“ビッチ”と“不信”にまつわる映画と小説など。

 もちろんドメスティック・バイオレンスというものは、それが事実で一方的なのであれば問題だし、とても哀しいことだ。
 だが、女が凶器を持って暴力を行使しても、ドメスティック・バイオレンスと見なさない風潮に対し、男は凶器を持たず、素手であっても女の訴え次第で、実際にやっていようがやっていまいが関係なく、ドメスティック・バイオレンスを行使しした者として見なされる。
 イコール犯罪者として、社会的制裁だって受ける。
 だから確たる証拠がない限り、こうした風潮はこれから冤罪の温床として拡大する一方になるだろう。
 だから、普通に考えれば、きちんとした調査を必ず経て、安易には立件すべきではない。
 少なくとも、そうした冤罪を防止した法整備を先にすべし。
 まぁ、マクラはここら辺にすると、俺自身も被害者である関係から、安易にドメスティック・バイオレンスというものを信じないし、故にそれを理由に云々という女の話を聞くと、鵜呑みにはできない。
 自分に原因があることを、そこにすり替えている可能性もあるからだ。
 例えば、法に縛られてはいないからといって、婚姻関係にある人間を裏切り、その清算をしないうちから、快楽重視の生中出しセックスに走る女とか。
 そう、今世の中を巻き込もうとしている、「淫乱中出し人妻擁護法案」のことだ。
 この恥知らずなビッチたちは、そうしてクソのようにひり出した自分たちのガキをダシに、母親である自らの不貞を隠蔽、正当化しようとしていることを見逃すな。
 ガキの口から言わせれば、不貞が正当化できるか?不確かなドメスティック・バイオレンスのせいにすれば、誰とでも生中出ししていいとでも?
 しかも、不貞が働かれた先の間男、つまりそのガキの父親からそういう話がでてくるのなら、話はよく分かるし、筋の通ったものだが、なぜかそれがいつも母親(不貞を正当化しようとする本人)の側から出ていることを、決して見逃してはならない。ここが罠だ。
 そして世の中で同じ目論見に基づいて、こうした動きに目を向けたり、支持したり、報道したりする、悪意に満ちた恣意のあることを見逃すな。
 人を裏切ることを法で肯定するような世にしてはならない。そこで俺が感じるのは・・・。
 「うらみつらみではない・・・おれの心を占めているのは・・・怒りだ・・・悪逆なる者への怒りだ!!自らの不正な生き方を押し通すために、他の人間を平気でふみにじる人間への怒りだ!」
 ・・・おっと、「男組」の関東少年刑務所長・宮城秀一(神竜秀一)が乗り移ってきたが、別に言っていることは冗談などではない。とにかく、俺は騙されんぞ、みんなも気をつけな。


 そんなわけで、ワーナー・ブラザーズさんのご招待で、「オーシャンズ13」試写へ。今回の敵として登場する、アル・パチーノと、従来の敵であるアンディ・ガルシアの、「ゴッドファーザーPART3」以来の共演を、個人的には非常に気になっていたが、あまりその部分は強調してなかったな。パチーノはそれほどギラついた悪人には見えず、それなりに元気そうで、ガルシアはいつも通りレギュラーキャストの中で一番良かった。むしろ、そうした対比より、手慣れてきた全体のアンサンブルをこそ、楽しませようとしている作品だということはよく分かった。そして、このシリーズが、犯罪コメディなのではなく、単なるコメディなのだということも、今回にいたってようやく解った。どんなに鈍感な人間でも、今回はそれを痛感する仕掛けになっているのは画期的かも知れない。普段コメディを撮らない監督だけに、これが監督の確信的なものなのか、その技量故なのかは不明だが、マット・デーモンとドン・チードルの活躍は、そういう目で見ると、笑えるかも知れない。加えて前作との繋がりで、なぜ今回「13」なのか、意味が分かる描写が、ちょっと爽快。でも作品とは関係なく、「トラフィック」で定評のある、美しく撮られたメキシコの風景に気を取られてもいた。ソダーバーグがメキシコを撮るのが上手いのか、メキシコそのものが美しいのか、やはり、確認しに行かないと。


 ワーナー・ブラザーズさんのご招待で、「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」試写へ。普通の人間がこの手の物語を楽しみにしているのとは別に、ファンタジーを基本的に絵空事と考えている俺は、続けて観ているこのシリーズにおいてはどこに着目しているかといえば、その人間観である。みなしごが主人公なので、現在の日本のかわいそうな子供文化のような、空回りで貧相な人間賛歌にはなっていない点。つまり、人間への視点が不信から始まっているのだ。ざんざんイジメられてきたみなしごなんだから当たり前だ。そんな親のいない子供にとって、学校の先生くらいが親と呼べるはずの存在なのに、このシリーズにはそれすらもないところが硬質だ。ゆえに大人の観賞にも堪えうると思われるし、ハグリットやシリウスなどの、見た目を常に裏切る存在が多数登場するところにも、その不信は表れている。そして、信頼するべき大人が少なければ少ないほど、横の繋がりは強くなるものさ。それを裏付けるかのようなホグワーツと言う、連帯を醸成する全寮制の学校という設定。俺はなぜか小さい頃から、全寮制の学校(共学)に育つ夢を、睡眠時によく見てきたんで、個人的にところどころ感涙しそうにもなり、ハリーの恋の進展にはヤキモキした。それに、全体の美少女度が上がっているので、下世話な気持ち抜きで、同じ年頃のように胸キュンできるんだ。今となっては、周囲は汚い人間ばかりだからな。これを汚い人間が観てどう思うかは知らんが。まぁ汚い人間は別として、そんな深い思索に耽らない人間でも、話はますますハードになり、それぞれの立場が明確になった今、一番激しいのは間違いなく保証するんで、世界最高レベルの映像で、その過激さを味わうのもいいかも知れない。もう「カワイイ」なんて言ってられないぞ。しかし、この少年、「ショーン・オブ・ザ・デッド」でパロってたオッサンに、ますます似てきている・・・。


 ジム・トンプスン著、「荒涼の町」読了。書店で発見したとき、おれは自分の目が間違えているのではないかと思った。もうとっくに終わり果てて、それでいて不快で強烈な読書体験となっている、ルー・フォード。その名前を再び見たから。これは「内なる殺人者」→「おれの中の殺し屋」のように、タイトルを変えた新訳なのかと思った。だが巻末の解説を読むとそうでないことが解ったが、読んでみると、本当にあのルー・フォードとは別物とよく解った。設定は前々の別物だし、なぜならこいつはあいつのように平然とこちらに語りかけてこないから。それだけに普通の読書体験だったし、トンプスン作品の割に普通の小説なのだった。でも、女性経験がそれほどない(故に異常に繊細な)前科者という、矛盾した設定はトンプスンらしく、しかもおれに似ていた。おれは作中のこの前科者ほど暴力的じゃないが、愛への渇望から来る疑心暗鬼は、トンプスン(と、いつもの三川さんの翻訳)特有の、刃物のような描写で、ひりつくほどによく解る。そしてその渇望故の陥穽、一見優しい女、だが全てがビッチ。その優しさは全て打算。救いようのない邪悪な女たち。特にロザリー。またはエイミー。男なら破滅させられたいと思う女たち。それでも破滅させられることがないのは、ある意味、紛れもないトンプスン作品だという証明だ。破滅して、物語そのものも破滅するのもまたトンプスンであるが。それでも、三人称は物語を突き放し、俯瞰で眺め過ぎていて、気付かぬうちに異常な人間の異常な思考を追体験しているような感覚は弱い。何か最近は、新訳や旧作の文庫化を急いでいるようだが、単行本未収録の短編をこそ、今後は精力的に出して欲しいもんだよ、なぁ?でも、それがなにかわかるか?


 ジェス・ウォルター著、「市民ヴィンス」読了。カード偽造のプロが、マフィアの裁判で証人になることと引き換えに、自らの罪を帳消しにして貰う。そして証人保護プログラムによって、ドーナツ屋の店長としてひっそり暮らしていたが、やはり副業の悪事はやめられず、そこに差し向けられた殺し屋の気配を感じた主人公は、過去と決着をつけようとする物語。「グッドフェローズ」の、その後?と捉えてもいいが、遙かにスケールは小さい。本に厚みはあるが、テンポがいいので長さはそれほど感じない。だがブラックな割に暴力性が低く、極めて道徳的な結末なので、好き嫌いは別れるだろう。レナードより堅いしな。だが、人生の大半を犯罪に塗れて生きてきた男が、堅気の人間なら全く意に介さないことに対し、その意義や価値を重視するに至る思考は、不思議と説得力がある。だが、そんなに内省的で思慮深い男が、果たしてプロの犯罪者になるだろうか?という気もするが、罪深い人間ほど、苦悩も深いもんさ。そこをリアルと取るかは微妙だ。それでも、置き去りにして逃げた過去とは、いつか向き合わなきゃならない、って切実さだけは、それが誰の目にも真実なだけにリアルだぜ。向き合って、そして勝利しなきゃ、残りの人生を、ただ逃げて生きてるだけになるからな。マフィアのボスの気の利いた台詞、「たとえ残りの人生を刑務所で過ごさなきゃならなくなったとしても、かまうことはない。落としまえはつけなきゃならない。やるべきことはやらなきゃならない」・・・当たり前だよな。男組 (13) (小学館文庫)オーシャンズ11 特別版 [DVD]オーシャンズ 12 特別版 (初回限定 BOX仕様) [DVD]ゴッドファーザー PART III [DVD]トラフィック [DVD]ハリー・ポッターと賢者の石 [DVD]ハリー・ポッターと秘密の部屋 [DVD]ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 [DVD]ハリー・ポッターと炎のゴブレット [DVD]ショーン・オブ・ザ・デッド [ユニバーサル・セレクション] (初回生産限定) [DVD]荒涼の町 (扶桑社ミステリー)内なる殺人者おれの中の殺し屋 (扶桑社ミステリー)市民ヴィンス (ハヤカワ・ミステリ文庫)グッドフェローズ スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]