去年の総括/けじめの年始。

以下は2014年劇場鑑賞作品ベスト。鑑賞時に書いた作品の詳細は割愛、欠けているものは以下に。

1「ゴーン・ガール

2「ウルフ・オブ・ウォールストリート

3「ハミングバード

4「ファイ 悪魔に育てられた少年」

5「オール・ユー・ニード・イズ・キル

6「インターステラー

7「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌

8「KANO」

9「複製された男」

10「アデル、ブルーは熱い色


 クロックワークスさんのご招待で「WILD CARD/ワイルドカード」試写へ。ガイ・リッチー組で最もビッグネームになった男として、俺はジェイソン・ステイサム兄貴を、例えスタローンに後継指名されても、いわゆる“アクション俳優”の括りで片付けられない。なぜなら着目されるきっかけが飛び込み選手としてスタイルが申し分ない点とはいえ、初主演の「スナッチ」にしても、最大の魅力は他の魑魅魍魎どもを尻目に、全部かっさらうクールさと度胸、他の狂騒を憐れむかの哀愁にあったわけで、身体性は関係がない。さらにステイサムを同路線で押した、「リボルバー」は復讐心を押し隠し閉じ込められた男のメンタルと弱さ表現にも応えた。そんな資質はリッチー組を離れ、アクションも交え非常に重く複雑な内面を持つ主人公を演じた「ハミングバード」にて頂点を迎えたと思ったのだが、まだステイサムにはナイーブな内面追求の鉱脈に機能していたのが分かる。「エクスペンダブルズ」とか出ても基本の彼は、傷ついた男を演じる性格俳優であると思い知らされる最新型が本作だ。しかし、アクション俳優としてもベッソンに見出だされて以来、そのポテンシャルもスポーツ選手としての本領を発揮してしまい、ノースタントであらゆるアクションを体当たりするステイサムを、監督のサイモン・ウエストは、「エクスペンダブルズ2」、そして「メカニック」と連続でその底力を目の当たりにしてしまい、彼も本来ステイサムを知るのに触れてきたはずの初期作品の如く、繊細な内面表現の極北を見たくなったんではないだろうか?奇しくも選んだ場所は、監督が「コン・エアー」にて勝手知ったヴェガスである。だから当然、ヴェガスにも“寄り”の視点を忘れず、生活者やカジノ客が交錯する、大人の明暗を持つ街として描き、破壊の場としては捉えてないのは監督にも新機軸で、脛に傷持つ人々への適度な距離感での“引き”の交流が「メカ〜」よりドライで心地よく、明らかに“ハードボイルドを見た”、余韻と満足感がある。この企画に対しステイサム的には、やはりヴェガスが絡んで不器用な駆け引きでスタローンも可愛い気を見せた、「追撃者」オマージュという位置付けもあったはずだ。このもっと長く見たくなるステイサムの傷ついた過去も想像させるドライな優しさの大盤振る舞いは、今後「ワイルド・スピード SKY MISSON」、「メカニック」続編、さらには謎の“スパイ映画”企画と、アクション目白押しな今後に向け、見事なバランスを保ってるし、次回作に発射される矢がまさに引き絞られる緊張感と静けさの楽しめるファンサービスと呼んでも差し支えないが、単なるサービスに留まらず、「リービング・ラスベガス」に並んでも遜色ない、人間同士の機微と優しさを掬い上げるのに成功した、「ワイスピ」とかだけに熱狂する子供には難しい“大人映画”なのは間違いない。


 一観客として「ゴーン・ガール」へ。ある種の女は屈辱を負わされると人格障害を発動するという症例を示しているのであり、月並みな「これだから女は恐ろしい」とか表現で本作を片付けるのは、劇中の特殊極まりない登場人物にあって、紛れもない女性蔑視だと思う。要するに「女が怖い」と片付け、「(女の)気違いこそ怖い」という事実から目を背けようとして女持ち上げに淫したいだけなんだよね。とはいえ、「ドラゴン・タトゥーの女」の後、フィンチャーの次回作がなぜ本作でないとならなかったかは、タイトルに含まれる単語の重複のみならず、作品をして立派な回答になっている。というのも、前作は社会の“女性憎悪”に男性憎悪を注入されたヒロインが対抗する話だったわけで、今回、発端としてはバイアスありきのミスリードを誘導された社会が根底に抱える、“男性憎悪”がメディアスクラムを生み、観客は解答と共に女性憎悪へシフトするようミスリードを誘導される構造であって、その捻じれがフェミニズム的な快感を生み出す向きが出るよう計算されてるのは否定しないが、これは前作や「テルマ&ルイーズ」などと違い、単に毒親から人為的に作られた真性人格障害の話である。強いて普遍性を抽出するなら、男の怠慢は女の虚栄心を傷つけ、己を窮地に追い込む羽目になる可能性があると窘める、男が課せられたジェンダーバイアスについての話とも言える。また、対人関係で我が子の人格障害を最も見ない振りをするのはその親であり、その連携の切断こそ被害への反撃に向けた鍵となる示唆もしている。なお、反目という意味では劇中「仲直り」という単語が頻出するが、その理由は、冒頭のクレジットで違和感を覚えた如く、「ファイト・クラブ」以来のFOX製作映画だからというニュアンスもあるようだ。まあニール・パトリック・ハリスの起用は狙い過ぎでやっぱりギャグになってしまったけど、一度でも人格障害の被害に遭遇した人間なら、フラッシュバック必至の不快な物語なので注意が必要だ。さらに、映画の虚構が観客にとっての日常にスライドして行くよう、極力音数を少なく絞り配慮された、(特に結末近くの)トレント・レズナーによる音響設計が、かつて被害者も加害者も「普遍的な人間の話(=All of us『おれたち、みんな』)」であると“ジョン・ドゥ”にひたすら強調された、「セブン」にも似て、劇場を出てもスクリーンの中と似た人間がウジャウジャ蠢く、俺たちが生きざるを得ない、現実という名の修羅道への帰還に、酷く不安を掻き立てられる傑作である。ウルフ・オブ・ウォールストリート [DVD]ファイ 悪魔に育てられた少年 [DVD]オール・ユー・ニード・イズ・キル(字幕版)インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌 [DVD]複製された男 (日本語、吹替用字幕付き) [DVD][rakuten:asiandrops:10008229:image:small]アデル、ブルーは熱い色 [DVD]118456202スナッチ (1枚組) [DVD]ミーン・マシーン [DVD]リボルバー DTSスペシャル・エディション [DVD]ハミングバード [DVD]エクスペンダブルズ [DVD]エクスペンダブルズ2 [DVD]エクスペンダブルズ3 ワールドミッション [DVD]メカニック [DVD]コン・エアー 特別版 [DVD]追撃者 [DVD]ワイルド・スピード EURO MISSION [DVD]リービング・ラスベガス [DVD]ゴーン・ガール(初回生産限定) [DVD]ドラゴン・タトゥーの女 [DVD]テルマ&ルイーズ [DVD]ファイト・クラブ [DVD]セブン [DVD]