スネーク”なんで注目!個人的には「ラスト・ボーイスカウト」を想起させる彼女の暴力シークエンスが痺れた。拾い物は、首相の右腕が「ウォンテッド」で主人公の父親とされたオッサンで、その異様な佇まいを暴力映画畑で今後も発揮して欲しい。


 一観客として「サブウェイ123 激突」へ。一応、「サブウェイ・パニック」のリメイクだが、いわゆる“トニー&デンゼル”シリーズ、第四弾。そこにトニー組初参戦のトラヴォルタが少々新風を吹き込んだ。そもそもオリジナルの“大胆な犯罪計画”および“パニック”が現代では無理があって、ブライアン・ヘルゲランドも頑張って経済事犯の側面を強調し、リアリティを加えようとしているが、それが余計無理を感じる悪循環。有名な互いを色で呼び合うケレン味も排除し、全員バカなので風邪も引かない有様。所詮時代が合わないので忠実にリメイクしろとは言わないが、せっかくマーティン・バルサムに匹敵する、ルイス・グスマン(ルイス・ガスマン)を出すなら、彼が風邪引きなら相当変わった筈。それは置いても、デカ眼鏡と鼻の絆創膏(?)が邪魔で、芸術的な彼の“超・男前ぶり(「な、なんというサイケな顔!」by「猫目小僧」)”がほぼ拝めないのは勿体ない。ただ、日本人の重役が出ない代わり、日本との関係は少し残したのは努力の跡として評価した方がいいな。デンゼルもオリジナルに敬意を表したのか、ウォルター・マッソーへの体型オマージュとも取れる緩い肉体。それが敵対するハゲと相まって、ハゲデブなトニー組常連、ジェームス・ガンドルフィーニも交えた三者三様の「中年もつらいよ」路線になだれ込むのも、哀愁ある大人の味わいで悪くない。だが、監督の持ち味、雑多な映像テクを交えた編集センスは「ドミノ」同様、事態の把握をより困難にする。特に、時折入る無意味なコマ落しはプロセス重視の犯罪映画には不要なんで自制しろよ。だから今後、シリーズ第五弾「Unstoppable」が待機中だが、デンゼル的には「The Book of Eli」の方が楽しみだし、トニー的にはリメイク版「The Warriors」が心配でそれどころじゃない。でもトラヴォルタだけはヅラ封印が成功し、ベッソン系の「From Paris with Love」でも見事なハゲっぷりで、今後の強面路線は期待できる。とはいえ、全体としては、既にTV版の忠実なリメイクがあるから、映画はやる必要なかったな。菊次郎の夏 [DVD]男大空 1 (MFコミックス)男大空 2 (MFコミックス)男大空 3 (MFコミックス)男大空 4 (MFコミックス)男大空 5 (MFコミックス)男大空 6 (MFコミックス)男大空 7 (MFコミックス)男大空 8 (MFコミックス)男大空 9 (MFコミックス)男大空 10 (MFコミックス)デスマシーン [DVD]エイリアン2 完全版 [DVD]GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 [DVD]スマイルBEST ゾンビ ディレクターズカット版 [DVD]スマイルBEST ゾンビ 米国劇場公開版 [DVD]スマイルBEST ゾンビ ダリオ・アルジェント版 [DVD]ニューヨーク1997 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]エスケープ・フロム・L.A. [DVD]マッドマックス [DVD]マッドマックス2 [DVD]マッドマックス/サンダードーム [DVD]エイリアン3 (ベストヒット・セレクション) [DVD]グラディエーター 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]ラスト・ボーイスカウト [DVD]ウォンテッド リミテッド・バージョン [DVD]サブウェイ123 激突 コレクターズ・エディション [DVD]サブウェイ・パニック [DVD]サブウェイ・パニック 1:23PM【字幕版】 [VHS]猫目小僧 1 (ビッグコミックススペシャル)猫目小僧 2 (ビッグコミックススペシャル)ドミノ 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]