リアル変質者に備えた訓練の必要性(ガキ限定)。

 俺は基本的に子供に興味が全くない。それは俺自身がおそらく子供であるためなのだが、その細かい原因はさておき、相手が子供というだけで無条件に相好を崩す愚かな本能は持ち合わせていないので、特にブサイクな子供には無関心である。だからといって別段美しい子供に興味があるとかでも、そりゃあるわけがない。
 まぁ子供のルックスなどはどうでもよく、いることを意識するだけで、そこで子供が働くであろう迷惑行為も意識されてくるので、何人いようがそんなものは意識に入れない方がいいのだ。それに俺の自意識の中には既に、俺という子供が既に尊大な態度で居座っているので、周囲の子供などに意識を振り向けている余裕はない。
 しかも“ここ(ハートを指さす)”にいる子供はその本質に忠実で、極めて自己中心的かつ残虐である。俺にしてみればこいつが暴走しないように見張っているだけでも一苦労なのだ。
 とはいえ、実は俺の休日などに付近を徘徊すると、近所に住んでいるらしい、小学校低学年の女の子が、何と俺のような人間に挨拶してくるのである。どうも、その子の休日を消化するプログラムと、俺の徘徊ルートが似通っているらしく、一度や二度ではないのだから辟易してしまう。もちろん挨拶されれば俺も一応は挨拶を返すのは当たり前なのだが、本当は反射的に「俺のような、いかにも“怪しい人間”に対し、気軽に挨拶などしてはイカン!」と叱り飛ばしたい衝動に駆られるのだ。
 つまり、この表現には若干語弊があるが、一般的に見てその子は非常に可愛いのである。むろん可愛いからといって俺はどうということもないが、可愛いだけに現代においては、近所に住んでいるからというだけで、無防備に“怪しい人間”に対し挨拶をしてはマズいと思うのだ。そこには親御さんの礼節を重んじた、正しい教育が反映されているのはもちろん分かる。
 しかし、現代は単に物騒であるだけではなく、有事の際には近所でとりあえず目立つ“怪しい人間” が、フランケンシュタインの怪物のごとくマークされてしまう世の中である。しかも、ここは比較的そうした人間が多く、数に紛れてしまう都市部ではなく、小市民的な家庭を築いた奴らが、それを後生大事に温存するために移住してくる新興住宅地なのだ。要するに疑心暗鬼と脆弱な自衛意識で成り立っている中途半端な田舎であり、何かあれば、何もやっていなくても俺のように“怪しい人間”は怪物扱いされることは必至という状況なのだ。
 歯切れの悪いことは言いたくないが、自明のこととして、別に俺は何もするわけがないし(世界に“絶対”はないので、そう思いたいわけだ)、近所の人への挨拶を欠かさない、世の中に有益な子供が育つのは地域にとっても、このどうしようもない国にとっても素晴らしいことであるのは間違いがない。
 だが、殊に俺のような、とりあえず“見た目の怪しい人間”を予めフィルタリングして排除する危機管理意識を育てて欲しいので、まず俺のような人間には警戒して、挨拶などしない方が、リアルに“見た目の怪しい変質者”が現れた場合、その子にとっても後々“ためになる”ことだと思うのだ。


 一観客として「アルティメット2/マッスル・ネバー・ダイ」へ。前作はアクション中毒の既視感を煽る、小粒ながら好感の持てる傑作だったが、まさか設定を使い回して続編が出来るとは思わなかった。元ネタの「ニューヨーク1997」シリーズを観ればよく分かるが、こんなのはパロディやセルフリメイクでもなければ一回しか通用しないのだ。前作の時間・空間的制約による成果を無にするとはさすがベッソン。従って、続編を成立させること自体が、必然的に前作に比肩しうる牽引力が物語にあるか?を注視させることになる。ところが、CGを交えた塀内部の無法ぶりを描写するオープニングは燃えるにもかかわらず、その点では完全に失敗。前作では、持ち込まれた核弾頭処理には成功したが、そもそも“犯罪多発地区を塀で封鎖”という政策が問題じゃないのか?と、塀の撤去を期待させる結末となっていたのに、今回はそれが完全に反故にされ、そのため散漫な陰謀ものになっているのだ。犯罪多発地帯を塀で囲い、その土地を政府が監視しながら温存ってどういう設定だよ。「ドゥームズデイ」でもその定石は守られていたが、映画で無法地帯を現出させるには政府は非情じゃないと。今回はそのぬるま湯設定のせいで、塀の中の危険度が下がり、刑事とアウトローコンビの線引きも曖昧になってしまい、冒頭無理に動きでジャッキー・オマージュを入れたりしているが、キャラが弱いバディものに落ちぶれてしまった。しかも、前作は裏社会の人間も敵だったが、今回は「プロジェクトA2」的に仲間としても行動するんで、アジア、アフリカ、アラブ系暴力組織のディテールは楽しいものの、話はそれ以上広がりを持たない。また、「MAXX!!! 鳥人死闘篇」でアクション女優の資質を見せたエロディ・ユンが、今回何もしないのも大失点。ならばせめて最後に大爆発的なカタルシスを期待したが、前作にはあったはずのNG集同様スカされ、エンドロール後の緩いオチのみでは、今後続いたら「TAXi」化するのが見え見えだな。


 一観客として「アドレナリン:ハイ・ボルテージ」へ。前作がワンアイディアで爆走する愛すべきバカ企画なので、まさか設定を使い回して続編が出来るとは思わなかった。要するに、前作で乗ってくれたジェイソン・ステイサムの功績が大きいし、当然こっちも続編を成立させること自体が、必然的に前作に比肩しうる牽引力が物語にあるか?を注視させることになる。しかし、ステイサムが即出演を了承した時点で物語上の問題がないのは分かってて、むしろあの結末からどう広げるか?に注目していたわけだ。結論から言うと、前作以上にうるさい映像で設定もバカそのものだから、前作に乗れなかった奴はもう無理だろうが、展開は納得行ったし、この出来なら監督の次作「GAMER」も相当期待できると確信した。確実に死んでるはずの主人公が、毒よりもアバウトな人工心臓を埋め込まれるだけで十分バカ企画の資格を得ているが、今回は制限付きアクションというより、いかにその設定でバカ騒ぎするかがテーマになっている。それでも、一応律儀にドワイト・ヨーカムだの、「バス男」の“ペドロ”だのを続けて出しており、心意気は買うが、細かくてどうでもいい前作の設定を思い出すのに一苦労だ。また、相変わらず悪趣味な暴力描写は満載でも、成人指定なのは増えすぎた下ネタのせいで、そういう意味ではロン・ジェレミーや、図らずもその死に方で下ネタ要員と化してしまったデヴィッド・キャラダインなど、そっち方面の顔ぶれも充実している。しかも前作の遺恨を引きずり、「ルールズ・オブ・アトラクション」など、この手のチンピラ演技では定評のある、“チカーノ版寺島進”、クリフトン・コリンズ・Jrの出演が、本作にバージョンアップ版としての風格を与えている。そのお蔭で、どいつもこいつも軽はずみに発砲し、虫けらのように死屍累々が築かれて気持ちはいいが、せっかく下ネタ増やしてるのに、肝心の“乳首詰め”をギャングにやらすなよ。“レディースもの”みたく、女優で実現して欲しかったぞ。フランケンシュタイン [DVD]アルティメット [DVD]アルティメット2 マッスル・ネバー・ダイ [DVD]ニューヨーク1997 【プレミアム・ベスト・コレクション\1800】 [DVD]エスケープ・フロム・L.A. [DVD]ドゥームズデイ アンレイテッド・ヴァージョン [DVD]ラッシュアワー [DVD]マックス!!!鳥人死闘篇 [DVD]プロジェクトA2 史上最大の標的 デジタル・リマスター版 [DVD]TAXi [DVD]アドレナリン [DVD]アドレナリン2 ハイ・ボルテージ  コレクターズ・エディション [DVD]バス男 [DVD]ルールズ・オブ・アトラクション [DVD]レディース!! (1) (ヤングマガジンコミックス)