「オシオ式」人生有効活用法。等。

 オシオ裁きを前にして、宣言するのもなんだが、実は周囲から見られるほど俺には、コイツに対して特段の関心はないのだ。だが元々ごく僅かながら、画像やその名前をあくまで情報ベースで認知はしており、知らなかったわけではない。
 ただ、コイツが世に出るようになってというもの、俺の目にする映像、耳にする音楽、その全てにオシオは入っていなかったからだ。ひいては俺の関心のあるものにオシオが少しでもクロスしたことがかつて全くなかったというだけのことである。言い切ってしまうと、生き死にさえどうでもいい路傍の石だったのだ。
 人間が所詮は時間に振り回される存在である限り、人間が一生に知ることには限界がある。それが実は知れば面白かったものであるにせよ、歩む道にブレを生むよりはいい。そうは言っても、後追いながら調べてみるにつけ痛感されるのは、やっぱりどう転がしてみても、オシオの人生は俺にとって興味も持てず、楽しめる要素も全くないものなのであった。散り際の一点を除いては。
 それでもコイツは一つの教訓をもたらした。そいつの人生の幅において最高を味わったら、次は最低を自ら望んでなくても味わうようにコントロールすべきことを。もちろんそこにコイツの意志は介在しておらず、勝手に狭い幅の中を上がって落ちただけの存在である。
 しかし、これが重要なのだが、その散り際の一点だけが俺を面白がらせてくれた、ということである。つまりオシオにとって最も輝いているのが現在、ということになる。オシオは社会的死の危機に瀕して初めて、俺の希求を刺激したのである。そして、追求して損のないものとして“面白さ”があるように、オシオも落ち方によってはもっと輝くことができるのは言うまでもない。
 要するに、どんな素晴らしい映画に出演するよりも、コイツにはこうしたやり方でしか俺(と、似たような嗜好の方々)を喜ばせるには方法がなかったということで、コイツなりに生を粗末ながらも生き切ろうとしている様がまたしても笑いのスパイラルを生み出す。これがいわゆる「オシオ式」というものなので、娑婆に出たら、ダイエットの「西田式」みたいに、オリジナルの生業にすれば、「アウトレイジ」に出してもらおうとビートたけしに売り込み、仮にそれが成功していたよりも、もっとみんなを楽しませることができるであろうことは保証したい。
 注:文中「オシオ」の表記で統一しているのは、この書き方が何となくバカにしている感じがして俺のお気に入りだから、である。


 ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントさんのご招待で、「アーマード 武装地帯」試写へ。出演がマット・ディロンローレンス・フィッシュバーンジャン・レノ、スキート・ウーリッチやアマウリー・ノラスコ、挙句にフレッド・ウォードなんていう渋くも豪華な面々による犯罪映画と聞くだけで胸踊るが、いずれの出番も多いものの、実はこの全員が背景に回った、防犯映画なのであった。何よりも監督が、俺的には大変不評だった「モーテル」のニムロッド・アーントルなので、不安的中でもあったが、こいつが本作によって「PREDATORS」の監督に抜擢されたんだから侮れない。現金輸送車警備員たちによる安全なはずの現金強奪計画が、新しい仲間を引き入れることで綻んでゆくのだが、プレデターも場当たり野郎になるのか、早くも心配してしまうのだった。しかもこうしたジャンル映画の場合、“裏切り者”と解釈されても仕方ない側が主人公なので、逆の目で見れば手垢に塗れたテーマに新味を与えたかったのかも知れない。もちろんそうすることで、計画の綻びを作る主人公の動機にメリットを感じないのも事実である。しかし、主人公にはイラク帰還兵という背景があり、誇りの持てない戦争に傷つき、家族とも不和を抱えている身としては、その行動で誇りを取り戻したかったのだろうと良心的に解釈しておく。やっぱりバカに銃を持たせるべきではなく、乞食は懐柔しないと後で厄介になるのは「トレスパス」でも分かる通りである。その点でフィッシュバーンは本来評価されてきた悪人キャラに原点回帰し、「アサルト13 要塞警察」でもモーフィアスみたいな役だった鬱憤を愚かさとして昇華している。この出演がプレデターに対する前振りになるのかは不明だが、他の仲間キャラ役者も同様に愚かなので仕方がない。また、チョイ役で最新作における“ロッキーの息子”も出ていたが、見事に出る奴制服ばかり。その点マニアには堪らないと思うので、故・水野晴郎先生に観て欲しかった作品ではある。


 一観客として「コララインとボタンの魔女3D」へ。伴ジャクソンさんのご助言をいただき、迷わず字幕版劇場へ。作品は確かに3Dを意識した作りにはなっており、事実その効用を生かした飛び出す表現も散見されるが、何よりもこれが隅々までコマ撮りの人形アニメーションで撮られていることに驚くし、何とか日本でも公開されたことを喜びたい。物語は少女が“穴”から異世界に入る意味では「アリス」っぽく、今までヘンリー・セリックが手掛けなかった“少女が主人公の童話”としての面もフォローしているということでも特筆に価するのだが、図らずも趣味が似ている上、(「アリス・イン・ワンダーランド」も控えている)ティム・バートン作品との共通性が出てしまうのも微笑ましい。実際その両方が好きな観客が穿ってしまうだけかも知れないが、トビネズミの大群は「チャーリーとチョコレート工場」のリス軍団を想起するし、近所に住む悪ガキの扮装が、「バットマン・リターンズ」における“レッド・トライアングル・サーカス”の一員に酷似していたりは確信犯として散りばめている様に見える。そう考えるとメカニカルな魔女の手は、「9<ナイン>〜9番目の奇妙な人形〜」のモンスターの構造とも類似を見出せるし、音楽までダニー・エルフマン風に聴こえて来ていちいち楽しい。なので子供は純粋に面白くも怖がれて、悪夢好きな大人には全てが狙い打ちの濃密な時間が約束されている。そして同時に、手作り映像の長編としては、「Fantastic Mr. Fox」と並び、映画史上最後の部類に入るだろうと覗えるだけに、ストップモーション表現の極北としてチェックしておきたい。今回は液体の描写も徹底していて、“幽霊犬・ゼロ”の発展型としての幽霊描写や変身後の魔女(「ブレインデッド」のママ似)の迫真性など、技術的にも見るべきところが多い。次は長編でなくてもいいので、「モンキーボーン」をもっとハードにしたような、グロすれすれの表現を先鋭化させた大人向けのものが観たいところだ。 


 一観客として「渇き」へ。聖職者が吸血鬼と化す物語だが、主人公の罪への戦きや深い葛藤は意外とアッサリしているので“破戒”がテーマには見えない。では吸血鬼としての設定や吸血法は、明確に病として描かれている以外はロメロの「マーティン」であり、決着は繊細な「30デイズ・ナイト」である。ならば死んでも鼻水垂らして時折現れるシン・ハギュンは「狼男アメリカン」での親友にも見えてくる。だがソン・ガンホの激痩せは、聖職者としても吸血鬼としても作品に説得力を与えた。脚のタコが美しいキム・オクビンは僅かに小沢なつき似(乳輪はデカくない)でもあるが、笑顔(特に歯並び)が俺を殺そうとした女に似ていると気付く。さらに主人公を利用した後のファム・ファタールらしい豹変が似ているのだ。俺もあのまま関係を続けていれば、いずれ俺も殺人に手を染めねばならなかった可能性が高いと思っている。本作において、主人公が修羅場の後で人妻に対して行う振る舞いは、新しい恐怖を招いてしまうのだが、あの時の俺にとっても一つの選択肢でもあった(と考えるほど当時思いつめていた)ことを思い出し、鑑賞中の不安は倍加した。映画では吸血鬼という虚構ゆえに、結果として“誕生日を作ってやる”というロマンティックな表現に美化できるが、現実はそうは行かない。しかし虚構でもその先には地獄が待っていたわけで、その展開には“クローディア”の無垢な貪欲さが重なる。つまり「サイボーグでも大丈夫」は、ヒロインの狂気に合わせて向こう側に男が入っていく話だったが、今回男は自らの陥った状況に女を引き込むことで、二人で永遠を生きられるとの錯覚から、逆に真の孤独に陥っていくのだ。異世界との齟齬を引き続きテーマとしながら、「郵便配達は二度ベルを鳴らす」スタイルの導入で、新しくも以前の作風につながる世界を現出させた。また、肝心のチン出しは暗闇の出来事なので、修正しようがしまいがチンコは曖昧であり、これは「チンコ映画」とは認定できない。モーテル MPD [DVD]プレデター 新生アルティメット・エディション [DVD]プレデター2 (新生アルティメット・エディション) [DVD]エイリアンVS.プレデター 完全版 [DVD]AVP2 エイリアンズVS.プレデター<完全版> [DVD]トレスパス [VHS]アサルト13 要塞警察 [DVD]マトリックス 特別版 [DVD]TINA ティナ [DVD]ロッキー・ザ・ファイナル(特別編) [DVD]Coraline [DVD] [Import]ヤン・シュヴァンクマイエル アリス [DVD]アリス・イン・ワンダーランド ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]チャーリーとチョコレート工場 特別版 [DVD]バットマン リターンズ [DVD]ナイトメアー・ビフォア・クリスマス [DVD]ブレインデッド [DVD]モンキーボーン [DVD]マーティン [DVD]Martin [VHS] [Import]30 Days of Night [Import]狼男アメリカン 【ベスト・ライブラリー 1500円:ホラー特集】 [DVD]ファングルフ?狼男アメリカンinパリ? [DVD]アイドル・ミラクルバイブルシリーズ 小沢なつきインタビュー・ウィズ・ヴァンパイア [DVD]夜明けのヴァンパイア (ハヤカワ文庫NV)サイボーグでも大丈夫 デラックス版 [DVD]パク・チャヌク リベンジ・トリロジー (初回限定生産) [DVD]郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD]郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD]郵便配達は二度ベルを鳴らす(1946年版) 特別版 [DVD]郵便配達夫はいつも二度ベルを鳴らす (ハヤカワ・ミステリ文庫 77-1)